積分と極限(無限和)の交換

更新日時 2022/05/26
積分と極限の交換

ablimnfn(x)dx=limnabfn(x)dx\displaystyle\int_a^b\lim_{n\to\infty}f_n(x)dx=\lim_{n\to\infty}\int_a^b f_n(x)dx

という式について,

  1. fn(x)f_n(x) が一様収束するなら成立する(十分条件)
  2. ただし,一般には成立しない
  3. 一様収束しなくても成立することがある(単調収束・一様有界など他の十分条件がある)

1~3の順で説明します。また,2と3の間で積分と無限和(シグマ)の交換についても説明します。

目次
    1. 一様収束するなら積分と極限が交換できる
    1. 積分と極限が交換できない例
  • 積分と無限和(シグマ)の交換

    1. 一様収束しなくても交換できる場合

1. 一様収束するなら積分と極限が交換できる

  • 関数の列 fn(x)f_n(x) が,ある関数 f(x)f(x)axba\leq x\leq b一様収束するなら,
    abf(x)dx=limnabfn(x)dx\displaystyle\int_a^b f(x)dx=\lim_{n\to\infty}\int_a^b f_n(x)dx
    が成立します。左辺は極限の積分,右辺は積分の極限です。つまり,極限と積分の順番を交換できます。
  • ただし,一様収束とは,関数の列 fn(x)f_n(x)xx によらず一気に関数 f(x)f(x) に近づくというイメージです。詳しくは各点収束と一様収束の違いと具体例をどうぞ。
  • 積分と極限が交換できることの証明は,「一様収束の定義を εδ\varepsilon-\delta 論法で書ければ」簡単です。
証明

limnfn(x)=f(x)\displaystyle\lim_{n\to\infty}f_n(x)=f(x)(一様収束)

の意味は,任意の ε>0\varepsilon>0 に対して,ある NN が存在して nNn\geq N なら任意の xx に対して fn(x)f(x)ε|f_n(x)-f(x)|\leq\varepsilon

よって,任意の ε>0\varepsilon>0 に対して,ある NN が存在して nNn\geq N なら

abfn(x)dxabf(x)dx=ab{fn(x)f(x)}dxabfn(x)f(x)dxabεdx=(ba)ε\left|\displaystyle\int_a^bf_n(x)dx-\int_a^bf(x)dx\right|\\ =\left|\displaystyle\int_a^b\{f_n(x)-f(x)\}dx\right|\\ \leq\displaystyle\int_a^b |f_n(x)-f(x)|dx\\ \leq\displaystyle\int_a^b\varepsilon dx=(b-a)\varepsilon

これは,limnabfn(x)dx=abf(x)dx\displaystyle\lim_{n\to\infty}\int_a^bf_n(x)dx=\int_a^bf(x)dx であることを表している。

2. 積分と極限が交換できない例

次は,積分と極限が交換できない例です。

fn(x)f_n(x) として,図のような赤い折れ線で表される関数を考えましょう。 pic01

  • とがった三角形の面積は常に1なので 01fn(x)dx=1\displaystyle\int_0^1 f_n(x)dx=1
  • 一方,任意の xx に対して limnfn(x)=0\displaystyle\lim_{n\to\infty}f_n(x)=0(各点収束)なので 01limnfn(x)=0\displaystyle\int_0^1\lim_{n\to\infty}f_n(x)=0

よって,01limnfn(x)dxlimn01fn(x)dx\displaystyle\int_0^1\lim_{n\to\infty}f_n(x)dx\neq \lim_{n\to\infty}\int_0^1 f_n(x)dx

実際,fn(x)f_n(x)f(x)f(x) に各点収束しますが一様収束しません。

積分と無限和(シグマ)の交換

「積分と無限和の交換」を別途考える必要はなく,ここまで述べた「積分と極限の交換」だけを考えれば十分です。

なぜなら,別の関数列 g1(x),g2(x),...g_1(x),g_2(x),... が与えられたとき,「積分と極限の交換」において,fn(x)=g1(x)+g2(x)++gn(x)f_n(x)=g_1(x)+g_2(x)+\cdots +g_n(x) とおくと以下の「積分とシグマの交換」が得られるからです。

