楕円

楕円とは

2点からの距離の和が一定である点の軌跡を楕円と言う。また,この2点のことを焦点という。

楕円の端を結ぶ直線のうち,長いものを 長軸,短いものを 短軸 という。

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この記事では楕円の定義とその基本的な性質を紹介します。

双曲線とは似た性質が多いので,こちらもどうぞ。→ 双曲線

楕円の基礎知識

焦点がx軸上にある楕円

x2a2+y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 は楕円を表す。この楕円は,

  1. a>ba > b
  2. (±a,0)(\pm a, 0 )(0,±b)(0,\pm b) を通る。
  3. 二点 (±a2b2,0)(\pm\sqrt{a^2-b^2},0) からの距離の和が 2a2a で一定である。

焦点がx軸上にある楕円

証明

(±c,0)(\pm c , 0) からの距離の和が 2a2a のとき, (x+c)2+y2+(xc)2+y2=2a \sqrt{(x+c)^2+y^2} + \sqrt{(x-c)^2 + y^2} = 2a

(x+c)2+y2=2a(xc)2+y2 \sqrt{(x+c)^2+y^2} = 2a - \sqrt{(x-c)^2 + y^2}

両辺を2乗して整理すると, 4cx4a2=4a(xc)2+y2 4cx - 4a^2 = - 4a \sqrt{(x-c)^2 + y^2} である。辺々を 44 で割って2乗すると c2x22a2cx+a4=a2{(xc)2+y2} c^2x^2 - 2a^2cx + a^4 = a^2 \{ (x-c)^2 + y^2 \} である。整理すると (a2c2)x2+a2y2=a2(a2c2) (a^2-c^2) x^2 + a^2 y^2 = a^2 (a^2-c^2) となる。ここで b=a2c2b = \sqrt{a^2 - c^2} とおくと b2x2+a2y2=a2b2 b^2 x^2 + a^2 y^2 = a^2 b^2 辺々を a2b2a^2b^2 で割って x2a2+y2b2=1 \dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1 を得る。さらにこのとき c=±a2b2 c =\pm \sqrt{a^2 -b^2} となる。

練習問題1

楕円 x29+y24=1\dfrac{x^2}{9}+\dfrac{y^2}{4}=1 の焦点を求めよ。

解答

さきほどより焦点は (±94,0)(\pm\sqrt{9-4},0) となる。つまり (5,0)(\sqrt{5},0)(5,0)(-\sqrt{5},0)である。

焦点がy軸上にある楕円

x2a2+y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 は楕円を表す。この楕円は,

  • a<ba < b
  • 二点 (0,±b2a2)(0,\pm\sqrt{b^2-a^2}) からの距離の差が 2b2b で一定である。
  • (±a,0)(\pm a, 0 )(0,±b)(0,\pm b) を通る。

焦点がy軸上にある楕円

証明は焦点が xx 軸上にあるときと同様です。

入試でよく出る性質

入試で頻出の性質を紹介します。

面積

定理

楕円 x2a2+y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1 の面積は πab\pi ab である。

証明は 楕円の面積公式の3通りの導出 をご覧ください。

平行移動

ここまでは,原点中心の楕円でしたが,そうでない場合もあります。グラフの平行移動(具体例と公式の証明)を使って考えます。

練習問題2

(x2)25+(y3)2=1\dfrac{(x-2)^2}{5} + (y-3)^2 = 1 の焦点を求めよ。

解答

x25+y2=1\dfrac{x^2}{5}+y^2 = 1 という「原点中心の楕円」を xx 軸方向に 22yy 軸方向に 33 平行移動したものである。

原点中心の楕円の焦点は,前の公式より (±51,0)(\pm \sqrt{5-1} , 0),つまり (±4,0)(\pm 4,0) である。

求める焦点は (±4,0)(\pm 4,0)xx 軸方向に 22yy 軸方向に 33 平行移動したものである。よって (2,7),(2,1)(2,7), (2,-1) である。

接線

接線

楕円 x2a2+y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 上の点 (x0,y0)(x_0,y_0) における接線の方程式は, x0xa2+y0yb2=1 \dfrac{x_0x}{a^2}+\dfrac{y_0y}{b^2}=1 である。

