二次元極座標における運動方程式とその導出

二次元において運動方程式を極座標で記述すると,

m(r¨rθ˙2)=Frm(\ddot{r}-r\dot{\theta}^2)=F_r

m1rddt(r2θ˙)=Fθm\dfrac{1}{r}\dfrac{d}{dt}(r^2\dot{\theta})=F_{\theta}

ただし,r˙\dot{r}rr の時間微分 drdt\dfrac{dr}{dt} を表します。ドット二つは二階微分です。

FrF_r は力の rr 成分,FθF_{\theta} は力の θ\theta 成分(θ\theta を増やそうとする向きの成分,後述の図参照)を表します。

直交座標と極座標における運動方程式

二次元直交座標における運動方程式は,mx¨=Fxm\ddot{x}=F_xmy¨=Fym\ddot{y}=F_y と非常に単純です。

しかし,クーロン力や万有引力などの中心力を扱うときには Fθ=0F_{\theta}=0 となるので極座標で考えた方が計算しやすいのです。例えば,惑星の軌道が二次曲線を描くことの導出では極座標が活躍します。

というわけで,この記事では直交座標の運動方程式から極座標の運動方程式を導出します。微分のよい練習になります。

ベクトルの変換

まずは,FrF_rFθF_{\theta} を,FxF_xFyF_y で表します。

1A: Fr=Fxcosθ+FysinθF_r=F_x\cos\theta+F_y\sin\theta

1B: Fθ=Fxsinθ+FycosθF_{\theta}=-F_x\sin\theta+F_y\cos\theta

証明

rr 方向の単位ベクトルを π2\dfrac{\pi}{2} 反時計周りに回転させると θ\theta 方向の単位ベクトルになる。

座標変換

よって,

Fx=Frcosθ+Fθcos(θ+π2)=FrcosθFθsinθF_x=F_r\cos\theta+F_{\theta}\cos(\theta+\frac{\pi}{2})\\ =F_r\cos\theta-F_{\theta}\sin\theta Fy=Frsinθ+Fθsin(θ+π2)=Frsinθ+FθcosθF_y=F_r\sin\theta+F_{\theta}\sin(\theta+\frac{\pi}{2})\\ =F_r\sin\theta+F_{\theta}\cos\theta

これを Fr,FθF_r,F_\theta について解くと上記の公式を得る。

微分の変換

次は,直交座標の運動方程式の左辺 x¨,y¨\ddot{x},\ddot{y}r,θr,\theta を用いて表現します。

2A: x¨=r¨cosθ2r˙θ˙sinθrθ¨sinθrθ˙2cosθ\ddot{x}=\ddot{r}\cos\theta-2\dot{r}\dot{\theta}\sin\theta-r\ddot{\theta}\sin\theta-r\dot{\theta}^2\cos\theta

2B: y¨=r¨sinθ+2r˙θ˙cosθ+rθ¨cosθrθ˙2sinθ\ddot{y}=\ddot{r}\sin\theta+2\dot{r}\dot{\theta}\cos\theta+r\ddot{\theta}\cos\theta-r\dot{\theta}^2\sin\theta

証明

一つ目の式のみ証明する。二つ目もほぼ同様。

x=rcosθx=r\cos\theta の両辺を tt で微分すると,

x˙=r˙cosθrθ˙sinθ\dot{x}=\dot{r}\cos\theta-r\dot{\theta}\sin\theta

ただし,r,θr,\theta はともに tt の関数であることに注意して,積の微分公式と合成関数の微分公式を用いた。

もう一度微分すると,

x¨=r¨cosθr˙θ˙sinθr˙θ˙sinθrθ¨sinθrθ˙2cosθ\ddot{x}=\ddot{r}\cos\theta-\dot{r}\dot{\theta}\sin\theta-\dot{r}\dot{\theta}\sin\theta-r\ddot{\theta}\sin\theta-r\dot{\theta}^2\cos\theta

となり,整理すると目標の式となる。

極座標の運動方程式の導出

準備は整いました。ここからバサバサ打ち消す楽しい時間です。

(極座標の運動方程式の導出)

(2A) ×cosθ+\times\cos\theta+ (2B) ×sinθ\times\sin\theta より,

x¨cosθ+y¨sinθ=r¨rθ˙2\ddot{x}\cos\theta+\ddot{y}\sin\theta=\ddot{r}-r\dot{\theta}^2

(真ん中の二つは消える!)

両辺に mm をかけて,直交座標の運動方程式を用いると,

Fxcosθ+Fysinθ=m(r¨rθ˙2)F_x\cos\theta+F_y\sin\theta=m(\ddot{r}-r\dot{\theta}^2)

これと(1A)より m(r¨rθ˙2)=Frm(\ddot{r}-r\dot{\theta}^2)=F_r

θ\theta 方向についても同様。

(2A) ×(sinθ)+\times (-\sin\theta)+ (2B) ×cosθ\times\cos\theta より,

x¨sinθ+y¨cosθ=2r˙θ˙+rθ¨-\ddot{x}\sin\theta+\ddot{y}\cos\theta=2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta}

(端の二つは消える!)

これと直交座標の運動方程式および(1B)より Fθ=m(2r˙θ˙+rθ¨)F_{\theta}=m(2\dot{r}\dot{\theta}+r\ddot{\theta})

これでもよいが,(r2θ˙r^2\dot{\theta} の時間微分は 2rr˙θ˙+r2θ¨2r\dot{r}\dot{\theta}+r^2\ddot{\theta} となることを用いて)さらに少し変形すると,

m1rddt(r2θ˙)=Fθm\dfrac{1}{r}\dfrac{d}{dt}(r^2\dot{\theta})=F_{\theta}

を得る。

極座標の運動方程式を使えば地球の公転軌道が楕円であることを証明できます!→地球の公転軌道が楕円であることの導出

最後消える部分がたまりませんね。長い(そんなに長くないけど)努力が報われます。