三角関数を微分すると位相が90度進むこと

sinx\sin x および cosx\cos x は微分すると位相が90度進む。積分すると位相が90度遅れる。

三角関数の微分・積分と位相の進み・遅れについて紹介します。

三角関数の微分

sinx\sin x の微分は sin(x+π2)\sin \left(x+\dfrac{\pi}{2}\right)

cosx\cos x の微分は cos(x+π2)\cos \left(x+\dfrac{\pi}{2}\right)

証明

以下の二つの公式を組み合わせることで簡単に証明できる。

・三角関数の微分公式(数学3の教科書に載っている):

sinx\sin x の微分は cosx\cos x

cosx\cos x の微分は sinx-\sin x

・三角関数の定義より簡単に導かれる公式:

sin(x+π2)=cosx\sin \left(x+\dfrac{\pi}{2}\right)=\cos x

cos(x+π2)=sinx\cos \left(x+\dfrac{\pi}{2}\right)=-\sin x

なお,図形的な説明もできます。→sinxの微分公式の3通りの証明の証明3参照。

位相が遅れる,進むとは

  • サインやコサインの中身を「三角関数の位相」と言います。

sinθ\sin \theta の位相は θ\theta3sin2x3\sin 2x の位相は 2x2x

  • 位相の部分を +A+A した関数を「もとの関数よりも位相が AA 進んでいる」と表現することがあります(振幅が正の定数倍されていても気にしません)。

sin(x+π2)\sin \left(x+\dfrac{\pi}{2}\right)sinx\sin x よりも位相が π2\dfrac{\pi}{2} 進んでいる。

2cosx2\cos xcos(x+π2)\cos \left(x+\dfrac{\pi}{2}\right) よりも位相が π2\dfrac{\pi}{2} 遅れている。

位相遅れ,進み

この意味は y=sinxy=\sin x (赤)と y=sin(x+π2)y=\sin \left(x+\dfrac{\pi}{2}\right) (青)のグラフを同じ図に書いてみると分かりやすいです。赤が青を(π2\frac{\pi}{2} だけ遅れながら)追いかけている様子が見て取れます。

さきほどの議論と合わせると「サインとコサインは微分すると位相が90度進む」と言うことができます。逆に「サインとコサインは積分すると位相が90度遅れる」と言うこともできます。

高階微分

サインやコサインの高階微分に関しては「sinx\sin xcosx\cos xsinx-\sin xcosx-\cos x を繰り返す」と表現されることが多いですが,上記公式を繰り返し使うことで,サインやコサインの nn 階微分を簡潔に表現できます。

sinx\sin xnn 階微分は sin(x+n2π)\sin \left(x+\dfrac{n}{2}\pi\right)

cosx\cos xnn 階微分は cos(x+n2π)\cos \left(x+\dfrac{n}{2}\pi\right)

交流回路への応用

最後に少しだけ物理の話です。

交流回路において,

  • コンデンサーの両端にかかる電圧の位相は電流の位相よりも90度遅れる
  • コイルの両端にかかる電圧の位相は電流の位相よりも90度進む
説明

コンデンサ:

Q=CVQ=CVI=dQdtI=\dfrac{dQ}{dt} より I=CdVdtI=C\dfrac{dV}{dt}

電圧を微分すると電流になるので,位相は電流の方が90度進んでいる。

コイル:

V=LdIdtV=L\dfrac{dI}{dt}

電流を微分すると電圧になるので,位相は電圧の方が90度進んでいる。

位相幾何の位相とは全く関係ありません。