三角関数の積の積分と直交性

更新日時 2022/10/15

三角関数の積の積分は,積和公式で和に直すことで積分できる。

目次
  • 具体例

  • 三角関数の積の定積分

  • 三角関数の直交性

具体例

三角関数の積の積分で重要なのは定積分ですが,とりあえず不定積分をやってみます。

cos3xcos4xdx\displaystyle\int\cos 3x \cos 4xdx を求める。

積和公式により

cos3xcos4xdx=12(cos7x+cosx)dx=114sin7x+12sinx+C\begin{aligned} \int\cos 3x\cos 4xdx &= \int\dfrac{1}{2} (\cos 7x+\cos x) dx\\ &= \dfrac{1}{14}\sin 7x+\dfrac{1}{2}\sin x+C \end{aligned} と計算される。

三角関数の積和公式については,三角関数の基本公式一覧の最後の部分を参考にしてください。丸覚えしてもよいですが,その場でもすぐに導出できるようになっておきましょう。

ちなみに三角関数の3つ以上の積も繰り返し積和公式を使えば最終的に三角関数の和に直せるので積分できます。(計算が複雑なので問題として見たことはありませんが)

三角関数の積の定積分

三角関数の積の積分の中でも,区間幅 2π2\pi の定積分が非常に重要です。

mmnn が異なる自然数のとき,

  • 02πsinmxcosnxdx=0\displaystyle\int_0^{2\pi} \sin mx\cos nxdx=0
  • 02πsinmxcosmxdx=0\displaystyle\int_0^{2\pi} \sin mx\cos mxdx=0
  • 02πsinmxsinnxdx=0\displaystyle\int_0^{2\pi} \sin mx\sin nxdx=0
  • 02πcosmxcosnxdx=0\displaystyle\int_0^{2\pi} \cos mx\cos nxdx=0

積分区間が 00 から 2π2\pi となっていますが,π-\pi から π\pi などとしても同じ公式が成り立ちます。(積分区間幅が 2π2\pi ならなんでもよい。)

44 つ別々に公式として覚えるのではなくて 「異なる三角関数の積を一周期にわたって積分すると 00 になる」と覚えるとよいでしょう。

02πsin3xcos2xdx\displaystyle\int_0^{2\pi}\sin 3x \cos 2xdx

積和公式により

02πsin3xcos2xdx=02π12(sin5x+sinx)dx=0\begin{aligned} \int_0^{2\pi}\sin 3x\cos 2xdx &= \int_0^{2\pi} \dfrac{1}{2} (\sin 5x+\sin x)dx\\ &=0 \end{aligned}

(三角関数の一周期にわたる積分は 00

三角関数の直交性

上記の公式は「異なる三角関数は直交している」ことを表しています。

関数 f,gf,g に対して (f,g)=02πf(x)g(x)dx (f,g) = \int_0^{2\pi} f(x) g(x) dx と定義しましょう。

実はこの「積」はベクトルの内積同じような性質を持ちます

例えば (f1+f2,g)=(f1,g)+(f2,g)(f_1 + f_2 , g) = (f_1,g) + (f_2,g) と計算できます。

これを踏まえると 02πsinnxcosmxdx=0 \int_0^{2\pi} \sin nx \cos mx dx = 0 という式を見ると,sinnx\sin nxcosmx\cos mx直交しているように思えるでしょう。

さて,任意のベクトルは直交する2ベクトル (1,0),(0,1)(1,0),(0,1) の和の形で表されます。

これのアナロジーから,関数の集合は {sinx,sin2x,,cosx,cos2x,}\{ \sin x,\sin 2x,\cdots, \cos x,\cos 2x,\cdots \} の和によって表されると予想されます。

こうして関数は成分の数が無限個あるベクトルとみなすことができるのです!

この事実は大学で学ぶフーリエ級数展開の基礎となっています。詳しくは フーリエ級数展開の公式と意味 を読んでみてください。

実は関数はベクトルの一種です!

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