積分と無限和(シグマ)の交換

abn=1gn(x)dx=n=1abgn(x)dx\displaystyle\int_a^b\sum_{n=1}^{\infty}g_n(x)dx=\sum_{n=1}^{\infty}\int_a^b g_n(x)dx

という式について,

  1. gn(x)\sum g_n(x) が一様収束するなら成立する(十分条件)
  2. ただし,一般には成立しない
  3. 一様収束しなくても成立することがある
  • 右辺は積分したものを足し上げており項別積分と呼ばれることがあります。

  • このように,積分と無限和の交換には注意が必要です。(有限和ならいつでも交換できます: abn=1Ngn(x)dx=n=1Nabgn(x)dx\displaystyle\int_a^b\sum_{n=1}^{N}g_n(x)dx=\sum_{n=1}^{N}\int_a^b g_n(x)dx→高校数学における線形性の8つの例

積分と無限和の交換が活躍する例

  • 0a<10\leq a<1 とする。無限等比級数の公式: 11+x2=1x2+x4x6+\dfrac{1}{1+x^2}=1-x^2+x^4-x^6+\cdots
    の両辺を 00 から aa まで積分してよいか?
    つまり,無限和の積分 0a11+x2dx\displaystyle\int_0^a\dfrac{1}{1+x^2}dx と積分の無限和 n=10a(x2)n1dx\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\int_0^a(-x^2)^{n-1}dx は等しいか?

  • もし等しいなら,Arctana=aa33+a55a77+\mathrm{Arctan}\:a =a-\dfrac{a^3}{3}+\dfrac{a^5}{5}-\dfrac{a^7}{7}+\cdots というおもしろい等式が得られる。

  • 実は,上記の変形は厳密に正当化できる。なぜなら,以下のように無限和が一様収束することが確認できるからである: 11+x2{1x2+x4++(1)n1x2n2}=11+x21(x2)n1+x2=x2n1+x2a2n0\left|\dfrac{1}{1+x^2}-\{1-x^2+x^4+\cdots +(-1)^{n-1}x^{2n-2}\}\right|\\ =\left|\dfrac{1}{1+x^2}-\dfrac{1-(-x^2)^n}{1+x^2}\right|\\ =\dfrac{x^{2n}}{1+x^2}\\ \leq a^{2n}\to 0
    xx に依存しない)

この例は,Arctanのマクローリン展開の3通りの方法で紹介した式です。

3. 一様収束しなくても交換できる場合

積分と極限が交換できるための十分条件として(1)一様収束だけでなく(2)単調収束(3)一様有界(4)強い関数が存在するなどいろいろあります。

積分と極限が交換できるための十分条件

a,ba,baba\leq b なる実数とする。任意の x[a,b]x\in[a,b]fn(x)f_n(x)f(x)f(x) に各点収束するものとする。

このとき,後述の1~4のいずれかが成立すれば,積分と極限を交換できる:

abf(x)dx=limnabfn(x)dx\displaystyle\int_a^bf(x)dx=\lim_{n\to\infty}\int_a^b f_n(x)dx

(1) fn(x)f_n(x)f(x)f(x) に一様収束する
(2) 0f1(x)f2(x)f3(x)0\leq f_1(x)\leq f_2(x)\leq f_3(x)\leq\cdots
(3) 任意の nNn\in\mathbb{N}x[a,b]x\in[a,b] に対して fn(x)<M|f_n(x)|<M なる実数 MM が存在する
(4) 任意の nNn\in\mathbb{N}x[a,b]x\in[a,b] に対して fn(x)<g(x)|f_n(x)|<g(x) かつ abg(x)dx<\displaystyle\int_a^bg(x)dx<\infty なる関数 g(x)g(x) が存在する

(1)については説明しました。詳しくは,(2)は単調収束定理,(3)はアルツェラの定理,(4)はルベーグの優収束定理で調べてみてください。(4)は(3)よりも強いです。

「一様収束なら極限と積分を交換できる」と言うと仰々しいですが,証明はとても簡単です。