楕円の反射定理とその証明

楕円の反射定理

楕円の焦点から出た光は,反射してから反対側の焦点を通る。

楕円に関する有名な定理です。証明するのは意外と(計算が)大変ですが,座標計算のよい練習になります。

証明すべきこと

証明すべきことをもう少しきちんと書きます。

問題

楕円 x2a2+y2b2=1(a>b>0)\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1\:(a > b > 0) の焦点を F,FF,F' とおく。この楕円上の点 A(x0,y0)A(x_0,y_0) における接線を ll とおく。 llFAFA がなす角と,llFAF'A がなす角が等しいことを証明せよ。

楕円の反射公式

これが証明されれば,FF から AA に向かって出た光が AA で反射して FF' に向かうことが分かります(光が反射するとき,入射角と反射角は等しいので)。

証明が長いので3ステップに分けて解説します。

  1. 辺の条件にする(考え方重要)
  2. 各部分の長さを求める(計算テクニック重要)
  3. 最後の詰め(ただの作業)

ステップ1:辺の条件にする

y0=0y_0=0 のとき定理が成り立つのは自明なので,y00y_0\neq 0 として考えます。

角度の条件を座標で扱うのは難しいので,角の二等分線定理を用いて辺の条件に言い換えます。

証明

AA における法線と xx 軸との交点を BB とおく。 楕円の反射公式

FAB=FAB\angle FAB=\angle F'AB を証明すればよい。これは(角の二等分線定理より),AF:AF=BF:BFAF:AF'=BF:BF' と同値。

あとは,AFAF などの長さを求めて上式を確認すればよい!

ステップ2:各部分の長さを求める

ここからやることは一本道ですが,計算がけっこう大変です。

AFAF については後述の余談を知っていると安心できます。

BFBF については楕円の法線の方程式(→垂直な直線の方程式の求め方と応用【垂直条件】の記事末)を知っていると楽です。

証明の続き

F(a2b2,0),F(a2b2,0)F(\sqrt{a^2-b^2},0),\:F'(-\sqrt{a^2-b^2},0) に注意する。

AF,AFAF,AF'の長さ

三平方の定理より,AF2=(x0a2b2)2+y02AF^2=(x_0-\sqrt{a^2-b^2})^2+y_0^2

ここで,x02a2+y02b2=1\dfrac{x_0^2}{a^2}+\dfrac{y_0^2}{b^2}=1 を用いて y0y_0 を消去すると,

AF2=x022x0a2b2+a2b2+b2b2x02a2=(1b2a2)x022x0a2b2+a2=(x0a2b2aa)2\begin{aligned} AF^2 &= x_0^2-2x_0 \sqrt{a^2-b^2}\\ &\quad+a^2-b^2+b^2-\dfrac{b^2x_0^2}{a^2}\\ &= \left( 1-\dfrac{b^2}{a^2} \right) x_0^2\\ &\quad - 2 x_0 \sqrt{a^2-b^2}+a^2\\ &= \left( x_0\dfrac{\sqrt{a^2-b^2}}{a}-a \right)^2 \end{aligned}

x0ax_0\leq a より)

AF=ax0a2b2a AF=a-x_0\dfrac{\sqrt{a^2-b^2}}{a}

また,AF+AF=2aAF+AF'=2a より,AF=a+x0a2b2aAF'=a+x_0\dfrac{\sqrt{a^2-b^2}}{a}

BF,BFBF,BF'の長さ

楕円の AA における法線は,x0a2(yy0)y0b2(xx0)=0\dfrac{x_0}{a^2} (y-y_0) - \dfrac{y_0}{b^2} (x-x_0) = 0 である。

この式で y=0y=0 とすることで,BBxx 座標が x0x0b2a2x_0-x_0\dfrac{b^2}{a^2} と分かる。

よって,BF=a2b2x0(1b2a2)BF=\sqrt{a^2-b^2}-x_0 \left( 1-\dfrac{b^2}{a^2} \right) となる。

BF=a2b2+x0(1b2a2) BF'=\sqrt{a^2-b^2}+x_0 \left( 1-\dfrac{b^2}{a^2} \right)

余談: AFAF を求めたときの議論により 楕円上の点 AA と焦点の距離はきれいになる(AAxx 座標の一次式になる)ことが分かります。

これはけっこう重要な事実です(この事実を知っていると上記のように見通しよく計算できる)。

ステップ3:最後の詰め

普通に AF×BFAF\times BF'AF×BFAF'\times BF を計算してもOKですが,よく観察するとショートカットできます。

証明の続き

AF×a2b2a=BFAF\times \dfrac{\sqrt{a^2-b^2}}{a}=BFAF×a2b2a=BFAF'\times \dfrac{\sqrt{a^2-b^2}}{a}=BF'

が分かるので証明すべき比の式が示された。

双曲線でも同様の性質が成り立ちます!