シュワルツの不等式の積分形
で定義された任意の連続関数 に対して, 等号成立条件は となる が存在する(または である)こと。
シュワルツの不等式の積分バージョンを紹介します。
数列版との関係
数列版との関係
高校数学でよく登場するシュワルツの不等式(数列バージョン)は以下のようなものでした。
この式と「シュワルツの不等式の積分バージョン」はなんとなく似ていますね。
実は「数列バージョン」と「積分バージョン」は,いずれも,後述する シュワルツの不等式(一般形)の特殊ケースとみなせます。
シュワルツの不等式(一般形)
シュワルツの不等式(一般形)
任意の2つのベクトル に対して,
が成立します。これを,シュワルツの不等式(一般形)と呼ぶことにします。
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, とすると,数列バージョン: が得られます。
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より一般に,, とすると, が得られます。
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実は,実数値関数 もベクトルと考えることができます。そして「かけ算して積分したもの」を内積と考えることができます。すると,シュワルツの不等式の積分バージョンが得られます。
※少し難しいですが,シュワルツの不等式(一般形)の主張における「任意の2つのベクトル」をより厳密に言うと,「任意の内積空間 と, に属する2つのベクトル」です。
シュワルツの不等式(積分バージョン)について
シュワルツの不等式(積分バージョン)について
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証明は?
積分バージョンの証明も,数列バージョンと同様にできます。つまり, に関する二次方程式 の判別式が 以下になることから導出できます。 -
等号成立条件は?
となる が存在する(または ),です。「等号成立条件は,片方がもう片方の定数倍」と言うこともできます。数列バージョンと似ていますね。 -
大学入試で使う?
「知らないと困る」ことは無いですが,知っていると若干有利になる場合があります。愛知県立大学2014年理系第3問で「積分バージョンのシュワルツの不等式を証明して,その結果を応用する」問題が出題されました。具体的には, を満たす連続関数 の中で, を最大にするものを求める問題です。シュワルツの不等式に関する知識が無くても誘導に従えば解ける問題ですが,知識があった方が落ち着いて対応できます。
→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT131では,積分バージョンに関する例題と2通りの解答を紹介しています。
大学で抽象的な数学を理解すれば,「関数もベクトルの一種」であることがわかります。