離心率の意味と関連する計算

更新日時 2021/10/11
離心率とは

FF からの距離直線 ll からの距離の比が一定である点 PP の軌跡は二次曲線になる。この比のことを離心率と呼ぶ。 離心率とは

目次
  • 離心率と二次曲線

  • 離心率が1未満の場合:楕円

  • 離心率が1の場合:放物線

  • 離心率が1より大きい場合:双曲線

  • 関連する話題

離心率と二次曲線

FF からの距離直線 ll からの距離の比が ε\varepsilon である点 PP の軌跡を考えます。この軌跡について,ε\varepsilon離心率FF焦点ll準線と言います。

離心率 ε\varepsilon が大きいと,焦点までの距離 PFPF が長いので,離心率は「中心(焦点)から離れる比率」と言えますね。

まずは,点 PP の軌跡がどうなるのか,結果を述べます。

定理

FF からの距離直線 ll からの距離の比が ε\varepsilon である点の軌跡は二次曲線になる。特に,

  • 0<ε<10<\varepsilon<1 のとき楕円
  • ε=1\varepsilon=1 のとき放物線
  • 1<ε1<\varepsilon のとき双曲線

楕円・放物線・双曲線それぞれについて確認していきましょう。

離心率が1未満の場合:楕円

離心率 ε\varepsilon が1未満の場合,楕円になることを確認してみます。楕円の場合さえ理解できれば,放物線や双曲線もほぼ同様です。

楕円になることの確認

ll の方程式を x=0x=0FF の座標を (c,0)(c,0) とする。 楕円の離心率

P(x,y)P(x,y) から ll におろした垂線の足 HH の座標は (0,y)(0,y) なので,

PF2PH2=(xc)2+y2x2\dfrac{PF^2}{PH^2}=\dfrac{(x-c)^2+y^2}{x^2}

これが ε2\varepsilon^2 と等しい条件は,

(xc)2+y2=ε2x2(x-c)^2+y^2=\varepsilon^2x^2

(1ε2)x22cx+c2+y2=0(1-\varepsilon^2)x^2-2cx+c^2+y^2=0

(1ε2)(xc1ε2)2c2(1ε2)+y2+c2=0(1-\varepsilon^2)\left(x-\dfrac{c}{1-\varepsilon^2}\right)^2-\dfrac{c^2}{(1-\varepsilon^2)}+y^2+c^2=0

(1ε2)(xc1ε2)2+y2=ε21ε2(1-\varepsilon^2)\left(x-\dfrac{c}{1-\varepsilon^2}\right)^2+y^2=\dfrac{\varepsilon^2}{1-\varepsilon^2}

これは楕円の方程式を表す(→注)。

注:A(xx0)2+B(yy0)2=CA(x-x_0)^2+B(y-y_0)^2=C という方程式は,A,B,C>0A,B,C>0 のとき,中心が (x0,y0)(x_0,y_0) である楕円を表します。

標準形の楕円の焦点・準線・離心率

次に,標準形の楕円から,焦点・準線・離心率を計算する公式です。長半径 aa と短半径 bb から計算できます。

楕円の離心率などを求める公式

楕円 x2a2+y2b2=1(a>b>0)\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1\:(a>b>0)

において,焦点(の1つ)は (a2b2,0)(\sqrt{a^2-b^2},0),準線(の1つ)は x=a2a2b2x=\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2-b^2}},離心率は a2b2a\dfrac{\sqrt{a^2-b^2}}{a}

楕円の準線と焦点

さきほどの計算結果から導出することもできますが,ここでは直接 PFPH=ε\dfrac{PF}{PH}=\varepsilon を確認してみます。

証明

楕円上の点は,媒介変数 θ\theta を用いて P(acosθ,bsinθ)P(a\cos\theta,b\sin\theta) とおける。このとき,

  • F(a2b2,0)F(\sqrt{a^2-b^2},0)
  • HHPP から x=a2a2b2x=\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2-b^2}} におろした垂線の足

