和積公式の覚え方と証明:覚えるべきか毎回導出すべきか?
三角関数の「和」を「積」に変換する公式です。
和積公式は4つもあって覚えるのが大変です。丸暗記したほうがよいという人と毎回導出したほうがよいという人で意見が別れるところです。この記事では,「暗記する作戦」と「導出する作戦」それぞれについて詳しく説明します。
作戦1:和積公式は覚える
作戦1:和積公式は覚える
和積公式を覚えてしまいましょう。4つの式を完全に覚えるというよりは,以下の手順で効率的に覚えるとよいです。
まず,和積公式の大雑把な形
を覚えましょう。そして「 がサインなのかコサインなのか」と「符号」を覚えます。例えば,以下のような語呂で覚えましょう。
- 師は信仰(しはしんこう,si和si co)
- 師引っ越し(しひっこし,si引くco si)
- 子は孝行(こはこうこう,co和co co)
- 子引く負け獅子(こひくまけしし,co引くマイナス掛けsi si)
補足
丸暗記するだけでなく,以下のような意識があれば間違えにくいです。
- と は1以下なので,足し算より掛け算のほうが小さい。つまり,右辺に がつくのが自然(この意識があれば,積和公式と混同して をつけたりしないようになる)。
- のときに成立する(この意識があれば右辺のサインコサインの中身を などと間違えることはない)
- サインについては, のとき倍角公式になる。
作戦2:和積公式は導出する
作戦2:和積公式は導出する
和積公式の導出(証明)を紹介します。慣れればそんなに時間はかからないので,毎回導出してもよいですね。毎回導出するとしても,紫色の部分は4つとも全く同じなので覚えておくとよいです。
サインの加法定理を2つ書く:
辺々足し算する:
ここで,, とおく。連立方程式を解くと , となる。よって,
サインの加法定理を2つ書く:
辺々引き算する:
ここで,, とおく。連立方程式を解くと , となる。よって,
コサインの加法定理を2つ書く:
辺々足し算する:
ここで,, とおく。連立方程式を解くと , となる。よって,
コサインの加法定理を2つ書く:
辺々引き算する:
ここで,, とおく。連立方程式を解くと , となる。よって,
覚えるのがよいか,導出するのがよいか
覚えるのがよいか,導出するのがよいか
- 個人的には作戦2(毎回導出)がおすすめです。理由は以下の3つです。
- 導出はそんなに難しくないです。慣れれば頭の中でできる人が多いと思います(最終結果以外の途中式を書く必要がない)。
- 和積公式を使う機会はそこまで多くないです。
- 語呂で覚えるのがなんとなく好きではないです。
- ただし,導出する場合も,導出の流れをある程度覚えておく必要があるので「暗記0」とは言えないかもしれません。
和積公式の応用
和積公式の応用
-
チェビシェフ多項式では和積公式が活躍します。
-
など,3つの三角関数の和を積に変換する公式もあります。→三角形の内角における和積公式
なお,積和公式については積和公式の導出と覚え方で解説しています。
丸覚え派の人でも,ある程度工夫して覚える量を減らしましょう。導出派の人でも,ある程度暗記して導出の手間を減らしましょう。