フーリエ級数展開の公式と意味

フーリエ級数展開

f(x)f(x) が周期 TT の「まともな」関数なら

f(x)=a02+n=1(ancos2πnxT+bnsin2πnxT)f(x)=\dfrac{a_0}{2}+\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\left(a_n\cos \dfrac{2\pi n x}{T}+b_n\sin \dfrac{2\pi nx}{T}\right)

ただし,

an=2T0Tf(x)cos2πnxTdxa_n=\dfrac{2}{T}\displaystyle\int_0^{T}f(x)\cos\dfrac{2\pi nx}{T}dx

bn=2T0Tf(x)sin2πnxTdxb_n=\dfrac{2}{T}\displaystyle\int_0^{T}f(x)\sin\dfrac{2\pi nx}{T}dx

フーリエ展開の意味,係数の導出,応用例として π26\dfrac{\pi^2}{6} に収束する有名な級数の話を解説します。

フーリエ級数展開とは

〜やりたいこと〜

与えられた周期 TT の関数を,周期 TT (の約数もOK)の三角関数(サインとコサイン)の和で表現したいという話です。

〜なぜ 2πnxT\dfrac{2\pi nx}{T} が登場するのか〜

g(x)=sin2πnxTg(x)=\sin \dfrac{2\pi nx}{T} の周期は Tn\dfrac{T}{n} であり,g(x+T)=g(x)g(x+T)=g(x) を満たします。 h(x)=cos2πnxTh(x)=\cos \frac{2\pi nx}{T} も同様です。そこで,これらの「TT ズラしてもとに戻る単純な関数の無限和」で「TT ズラしてもとに戻る関数 f(x)f(x)」を表現します。

特に,f(x)f(x) の周期が 2π2\pi の場合,使う三角関数は sinnx,cosnx\sin nx,\cos nx とシンプルな形になります。

フーリエ級数展開の条件

冒頭では「まともな」関数と述べてぼかしました。まともでない関数だとフーリエ級数展開できませんが,応用上登場する関数はだいたいフーリエ級数展開できるのであまり気にしなくてOKです。

例えば f(x)f(x) が連続かつ導関数も連続なら問題なしです。f(x)f(x)f(x)f'(x) に不連続点がちょいちょいあっても問題なし(不連続点以外で各点収束)です。

フーリエ級数展開できるための詳しい条件については専門書を参照して下さい。

フーリエ係数の導出

フーリエ係数 an,bna_n,\:b_n の形がなぜ冒頭の式で表されるのか説明します。三角関数の積分にある程度慣れている必要があります。

係数の導出

a0a_0 について〜

f(x)=a02+n=1(ancos2πnxT+bnsin2πnxT)f(x)=\dfrac{a_0}{2}+\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\left(a_n\cos \dfrac{2\pi n x}{T}+b_n\sin \dfrac{2\pi nx}{T}\right)

の両辺を 00 から TT まで積分すると(右辺の周期関数の積分が全て 00 になるので),0Tf(x)dx=a02T\displaystyle\int_0^{T}f(x)dx=\dfrac{a_0}{2}T

つまり,a0=2T0Tf(x)dxa_0=\dfrac{2}{T}\displaystyle\int_0^Tf(x)dx

ana_nn1n\geq 1)について〜

f(x)=a02+n=1(ancos2πnxT+bnsin2πnxT)f(x)=\dfrac{a_0}{2}+\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\left(a_n\cos \dfrac{2\pi n x}{T}+b_n\sin \dfrac{2\pi nx}{T}\right)

の両辺に cos2πnxT\cos\dfrac{2\pi nx}{T} をかけて 00 から TT まで積分すると,0Tf(x)cos2πnxTdx=an2T\displaystyle\int_0^Tf(x)\cos\dfrac{2\pi nx}{T}dx=\dfrac{a_n}{2}T (→注1)

より an=2T0Tf(x)cos2πnxTdxa_n=\dfrac{2}{T}\displaystyle\int_0^{T}f(x)\cos\dfrac{2\pi nx}{T}dx

bnb_n について〜

同じように両辺に sin2πnxT\sin\dfrac{2\pi nx}{T} をかけて 00 から TT まで積分するとOK。

注1:三角関数の直交性という積分公式を用いています。→三角関数の積の積分と直交性

この公式により右辺の各項の積分はほとんど 00 になり,0Tancos22πnxTdx=an2T\displaystyle\int_0^Ta_n\cos^2\dfrac{2\pi nx}{T}dx=\dfrac{a_n}{2}T だけが生き残ります。

注2:なお,積分と無限和の順序交換が可能であることを仮定しています。この部分が厳密ではありませんが,フーリエ係数の形の意味を見るには十分でしょう。

具体例

例題

y=x2(πxπ)y=x^2\:(-\pi\leq x \leq \pi) を周期 2π2\pi の関数になるように拡張した関数 f(x)f(x) のフーリエ級数展開を求めよ。

フーリエ展開の例

解答

フーリエ係数を求める。周期性に注意すると 00 から 2π2\pi までの積分値は π-\pi から π\pi までの積分値と等しいことが分かる。

a0=22πππx2dx=23π2a_0=\dfrac{2}{2\pi}\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}x^2dx=\dfrac{2}{3}\pi^2

an=22πππx2cosnxdxa_n=\dfrac{2}{2\pi}\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}x^2\cos nxdx瞬間部分積分を用いて計算すると an=(1)n4n2a_n=(-1)^n\dfrac{4}{n^2}

bn=22πππx2sinnxdxb_n=\dfrac{2}{2\pi}\displaystyle\int_{-\pi}^{\pi}x^2\sin nxdx であり,被積分関数は奇関数なので bn=0b_n=0

つまり, f(x)=π23+n=1(1)n4n2cosnxf(x)=\dfrac{\pi^2}{3}+\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^n\dfrac{4}{n^2}\cos nx

ちなみにこの式に x=πx=\pi を代入すると π2=π23+4n=11n2\pi^2=\dfrac{\pi^2}{3}+4\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{1}{n^2}

となり,有名な級数 n=11n2=π26\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{1}{n^2}=\dfrac{\pi^2}{6} を得ます。→バーゼル問題の初等的な証明

複素フーリエ級数展開

フーリエ級数展開は,オイラーの公式 eix=cosx+isinx e^{i x} = \cos x + i \sin x を用いることで,複素数を用いて記述することもできます。指数関数の微積分が簡単であったことを思い出すと,複素数型のほうが簡単に計算できそうです。また,フーリエ変換は複素数型フーリエ級数展開をもとに展開されます。

詳しくは 複素数型のフーリエ級数展開とその導出 をご覧ください。

フーリエ展開を使えば他にもいろいろな級数が導出できます!