三角関数の合成のやり方・証明・応用

三角関数の合成公式

asinθ+bcosθ=a2+b2sin(θ+α)a\sin\theta+b\cos\theta=\sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta+\alpha)

ただし,α\alpha は図のように (a,b)(a,b) に対応する角度。つまり「xx 軸の正の部分を反時計回りにいくら回転したら (a,b)(a,b) を通るか」を表す角度。つまり,cosα=aa2+b2,sinα=ba2+b2\cos\alpha=\dfrac{a}{\sqrt{a^2+b^2}},\sin\alpha=\dfrac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} を満たす。 三角関数の合成

三角関数の合成について,証明・意味・応用例をわかりやすく整理しました。

合成公式の証明(sinによる合成)〜加法定理の逆〜

sin\sincos\cos の足し算を sin\sin だけの式,あるいは cos\cos だけの式にすることを「合成」と言います。

まず三角関数の合成公式を証明してみます。ここではsinに合成する公式を証明します。

加法定理:
sin(θ+α)=sinθcosα+cosθsinα\sin(\theta+\alpha)=\sin\theta\cos\alpha+\cos\theta\sin\alpha
を使って右辺を展開するのみです。

証明

sin\sin の加法定理より,合成公式の右辺は,

a2+b2sin(θ+α)=a2+b2(cosαsinθ+sinαcosθ)\sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta+\alpha)\\=\sqrt{a^2+b^2}(\cos\alpha\sin\theta+\sin\alpha\cos\theta)

ここで,α\alpha(a,b)(a,b) に対応する下図のような角度であったので
sinα=ba2+b2\sin\alpha=\dfrac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}cosα=aa2+b2\cos\alpha=\dfrac{a}{\sqrt{a^2+b^2}} 三角関数の合成

これらを上式に代入すると,

a2+b2(asinθa2+b2+bcosθa2+b2)=asinθ+bcosθ\sqrt{a^2+b^2}\left(\dfrac{a\sin\theta}{\sqrt{a^2+b^2}}+\dfrac{b\cos\theta}{\sqrt{a^2+b^2}}\right)\\ =a\sin\theta+b\cos\theta

となり,三角関数の合成公式の左辺になった。

証明からもわかるように,三角関数の合成は加法定理の逆の操作と言えます。

よって 「asinθ+bcosθa\sin\theta+b\cos\theta という式を見たときに,加法定理を逆に使えば合成公式は導けるので覚える必要はない」という人もいるでしょう。

しかし,合成公式は頻繁に使うので 時短のためにも (a,b)(a,b) から α\alpha を求める方法を覚えるのがオススメです。

cosによる合成公式

「サインで合成する」公式だけでなく「コサインで合成する」公式もあります:

三角関数の合成公式(cos)

asinθ+bcosθ=a2+b2cos(θ+β)a\sin\theta+b\cos\theta=\sqrt{a^2+b^2}\cos(\theta+\beta)

ただし,β\betasinβ=aa2+b2\sin\beta=-\dfrac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}cosβ=ba2+b2\cos\beta=\dfrac{b}{\sqrt{a^2+b^2}} を満たす角度。

コサインの場合は,(a,b)(a,b) から角度 β\beta を求めるのが難しいです。少しめんどうですが加法定理の逆の操作で合成していきましょう。

証明

加法定理より,合成公式の右辺を変形すると

a2+b2cos(θ+β)=a2+b2(cosθcosβsinθsinβ)=a2+b2(ba2+b2cosθ+aa2+b2sinθ)=asinθ+bcosθ\sqrt{a^2+b^2}\cos(\theta+\beta) =\sqrt{a^2+b^2}(\cos{\theta}\cos{\beta} - \sin{\theta}\sin{\beta}) \\ = \sqrt{a^2+b^2}(\dfrac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}\cos{\theta} +\dfrac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}\sin{\theta}) \\ = a\sin{\theta} + b\cos{\theta}

となり,合成公式の左辺となった。

cosによる合成公式の補足

  • cosによる合成公式は覚える必要はありません。
  • 「サインでできることはコサインでもできる」という認識は重要です。
  • コサインバージョンは,コサインの加法定理を使って証明できます。また,サインの合成公式において位相をズラすことでも証明できます(sin(θ+π2)=cosθ\sin(\theta+\dfrac{\pi}{2})=\cos\theta を使う)。

