離心率の意味と関連する計算

離心率とは

FF からの距離直線 ll からの距離の比が一定である点 PP の軌跡は二次曲線になる。この比のことを離心率と呼ぶ。 離心率とは

離心率と二次曲線

FF からの距離直線 ll からの距離の比が ε\varepsilon である点 PP の軌跡を考えます。この軌跡について,ε\varepsilon離心率FF焦点ll準線と言います。

離心率 ε\varepsilon が大きいと,焦点までの距離 PFPF が長いので,離心率は「中心(焦点)から離れる比率」と言えますね。

まずは,点 PP の軌跡がどうなるのか,結果を述べます。

定理

FF からの距離直線 ll からの距離の比が ε\varepsilon である点の軌跡は二次曲線になる。特に,

  • 0<ε<10<\varepsilon<1 のとき楕円
  • ε=1\varepsilon=1 のとき放物線
  • 1<ε1<\varepsilon のとき双曲線

楕円・放物線・双曲線それぞれについて確認していきましょう。

離心率が1未満の場合:楕円

離心率 ε\varepsilon が1未満の場合,楕円になることを確認してみます。楕円の場合さえ理解できれば,放物線や双曲線もほぼ同様です。

楕円になることの確認

ll の方程式を x=0x=0FF の座標を (c,0)(c,0) とする。 楕円の離心率

P(x,y)P(x,y) から ll におろした垂線の足 HH の座標は (0,y)(0,y) なので,

PF2PH2=(xc)2+y2x2\dfrac{PF^2}{PH^2}=\dfrac{(x-c)^2+y^2}{x^2}

これが ε2\varepsilon^2 と等しい条件は,

(xc)2+y2=ε2x2(x-c)^2+y^2=\varepsilon^2x^2

(1ε2)x22cx+c2+y2=0(1-\varepsilon^2)x^2-2cx+c^2+y^2=0

(1ε2)(xc1ε2)2c2(1ε2)+y2+c2=0(1-\varepsilon^2)\left(x-\dfrac{c}{1-\varepsilon^2}\right)^2-\dfrac{c^2}{(1-\varepsilon^2)}+y^2+c^2=0

(1ε2)(xc1ε2)2+y2=c2ε21ε2(1-\varepsilon^2)\left(x-\dfrac{c}{1-\varepsilon^2}\right)^2+y^2=\dfrac{c^2\varepsilon^2}{1-\varepsilon^2}

これは楕円の方程式を表す(→注)。

注:A(xx0)2+B(yy0)2=CA(x-x_0)^2+B(y-y_0)^2=C という方程式は,A,B,C>0A,B,C>0 のとき,中心が (x0,y0)(x_0,y_0) である楕円を表します。

標準形の楕円の焦点・準線・離心率

次に,標準形の楕円から,焦点・準線・離心率を計算する公式です。長半径 aa と短半径 bb から計算できます。

楕円の離心率などを求める公式

楕円 x2a2+y2b2=1(a>b>0)\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1\:(a>b>0)

において,焦点(の1つ)は (a2b2,0)(\sqrt{a^2-b^2},0),準線(の1つ)は x=a2a2b2x=\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2-b^2}},離心率は a2b2a\dfrac{\sqrt{a^2-b^2}}{a}

楕円の準線と焦点

さきほどの計算結果から導出することもできますが,ここでは直接 PFPH=ε\dfrac{PF}{PH}=\varepsilon を確認してみます。

証明

楕円上の点は,媒介変数 θ\theta を用いて P(acosθ,bsinθ)P(a\cos\theta,b\sin\theta) とおける。このとき,

  • F(a2b2,0)F(\sqrt{a^2-b^2},0)
  • HHPP から x=a2a2b2x=\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2-b^2}} におろした垂線の足

とする。PF2,PH2PF^2,PH^2 を計算する(その際 sinθ\sin\thetacosθ\cos\theta に直す)と,

PF2=(acosθa2b2)2+(bsinθ)2=a2cos2θ2aa2b2cosθ+(a2b2)+b2(1cos2θ)=(a2b2)cos2θ2aa2b2cosθ+a2PF^2\\ =(a\cos\theta-\sqrt{a^2-b^2})^2+(b\sin\theta)^2\\ =a^2\cos^2\theta-2a\sqrt{a^2-b^2}\cos\theta+(a^2-b^2)+b^2(1-\cos^2\theta)\\ =(a^2-b^2)\cos^2\theta-2a\sqrt{a^2-b^2}\cos\theta+a^2

