小問2ではチェビシェフ多項式の漸化式:
Tn+2(x)=2xTn+1(x)−Tn(x)
を知っていれば有利でした。
この漸化式は,和積の公式:
cos(n+2)θ+cosnθ=2cos(n+1)θcosθ
を移項すると得られる有名な漸化式です。
小問2
漸化式を踏まえて小問2を解いてみましょう。
小問2の答え
cosθ=p1 のとき,θ=nm⋅π となるような正の整数 m,nが存在すると仮定する。
まず,Tk(x) は k 次多項式で最高次係数は 2k−1 であることを数学的帰納法により示す。
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k=1,2 のとき
T1(x)=x=21−1x1,T2(x)=2x2−1=22−1x2−1 であるため,k=1,2 のとき成立する。
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k≧2 とし,k≦l のとき成立を仮定する。
このとき
TlTl−1=2l−1xl+(l−1 次多項式)=2l−2xl−1+(l−2 次多項式)
と表される。漸化式に代入して
Tl+1(x)=2lxl+1+(l 次多項式)
を得る。こうして k=l+1 のときも命題は成立することがわかる。
cosnθ=cosn⋅nmπ=cosmπ=(−1)m である。
チェビシェフ多項式の定義より Tn(cosθ)=cosnθ=(−1)m となる。
さて
Tn(x)=2n−1xn+an−1xn−1+⋯+a1x+a0
とおく。よって,
Tn(p1)=(−1)m だが,これは方程式の有理数解の性質に矛盾する。もう少しきちんと書くと,以下の通り:
x=cosθ=p1 を代入すると
pn2n−1+pn−1an−1+⋯+a0=(−1)m
である。辺々に pn を掛けて整理すると
2n−1=an−1p+⋯+a0pn+(−1)mpn
である。
右辺は p の倍数だが,左辺は p の倍数でないため矛盾。つまり,背理法により cosθ=p1 のとき,θ=nm⋅π となるような正の整数 m,n は存在しない。
なお同様に考えると,3以上の素数 p と,0<k<p を満たす整数 k に対して,cosθ=pk となるような有理数 θ が存在しないことがわかります。
実は「cosθ=q となる有理数 θ が存在する」を満たす有理数 q は q=0,±21,±1 に限られます。
小問1は教科書レベルの計算問題でしたが,小問2はチェビシェフ多項式を知らないと漸化式を思いつきにくいので難しいです。