二次方程式における解と係数の関係

解と係数の関係

二次方程式 ax2+bx+c=0ax^2+bx+c=0 の解を α,β\alpha,\:\beta とおくと,

α+β=ba,αβ=ca\alpha+\beta=-\dfrac{b}{a},\:\alpha\beta=\dfrac{c}{a}

が成立する。これを解と係数の関係と言う。

解と係数の関係の例

ax2+bx+c=0ax^2+bx+c=0 の解を α,β\alpha,\:\beta とおくと,

α+β=ba,αβ=ca\alpha+\beta=-\dfrac{b}{a},\:\alpha\beta=\dfrac{c}{a}

です。例を見てみましょう。

例題1

2x2+3x5=02x^2+3x-5=0 の解を α,β\alpha,\beta とおくとき,α+β\alpha+\beta および αβ\alpha\beta の値を求めよ。

解答

係数は a=2,b=3,c=5a=2,b=3,c=-5 なので,解と係数の関係より

  • α+β=ba=32\alpha+\beta=-\dfrac{b}{a}=-\dfrac{3}{2}
  • αβ=ca=52\alpha\beta=\dfrac{c}{a}=-\dfrac{5}{2}

このように,解と係数の関係を使えば,解 α,β\alpha,\beta を求めなくても,解の和や解の積を素早く計算できます。

解と係数の関係の使い方

解と係数の関係の応用を2つ紹介します。

使い方1. 式の値の計算

例題2

x22x+5=0x^2-2x+5=0 の解を α,β\alpha,\:\beta とおくとき,α2+β2\alpha^2+\beta^2 を求めよ。

解答

解と係数の関係より,α+β=2,αβ=5\alpha+\beta=2,\:\alpha\beta=5

よって,

α2+β2=(α+β)22αβ=2225=6\alpha^2+\beta^2\\ =(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta\\ =2^2-2\cdot 5\\ =-6

このように,解と係数の関係を使えば,方程式が与えられたときに,その方程式の解 α,β\alpha,\:\beta に関する対称式の値を計算できます。

手順は以下のとおりです。

  1. 解と係数の関係を使って基本対称式 α+β,αβ\alpha+\beta,\alpha\beta の値を求める。
  2. 求めたい対称式を α+β,αβ\alpha+\beta,\alpha\beta で表す。
  3. 1の結果を2に代入する

このような問題を解くために「基本対称式の意味」や「対称式を基本対称式で表す方法」はマスターしておきましょう。→対称式について覚えておくべき7つの公式

使い方2. 連立方程式を解く

例題3

連立方程式 u+v=3,u2+v2=7u+v=3,\:u^2+v^2=7 を解け。

解答

解と係数の関係を使うために,まずは基本対称式の値を求める。 u+vu+v は与えられているので uvuv を求める。

u2+v2=(u+v)22uvu^2+v^2=(u+v)^2-2uv より,

uv=(u+v)2(u2+v2)2=3272=1uv =\dfrac{(u+v)^2-(u^2+v^2)}{2}\\ =\dfrac{3^2-7}{2}=1

よって,解と係数の関係より u,vu,\:v は以下の二次方程式の解となる:

x23x+1=0x^2-3x+1=0

これを解くと,

x=3±52x=\dfrac{3\pm\sqrt{5}}{2}

となるので求める解は,

u=3+52,v=352u=\dfrac{3+\sqrt{5}}{2},\:v=\dfrac{3-\sqrt{5}}{2}

および uuvv の値を交換したもの。

このように,解と係数の関係を使えば, 対称式の値が 22 個指定された 22 個の変数を解に持つような 22 次方程式を構成できます。

特に,2つ目の使い方は実践で見落としがちです。対称式を見たら解と係数の関係を連想しましょう。

なお,これら2つの使い方は一般の nn 次方程式でも使える重要な手法です。数学オリンピックではしばしば高次方程式の解と係数の関係,高次の対称式に関する問題が出題されます。

解と係数の関係の証明

解と係数の関係:

α+β=ba,αβ=ca\alpha+\beta=-\dfrac{b}{a},\:\alpha\beta=\dfrac{c}{a}

の証明を2通り解説します。

解の公式による証明

二次方程式の解の公式を使って解と係数の関係を証明します。

証明

二次方程式の解の公式より,

α=b+b24ac2a,β=bb24ac2a\alpha=\dfrac{-b+\sqrt{b^2-4ac}}{2a},\:\beta=\dfrac{-b-\sqrt{b^2-4ac}}{2a}