PH2=(a2a2b2acosθ)2=a2cos2θ2a3a2b2cosθ+a4a2b2PH^2\\ =\left(\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2-b^2}}-a\cos\theta\right)^2\\ =a^2\cos^2\theta-\dfrac{2a^3}{\sqrt{a^2-b^2}}\cos\theta+\dfrac{a^4}{a^2-b^2}

よって,PF2PH2=a2b2a2\dfrac{PF^2}{PH^2 }=\dfrac{a^2-b^2}{a^2} となった(θ\theta によらない!)

ちなみに,焦点・準線のペアはもう1つあります。もう1つのペアは,焦点は (a2b2,0)-(\sqrt{a^2-b^2},0),準線は x=a2a2b2x=-\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2-b^2}} です。

2つのペアを合わせて焦点は (±a2b2,0)(\pm\sqrt{a^2-b^2},0),準線は x=±a2a2b2x=\pm\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2-b^2}},離心率は a2b2a\dfrac{\sqrt{a^2-b^2}}{a} と書けます。

離心率が1の場合:放物線

離心率が1の場合,つまり PF=PHPF=PH の場合,軌跡は放物線になります。

放物線になることの確認

楕円の場合と全く同様に,軌跡の方程式が

2cx+c2+y2=02cx+c^2+y^2=0

になることがわかる。これは放物線を表す。

放物線の準線と焦点については放物線の準線・焦点と一般化でより詳しく解説しています。

離心率が1より大きい場合:双曲線

離心率 ε\varepsilon が1より大きい場合,双曲線になることを確認してみます。

双曲線になることの確認

楕円の場合と全く同様に,軌跡の方程式が

(1ε2)(xc1ε2)2+y2=c2ε21ε2(1-\varepsilon^2)\left(x-\dfrac{c}{1-\varepsilon^2}\right)^2+y^2=\dfrac{c^2\varepsilon^2}{1-\varepsilon^2}

つまり

(ε21)(xc1ε2)2y2=c2ε2ε21(\varepsilon^2-1)\left(x-\dfrac{c}{1-\varepsilon^2}\right)^2-y^2=\dfrac{c^2\varepsilon^2}{\varepsilon^2-1}

になることがわかる。これは双曲線の方程式を表す(→注)。

注:A(xx0)2+B(yy0)2=CA(x-x_0)^2+B(y-y_0)^2=C という方程式は,A,C>0A,C>0 かつ B<0B<0 のとき,双曲線を表します。

双曲線の楕円の焦点・準線・離心率

次に,標準形の双曲線から,焦点・準線・離心率を計算する公式です。

双曲線の離心率などを求める公式

双曲線 x2a2y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1

において,焦点(の1つ)は (a2+b2,0)(\sqrt{a^2+b^2},0),準線(の1つ)は x=a2a2+b2x=\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2+b^2}},離心率は a2+b2a\dfrac{\sqrt{a^2+b^2}}{a}

楕円の場合と同様に,

  • 媒介変数表示 P(acosθ,btanθ)P\left(\dfrac{a}{\cos\theta},b\tan\theta\right) を使うと,PFPH=a2+b2a\dfrac{PF}{PH}=\dfrac{\sqrt{a^2+b^2}}{a} が確認できます。
  • 焦点と準線はもう1ペアあり,2つのペアを合わせて焦点は (±a2+b2,0)(\pm\sqrt{a^2+b^2},0),準線は x=±a2a2+b2x=\pm\dfrac{a^2}{\sqrt{a^2+b^2}},離心率は a2+b2a\dfrac{\sqrt{a^2+b^2}}{a} と書けます。

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二次曲線に関する定理の多くは「ただ計算するだけ」で証明できますが,少しの工夫で計算量が大きく変わってきたりするのが楽しいです。

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