チェビシェフ多項式
は の 次多項式で表せる。
この 次多項式をチェビシェフ多項式と呼び, と表します。
チェビシェフ多項式の具体例
チェビシェフ多項式の具体例
まずは が小さい場合で実験してみます。
ちゃんと が の 次式で表せています。
サインの場合
コサインではうまくいきますが,サインではうまくいきません。
例えば, となり, の 次式で表すことはできません。
しかし,実は以下のような定理があります:
は「」と「 の 次多項式」の積で表せる。
例えば では上記の通りOKですし, だと となり確かに成立しています。
定理1に登場した 次多項式 を第一種チェビシェフ多項式と言い,定理2に登場した 次多項式 を第二種チェビシェフ多項式と言います。
チェビシェフ多項式の証明と漸化式
チェビシェフ多項式の証明と漸化式
加法定理を用いることでチェビシェフ多項式の存在を帰納的に証明すると同時に漸化式を導きます。 の和積公式に しか現れないのがポイントです。
に関する帰納法で証明する。 のとき成立。
の和積公式:
において とすると,
となるので,
のときに成立すると仮定すると のときも成立。
また,上記の式より以下の漸化式を導けます:
同様に定理2に関しては,
- が の 次多項式で表せる(定理1)
を用いて帰納法で証明できます。
一般項
一般項
数オリの問題に挑戦
数オリの問題に挑戦
チェビシェフ多項式を背景とした入試問題はたくさんありますが,ここでは数学オリンピックの過去問を紹介します。
1963年国際数学オリンピックポーランド大会の第5問です。
を示せ。
を用いて たちが満たす方程式をつくります。
を示せば良い。
はそれぞれ を満たすのでいずれの場合も を満たす。
チェビシェフ多項式を用いて両辺を だけで表す とおく):
が解であること,つまり が解であることを利用して因数分解する:
ここで, はこの方程式の解であり,3つも と異なるのでこの3つの解は,
を満たす。
よって,解と係数の関係から示すべき式が成立することがわかる。
数学オリンピックの黎明期(1960年代)の問題は比較的簡単ですね。
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なお,複素指数関数と等比数列の和の公式を用いた別解もあります。→三角関数の和と等比数列の公式
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→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT86では,図形的な考察を使う別解と計算ミスを減らすコツも紹介しています。
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この記事の内容を知っていると京大の問題がかなり簡単に解けます。→京大2023大問6とチェビシェフ多項式
一般項の部分は高校時代の恩師のy先生に教えていただきました!
Tag:国際数学オリンピックの過去問