二次方程式における解と係数の関係
二次方程式 の解を とおくと,
が成立する。これを解と係数の関係と言う。
解と係数の関係の例
解と係数の関係の例
の解を とおくと,
です。例を見てみましょう。
の解を とおくとき, および の値を求めよ。
係数は なので,解と係数の関係より
このように,解と係数の関係を使えば,解 を求めなくても,解の和や解の積を素早く計算できます。
解と係数の関係の使い方
解と係数の関係の使い方
解と係数の関係の応用を2つ紹介します。
使い方1. 式の値の計算
の解を とおくとき, を求めよ。
解と係数の関係より,
よって,
このように,解と係数の関係を使えば,方程式が与えられたときに,その方程式の解 に関する対称式の値を計算できます。
手順は以下のとおりです。
- 解と係数の関係を使って基本対称式 の値を求める。
- 求めたい対称式を で表す。
- 1の結果を2に代入する
このような問題を解くために「基本対称式の意味」や「対称式を基本対称式で表す方法」はマスターしておきましょう。→対称式について覚えておくべき7つの公式
使い方2. 連立方程式を解く
連立方程式 を解け。
解と係数の関係を使うために,まずは基本対称式の値を求める。 は与えられているので を求める。
より,
よって,解と係数の関係より は以下の二次方程式の解となる:
これを解くと,
となるので求める解は,
および と の値を交換したもの。
このように,解と係数の関係を使えば, 対称式の値が 個指定された 個の変数を解に持つような 次方程式を構成できます。
特に,2つ目の使い方は実践で見落としがちです。対称式を見たら解と係数の関係を連想しましょう。
なお,これら2つの使い方は一般の 次方程式でも使える重要な手法です。数学オリンピックではしばしば高次方程式の解と係数の関係,高次の対称式に関する問題が出題されます。
解と係数の関係の証明
解と係数の関係の証明
解と係数の関係:
の証明を2通り解説します。
解の公式による証明
二次方程式の解の公式を使って解と係数の関係を証明します。
二次方程式の解の公式より,
とおけるので,
解の公式で得られる解は汚いのに,和や積はきれいというのがおもしろいです。
因数定理による証明
解と係数の関係の証明は,因数定理を使うことでもできます。
二次方程式 が を解に持つとき,因数定理より,定数 を用いて
とかける。
これを展開して係数を比較すると,
よって,二つ目と三つ目の式から,解と係数の関係
を得る。
2つの証明の比較
二次方程式の解と係数の関係を,2つの方法で証明しました。
- 解の公式を使う方法
- 因数定理を使う方法
実は,解と係数の関係は,3次以上の高次方程式の場合にも拡張できる美しい公式です。→三次,四次,n次方程式の解と係数の関係とその証明
そして,1つめの証明方法では(二次方程式の場合には分かりやすいですが)三次方程式に拡張するのはかなり厳しいです。というのも,三次方程式には解の公式→カルダノの公式と例題【三次方程式の解の公式】がありますが,非常に複雑だからです。
そして五次以上の方程式では,解の公式は存在しませんが解と係数の関係は存在します。つまり,1つめの方法では,一般の高次方程式の場合の解と係数の関係は証明できません。
一方,2つ目の方法なら一般の高次方程式に拡張できます。そのため2つ目の証明方法をぜひ覚えておきましょう。
練習問題
練習問題
の解を とおく。 の値をそれぞれ求めよ。
解と係数の関係より,
また,
は実数とする。
2次方程式 の一つの解がもう一つの解の2倍となるとき,実数 の値とこの二次方程式の二つの解を求めよ。
ある解を とおくともう一つの解は となる。このとき,解と係数の関係より
この式を解くと, であるので,二つの解は であり, である。
と を解に持つ二次方程式を と を用いて一つ挙げよ。
と を解に持つ二次方程式を とおくと,解と係数の関係より,
つまり, とすればよい。
実数 が を満たしながら動く。
とするとき, が取りうる値の範囲を求めよ。ただし とする。
は の二次方程式 の二つの解である。 が実数として存在する条件は の二次方程式 が実数解を持つ条件であるから
与式 を を用いて表すと,
より, が正のとき,これを満たす の範囲は
高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~ のT183では,より難しい問題と,解と係数の関係を使わない別解も紹介しています。
「解と係数の関係」は英語で Vieta’s formula といいます。