三角関数の合成の例

実際に三角関数を合成してみましょう。

sinの形に合成する

例題1

sinθ+3cosθ\sin\theta+\sqrt{3}\cos\theta をサインに合成せよ。

解答

a=1,b=3a=1, b=\sqrt{3} として三角関数の合成公式

asinθ+bcosθ=a2+b2sin(θ+α)a\sin\theta+b\cos\theta=\sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta+\alpha)

を使うと,

sinθ+3cosθ=(1)2+(3)2sin(θ+α)=2sin(θ+α)\sin\theta+\sqrt{3}\cos\theta\\ =\sqrt{(1)^2+(\sqrt{3})^2}\sin(\theta+\alpha)\\ =2\sin(\theta+\alpha)

となる。ただし,α\alpha(1,3)(1,\sqrt{3}) に対応する角度,つまり 1:2:31:2:\sqrt{3} の直角三角形の内角であり,α=60\alpha=60^{\circ} 三角関数の合成の例

つまり sinθ+3cosθ=2sin(θ+60)\sin\theta+\sqrt{3}\cos\theta=2\sin(\theta+60^{\circ})

このように,サインに合成する場合,図を描くのがわかりやすいです。

cosの形に合成する

コサインに合成することもできます。 コサインの場合は,(a,b)(a,b) から角度 β\beta を求めるのが難しいです。少しめんどうですが加法定理の逆の操作で合成していきましょう。

例題2

sinθ+3cosθ\sin\theta+\sqrt{3}\cos\theta をコサインに合成せよ。

証明

sinθ+3cosθ=2(32cosθ+12sinθ)\sin\theta+\sqrt{3}\cos\theta\\ =2\left(\dfrac{\sqrt{3}}{2}\cos\theta+\dfrac{1}{2}\sin\theta\right)

よって,sinβ=12,cosβ=32\sin\beta=-\dfrac{1}{2},\cos\beta=\dfrac{\sqrt{3}}{2} となる β\beta を見つければ,上式は

2(cosβcosθsinβsinθ)=2cos(θ+β)2(\cos\beta\cos\theta-\sin\beta\sin\theta)\\ =2\cos(\theta+\beta)

となる。そして,そのような β\beta は例えば 30-30^{\circ} とすればよい。つまり,

sinθ+3cosθ=2cos(θ30)\sin\theta+\sqrt{3}\cos\theta=2\cos(\theta-30^{\circ})

応用例1

三角関数の合成は,関数のグラフを描くのに役立つことがあります。

例題3

y=sinθ+cosθy=\sin\theta+\cos\theta のグラフの概形を描け。

解答

三角関数の合成公式より,図を用いて求めると

sinθ+cosθ=2sin(θ+45)\sin\theta+\cos\theta=\sqrt{2}\sin(\theta+45^{\circ})

三角関数の合成

よって,描きたい関数は y=2sinθy=\sqrt{2}\sin\theta のグラフθ\theta 軸方向に 45-45^{\circ} 平行移動したもの。 三角関数の合成によるグラフの概形

応用例2

三角関数の合成公式を使うとasinθ+bcosθa\sin\theta+b\cos\theta」という扱いにくい関数をサイン(を平行移動したもの)という分かりやすい関数に変形できます。

そのため,以下の例題のように,関数の最大値や最小値を計算しやすくなります。

例題4

θ\theta が実数全体を動くとき,f(θ)=2sinθ+3cosθf(\theta)=2\sin\theta+3\cos\theta の最大値,最小値を求めよ。

解答

三角関数の合成公式より,

f(θ)=13sin(θ+α)f(\theta)=\sqrt{13}\sin(\theta+\alpha)

ただし,α\alpha(2,3)(2,3) に対応する角度(具体的に求める必要はない)。

よって f(θ)f(\theta) の最小値は 13-\sqrt{13},最大値は 13\sqrt{13} である。

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT11では,本問の3通りの解法を紹介しています。

cosへの合成はほとんど使った記憶がないです。