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チェビシェフ多項式

更新日時 2021/03/07
定理1(チェビシェフ多項式)

cosnθ\cos n\thetacosθ\cos\thetann 次多項式で表せる

そのような nn 次多項式をチェビシェフ多項式と呼び,Tn(x)T_n(x) と表します。

目次
  • チェビシェフ多項式の具体例

  • チェビシェフ多項式の証明と漸化式

  • 数オリの問題に挑戦

チェビシェフ多項式の具体例

様子をつかむために nn が小さい場合で実験してみます。

cos2θ=2cos2θ1\cos 2\theta=2\cos^2\theta-1 より T2(x)=2x21T_2(x)=2x^2-1

cos3θ=4cos3θ3cosθ\cos 3\theta=4\cos^3\theta-3\cos\theta より T3(x)=4x33xT_3(x)=4x^3-3x

四倍角の公式の証明と考察より T4(x)=8x48x2+1T_4(x)=8x^4-8x^2+1

コサインではうまくいきますが,サインではうまくいきません。

例えば,sin2θ=2sinθcosθ\sin 2\theta=2\sin\theta\cos\theta となり,sinθ\sin\theta22 次式で表すことはできません。

しかし,実は以下のような定理があります:

定理2

sinnθ\sin n\theta は「sinθ\sin\theta」と「cosθ\cos\thetan1n-1 次多項式」の積で表せる。

例えば n=2n=2 では上記の通りOKですし,n=3n=3 だと sin3θ=sinθ(4cos2θ1)\sin 3\theta=\sin\theta(4\cos^2\theta-1) となり確かに定理2が成立しています。

チェビシェフ多項式の証明と漸化式

加法定理を用いることでチェビシェフ多項式の存在を帰納的に証明すると同時に漸化式を導きます。cos\cos の和積公式に cos\cos しか現れないのがポイントです。

定理1の証明

nn に関する帰納法で証明する。n=1,2n=1,\:2 のとき成立。

cos\cos の和積公式:
cosx+cosy=2cosx+y2cosxy2\cos x+\cos y=2\cos\dfrac{x+y}{2}\cos\dfrac{x-y}{2}

において x=(n+2)θ,y=nθx=(n+2)\theta,\:y=n\theta とすると,

cos(n+2)θ=2cos(n+1)θcosθcosnθ\cos(n+2)\theta=2\cos(n+1)\theta\cos\theta-\cos n\theta となるので,

n,n+1n,\:n+1 のときに成立すると仮定すると n+2n+2 のときも成立。

また,上記の式より以下の漸化式を導けます:

Tn+2(x)=2xTn+1(x)Tn(x)T_{n+2}(x)=2xT_{n+1}(x)-T_n(x)

同様に定理2に関しては,

  • sin(n+1)θ=sinnθcosθ+cosnθsinθ\sin(n+1)\theta=\sin n\theta\cos\theta+\cos n\theta\sin\theta
  • cosnθ\cos n\thetacosθ\cos\thetann 次多項式で表せる(定理1)

を用いて帰納法で証明できます。

チェビシェフ多項式を背景とした入試問題はたくさんありますが,ここでは数学オリンピックの過去問を紹介します。

数オリの問題に挑戦

1963年国際数学オリンピックポーランド大会の第5問です。

問題

cosπ7cos2π7+cos3π7=12\cos\dfrac{\pi}{7}-\cos\dfrac{2\pi}{7}+\cos\dfrac{3\pi}{7}=\dfrac{1}{2} を示せ。

方針

7θ=π7\theta=\pi を用いて cosπ7\cos\dfrac{\pi}{7} たちが満たす方程式をつくります。

解答

cosπ7+cos3π7+cos5π7=12\cos\dfrac{\pi}{7}+\cos\dfrac{3\pi}{7}+\cos\dfrac{5\pi}{7}=\dfrac{1}{2} を示せば良い。

θ=π7,3π7,5π7\theta=\dfrac{\pi}{7},\dfrac{3\pi}{7},\dfrac{5\pi}{7} はそれぞれ 7θ=(2n1)π(n=1,2,3)7\theta=(2n-1)\pi\:(n=1,2,3) を満たすのでいずれの場合も cos3θ=cos4θ\cos 3\theta=-\cos 4\theta を満たす。

チェビシェフ多項式を用いて両辺を cosθ\cos\theta だけで表す (cosθ=c(\cos\theta=c とおく):

4c33c=8c4+8c214c^3-3c=-8c^4+8c^2-1

θ=π\theta=\pi が解であること,つまり c=1c=-1 が解であることを利用して因数分解する:

(8c34c24c+1)(c+1)=0(8c^3-4c^2-4c+1)(c+1)=0

ここで,θ=π7,3π7,5π7\theta=\dfrac{\pi}{7},\dfrac{3\pi}{7},\dfrac{5\pi}{7} はこの方程式の解であり,3つも 1-1 と異なるのでこの3つの解は,

8c34c24c+1=08c^3-4c^2-4c+1=0 を満たす。

よって,解と係数の関係から示すべき式が成立することがわかる。

※ちなみに,複素指数関数と等比数列の和の公式を用いた別解もあります。→三角関数の和と等比数列の公式

数学オリンピックの黎明期(1960年代)の問題は比較的簡単です

Tag:国際数学オリンピックの過去問

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