接線の方程式の導出は ,楕円の接線を求める公式とその証明 を参照ください。

練習問題3
  1. x215+y210=1\dfrac{x^2}{15} + \dfrac{y^2}{10} = 1(3,2)(3,2) における接線を求めよ。
  2. (x2)215+(y+3)210=1\dfrac{(x-2)^2}{15} + \dfrac{(y+3)^2}{10} = 1(5,1)(5,-1) における接線を求めよ。
解答
  1. 公式から x5+y5=1 \dfrac{x}{5} + \dfrac{y}{5} = 1 である。

  2. 問題の楕円は x215+y210=1\dfrac{x^2}{15} + \dfrac{y^2}{10} = 1xx 軸方向に 22yy 軸方向に 3-3 平行移動したものである。(5,1)(5,-1)(3,2)(3,2) に対応するため, x5+y5=1 \dfrac{x}{5} + \dfrac{y}{5} = 1 xx 軸方向に 22yy 軸方向に 3-3 平行移動した直線を考えればよい。よって x5+y5=45 \dfrac{x}{5} + \dfrac{y}{5} = \dfrac{4}{5} である。

媒介変数表示

楕円 x2a2+y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2}=1 {x=acosθy=bsinθ \begin{cases} x = a \cos \theta\\ y = b \sin \theta \end{cases} と媒介変数表示できます。

詳細は,→楕円・双曲線の媒介変数表示の3通りの方法

その他基礎知識

入試で登場することは少ないですが,重要な基礎知識を紹介します。

準線と離心率

楕円は「2点からの距離の和が一定」で定義されましたが,「点 F\mathrm{F} からの距離と直線 ll からの距離の比が一定」で定義することもできます。

この直線 ll準線と言い,比を離心率と言います。楕円の離心率は 11 より小さいです。 離心率

楕円 x2a2+y2b2=1 (a>b)\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1 \ (a > b) について,準線(の1つ)は x=a2a2b2x=\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2-b^2}},離心率は a2b2a\dfrac{\sqrt{a^2-b^2}}{a} になります。詳細は,→離心率の意味と関連する計算

極座標表示

極座標で r=l1+εcosθ(l>0,ε>1)r=\dfrac{l}{1+\varepsilon\cos\theta}\:(l>0,\varepsilon>1) と表される曲線は楕円です。ε\varepsilon はさきほど登場した離心率です。ll は半直弦と呼ばれます。

詳細は,→二次曲線(楕円,放物線,双曲線)の極座標表示

円錐曲線

楕円は「円錐を母線より急な曲線で切ったときにできる曲線」とみなすこともできます。

詳細は,→二次曲線の分類(四通りの方法)

準円

楕円に対して,「その点から楕円に引いた2本の接線が直交する」ような点の集合は円になります。これを楕円の準円と言います。→楕円,放物線,双曲線の準円

発展

発展的なトピックを紹介します。

反射定理

定理

楕円の焦点から出た光は,反射してから反対側の焦点を通る。

楕円の反射定理とその証明

惑星の公転軌道

地球の公転軌道は楕円になります。→地球の公転軌道が楕円であることの導出

楕円積分

0ϕ1k2sin2θdθ \int_0^{\phi}\sqrt{1-k^2\sin^2\theta}d\theta を(第二種)楕円積分といいます。

楕円積分は楕円の弧長の計算に登場します。

計算

楕円 x2a2+y2b2=1(a>b>0)\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1\:(a>b>0) の周の長さを計算する。x=asinθ,y=bcosθx=a\sin\theta,y=b\cos\theta と媒介変数表示すると,0θϕ0\leq\theta\leq \phi の部分の長さは,

0ϕ(acosθ)2+(bsinθ)2dθ=a0ϕ(1sin2θ)+b2a2sin2θdθ=a0ϕ1(a2b2)a2sin2θdθ\begin{aligned} &\int_{0}^{\phi} \sqrt{(a\cos\theta)^2 + (-b\sin\theta)^2} d\theta\\ &= a \int_0^{\phi} \sqrt{(1-\sin^2\theta)+\dfrac{b^2}{a^2} \sin^2\theta} d\theta\\ &= a \int_0^{\phi} \sqrt{1-\dfrac{(a^2-b^2)}{a^2} \sin^2\theta} d \theta \end{aligned} である。

周長の計算について,さらに深いトピックは 楕円の周の長さの求め方と近似公式 をご覧ください。

円は楕円の特殊なケースです。とはいえ,入試ではそのことが本質的に効いてくることはあまりありません。