地球の公転軌道が楕円であることの導出

地球は「焦点の1つが太陽であるような楕円軌道」を描く。

けっこう大変ですが,理工系の人は一度はやっておきたい計算です。

やりたいこと

この記事では,運動方程式をもとに地球の公転運動の軌道が太陽を焦点の一つとする二次曲線であることを証明します。ただし,

  • 地球と太陽以外の影響は無視します。
  • 地球の質量は太陽の質量に比べて無視できるものとします。

直交座標ではなく極座標で計算します。

必要な前提知識

微分方程式を立てる

まずは運動方程式を変形していきます。地球の質量を mm とします。

導出(前半)

地球は太陽からの引力(中心力)を受けて運動する。運動方程式は,

m(r¨rθ˙2)=Kr2m(\ddot{r}-r\dot{\theta}^2)=-\dfrac{K}{r^2}

m1rddt(r2θ˙)=0m\dfrac{1}{r}\dfrac{d}{dt}(r^2\dot{\theta})=0

ただし,KK は定数。二つ目の式より r2θ˙=Cr^2\dot{\theta}=CCC も定数)

この式を θ˙\dot{\theta} について解いて一つ目の式に代入すると,

mr¨mC2r3=Kr2m\ddot{r}-\dfrac{mC^2}{r^3}=-\dfrac{K}{r^2}

を得る。

次に合成関数の微分公式を用いて時間微分を θ\theta での微分に変換します。

導出(中盤)

合成関数の微分公式と r2θ˙=Cr^2\dot{\theta}=C より,

r˙=θ˙drdθ=Cr2drdθ\dot{r}=\dot{\theta}\dfrac{dr}{d\theta}=\dfrac{C}{r^2}\dfrac{dr}{d\theta}

さらに両辺を tt で微分すると,

r¨=2Cr˙r3drdθ+C2r4d2rdθ2=2C2r5(drdθ)2+C2r4d2rdθ2\ddot{r}=\dfrac{-2C\dot{r}}{r^3}\dfrac{dr}{d\theta}+\dfrac{C^2}{r^4}\dfrac{d^2r}{d\theta^2}\\ =\dfrac{-2C^2}{r^5}\left(\dfrac{dr}{d\theta}\right)^2+\dfrac{C^2}{r^4}\dfrac{d^2r}{d\theta^2}

これを(前半)で得た式に代入すると,

2mC2r3(drdθ)2+mC2r2d2rdθ2mC2r=K\dfrac{-2mC^2}{r^3}\left(\dfrac{dr}{d\theta}\right)^2+\dfrac{mC^2}{r^2}\dfrac{d^2r}{d\theta^2}-\dfrac{mC^2}{r}=-K

となり rrθ\theta の関係を求めるための微分方程式を得る。

微分方程式を解く

導出(後半)

天下り的ですが,p=1rp=\dfrac{1}{r} と置換します。またまた合成関数の微分より,

dpdθ=drdθ1r2\dfrac{dp}{d\theta}=-\dfrac{dr}{d\theta}\dfrac{1}{r^2}

d2pdθ2=d2rdθ21r2+(drdθ)22r3\dfrac{d^2p}{d\theta^2}=-\dfrac{d^2r}{d\theta^2}\dfrac{1}{r^2}+\left(\dfrac{dr}{d\theta}\right)^2\dfrac{2}{r^3}

これをさきほどの微分方程式と比較して,

mC2d2pdθ2=mC2p+KmC^2\dfrac{d^2p}{d\theta^2}=-mC^2p+K を得る。

これは単振動の方程式なので解くことができる:

p=KmC2+Acos(θ+B)p=\dfrac{K}{mC^2}+A\cos(\theta+B)

ただし,A,BA,B は初期条件から定まる定数。

適当に回転することで B=0B=0 とできる。よって,

r=1p=mC2K1+mC2AKcosθr=\dfrac{1}{p}=\dfrac{\frac{mC^2}{K}}{1+\frac{mC^2A}{K}\cos\theta}

となり二次曲線の極座標表示の形と一致する。

これで地球の軌道が二次曲線であることが分かりました! あとは軌道が放物線や双曲線でないことを確認する必要がありますが,太陽から離れ続けていないことから明らかでしょう。

計算がかなり大変でした,一度はやっておきたいですが,二度はやりたくない計算です。