とおけるので,

α+β=bb2a=ba\alpha+\beta=\dfrac{-b-b}{2a}=-\dfrac{b}{a}

αβ=b2(b24ac)4a2=ca\alpha\beta=\dfrac{b^2-(b^2-4ac)}{4a^2}=\dfrac{c}{a}

解の公式で得られる解は汚いのに,和や積はきれいというのがおもしろいです。

因数定理による証明

解と係数の関係の証明は,因数定理を使うことでもできます。

証明

二次方程式 ax2+bx+c=0ax^2+bx+c=0x=α,βx=\alpha,\:\beta を解に持つとき,因数定理より,定数 AA を用いて

ax2+bx+c=A(xα)(xβ)ax^2+bx+c\\ =A(x-\alpha)(x-\beta)

とかける。

これを展開して係数を比較すると,

a=A,b=A(α+β),c=Aαβa=A,\:b=-A(\alpha+\beta),\:c=A\alpha\beta

よって,二つ目と三つ目の式から,解と係数の関係

α+β=ba,αβ=ca\alpha+\beta=-\dfrac{b}{a},\:\alpha\beta=\dfrac{c}{a}

を得る。

2つの証明の比較

二次方程式の解と係数の関係を,2つの方法で証明しました。

  1. 解の公式を使う方法
  2. 因数定理を使う方法

実は,解と係数の関係は,3次以上の高次方程式の場合にも拡張できる美しい公式です。→三次,四次,n次方程式の解と係数の関係とその証明

そして,1つめの証明方法では(二次方程式の場合には分かりやすいですが)三次方程式に拡張するのはかなり厳しいです。というのも,三次方程式には解の公式→カルダノの公式と例題【三次方程式の解の公式】がありますが,非常に複雑だからです。

そして五次以上の方程式では,解の公式は存在しませんが解と係数の関係は存在します。つまり,1つめの方法では,一般の高次方程式の場合の解と係数の関係は証明できません。

一方,2つ目の方法なら一般の高次方程式に拡張できます。そのため2つ目の証明方法をぜひ覚えておきましょう。

練習問題

問題1

x2+5x+1=0x^2+5x+1=0 の解を α,β\alpha,\beta とおく。α+β,αβ,α3+β3\alpha+\beta,\alpha\beta,\alpha^3+\beta^3 の値をそれぞれ求めよ。

解答

解と係数の関係より,α+β=5,αβ=1\alpha+\beta=-5,\alpha\beta=1

また,

α3+β3=(α+β)33αβ(α+β)=(5)33×1×(5)=125+15=110\alpha^3+\beta^3\\ =(\alpha+\beta)^3-3\alpha\beta(\alpha+\beta)\\ =(-5)^3-3\times 1\times (-5)\\ =-125+15=-110

問題2

aa は実数とする。

2次方程式 x2+9x+a+3=0x^2 + 9x + a+3 = 0 の一つの解がもう一つの解の2倍となるとき,実数 aa の値とこの二次方程式の二つの解を求めよ。

解答

ある解を α\alpha とおくともう一つの解は 2α2\alpha となる。このとき,解と係数の関係より

α+2α=3α=9\alpha + 2\alpha = 3\alpha = -9 2α2=a+32\alpha^2 = a+3 この式を解くと,a=15,α=3a = 15,\alpha = -3 であるので,二つの解は 3,6-3,-6 であり,a=15a = 15 である。

問題3

α\alphaβ\beta を解に持つ二次方程式を α\alphaβ\beta を用いて一つ挙げよ。

解答

α\alphaβ\beta を解に持つ二次方程式を x2+ax+bx^2 +ax +b とおくと,解と係数の関係より, a=α+β-a = \alpha + \beta b=αβ b = \alpha \beta

つまり,x2(α+β)x+αβ=0x^2-(\alpha+\beta)x+\alpha\beta=0 とすればよい。

問題4

実数 x,yx,yx2+y2=4x^2+y^2 = 4 を満たしながら動く。

s=x+y,t=xys = x+y,t = xy とするとき,ss が取りうる値の範囲を求めよ。ただし s>0s>0 とする。

解答

x,yx,ykk の二次方程式 k2sk+t=0k^2 -sk +t=0 の二つの解である。x,yx,y が実数として存在する条件は kk の二次方程式 k2sk+t=0k^2 -sk +t=0 が実数解を持つ条件であるから

s24t0 s^2 - 4t \geqq 0\ \cdots①

与式 x2+y2=4x^2+y^2 = 4s,ts,t を用いて表すと, s22t=4 s^2-2t=4\ \cdots② 4t=82s2-4t=8-2s^2

,①,② より, s2+(82s2)0s^2+(8-2s^2)\geqq 0 s28-s^2 \geqq -8 ss が正のとき,これを満たす ss の範囲は s22s\leqq 2\sqrt{2}

「解と係数の関係」は英語で Vieta’s formula といいます。

Tag:数学2の教科書に載っている公式の解説一覧