とする。PF2,PH2PF^2,PH^2 を計算する(その際 sinθ\sin\thetacosθ\cos\theta に直す)と,

PF2=(acosθa2b2)2+(bsinθ)2=a2cos2θ2aa2b2cosθ+(a2b2)+b2(1cos2θ)=(a2b2)cos2θ2aa2b2cosθ+a2PF^2\\ =(a\cos\theta-\sqrt{a^2-b^2})^2+(b\sin\theta)^2\\ =a^2\cos^2\theta-2a\sqrt{a^2-b^2}\cos\theta+(a^2-b^2)+b^2(1-\cos^2\theta)\\ =(a^2-b^2)\cos^2\theta-2a\sqrt{a^2-b^2}\cos\theta+a^2

PH2=(a2a2b2acosθ)2=a2cos2θ2a3a2b2cosθ+a4a2b2PH^2\\ =\left(\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2-b^2}}-a\cos\theta\right)^2\\ =a^2\cos^2\theta-\dfrac{2a^3}{\sqrt{a^2-b^2}}\cos\theta+\dfrac{a^4}{a^2-b^2}

よって,PF2PH2=a2b2a2\dfrac{PF^2}{PH^2 }=\dfrac{a^2-b^2}{a^2} となった(θ\theta によらない!)

ちなみに,焦点・準線のペアはもう1つあります。もう1つのペアは,焦点は (a2b2,0)-(\sqrt{a^2-b^2},0),準線は x=a2a2b2x=-\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2-b^2}} です。

2つのペアを合わせて焦点は (±a2b2,0)(\pm\sqrt{a^2-b^2},0),準線は x=±a2a2b2x=\pm\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2-b^2}},離心率は a2b2a\dfrac{\sqrt{a^2-b^2}}{a} と書けます。

離心率が1の場合:放物線

離心率が1の場合,つまり PF=PHPF=PH の場合,軌跡は放物線になります。

放物線になることの確認

楕円の場合と全く同様に,軌跡の方程式が

2cx+c2+y2=02cx+c^2+y^2=0

になることがわかる。これは放物線を表す。

放物線の準線と焦点については放物線の準線・焦点と一般化でより詳しく解説しています。

離心率が1より大きい場合:双曲線

離心率 ε\varepsilon が1より大きい場合,双曲線になることを確認してみます。

双曲線になることの確認

楕円の場合と全く同様に,軌跡の方程式が

(1ε2)(xc1ε2)2+y2=ε21ε2(1-\varepsilon^2)\left(x-\dfrac{c}{1-\varepsilon^2}\right)^2+y^2=\dfrac{\varepsilon^2}{1-\varepsilon^2}

つまり

(ε21)(xc1ε2)2y2=ε2ε21(\varepsilon^2-1)\left(x-\dfrac{c}{1-\varepsilon^2}\right)^2-y^2=\dfrac{\varepsilon^2}{\varepsilon^2-1}

になることがわかる。これは双曲線の方程式を表す(→注)。

注:A(xx0)2+B(yy0)2=CA(x-x_0)^2+B(y-y_0)^2=C という方程式は,A,C>0A,C>0 かつ B<0B<0 のとき,双曲線を表します。

双曲線の楕円の焦点・準線・離心率

次に,標準形の双曲線から,焦点・準線・離心率を計算する公式です。

双曲線の離心率などを求める公式

双曲線 x2a2y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1

において,焦点(の1つ)は (a2+b2,0)(\sqrt{a^2+b^2},0),準線(の1つ)は x=a2a2+b2x=\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2+b^2}},離心率は a2+b2a\dfrac{\sqrt{a^2+b^2}}{a}

楕円の場合と同様に,

  • 媒介変数表示 P(acosθ,btanθ)P\left(\dfrac{a}{\cos\theta},b\tan\theta\right) を使うと,PFPH=a2+b2a\dfrac{PF}{PH}=\dfrac{\sqrt{a^2+b^2}}{a} が確認できます。
  • 焦点と準線はもう1ペアあり,2つのペアを合わせて焦点は (±a2+b2,0)(\pm\sqrt{a^2+b^2},0),準線は x=±a2a2+b2x=\pm\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2+b^2}},離心率は a2+b2a\dfrac{\sqrt{a^2+b^2}}{a} と書けます。

関連する話題

二次曲線に関する定理の多くは「ただ計算するだけ」で証明できますが,少しの工夫で計算量が大きく変わってきたりするのが楽しいです。

Tag:数学3の教科書に載っている公式の解説一覧