反復試行の確率の公式といろいろな例題

反復試行の確率

確率 pp で成功するような試行を独立に nn 回反復して行ったとき,nn 回のうち kk 回成功する確率は,

nCkpk(1p)nk{}_n\mathrm{C}_kp^k(1-p)^{n-k}

反復試行の確率の公式の証明,簡単な例題,最大点を求める応用問題を解説。

反復試行の確率とは

反復試行とは「同じことを繰り返す」ことです。同じことを独立に nn 回繰り返したときに kk 回成功する確率は,

nCkpk(1p)nk{}_n\mathrm{C}_kp^k(1-p)^{n-k}

となります。この公式の証明は後でやります。まずは例題を解いてみましょう。

例題1

1個のサイコロを4回ふるとき,1の目がちょうど2回出る確率を求めよ。

解答

反復試行の確率の公式で n=4,k=2,p=16n=4,k=2,p=\dfrac{1}{6} の場合なので,求める確率は

4C2(16)2(56)2{}_4\mathrm{C}_2\left(\dfrac{1}{6}\right)^2\left(\dfrac{5}{6}\right)^2

である。ここで,4C2=6{}_4\mathrm{C}_2=6 を使って計算すると,

6×136×2536=252166\times\dfrac{1}{36}\times\dfrac{25}{36}=\dfrac{25}{216}

※二項係数 nCk{}_n\mathrm{C}_k の意味と計算方法は順列と組合せの違いと例題を参照してください。

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT107では,類題と2通りの解答を紹介しています。

反復試行の確率の公式の証明

反復試行の確率の公式 nCkpk(1p)nk{}_n\mathrm{C}_kp^k(1-p)^{n-k} を証明します。

証明

nn 回の試行のうち kk 回成功するような「成功と失敗の順番」の場合の数は nCk{}_n\mathrm{C}_k 通りである。

例えば,n=4,k=2n=4,k=2 の場合の様子を図に示す。4つの中から「成功」の場所を2箇所選ぶ場合の数なので 4C2=6{}_4\mathrm{C}_2=6 通りである。

反復試行の確率の公式

そして,順番を固定したときにそのような事象が起こる確率は,pk(1p)nkp^k(1-p)^{n-k}

よって,求める確率は nCkpk(1p)nk{}_n\mathrm{C}_kp^k(1-p)^{n-k}

練習問題

反復試行の確率を求める練習問題を2問解いてみましょう。

例題2

表裏が出る確率が等しいコインを10回投げるとき,表が9回以上出る確率を求めよ。

解答

反復試行の確率の公式より,

  • 表が9回出る確率は 10C9(12)9(12)1=101024{}_{10}\mathrm{C}_9\left(\dfrac{1}{2}\right)^9\left(\dfrac{1}{2}\right)^1=\dfrac{10}{1024}
  • 表が10回出る確率は 10C10(12)10=11024{}_{10}\mathrm{C}_{10}\left(\dfrac{1}{2}\right)^{10}=\dfrac{1}{1024}

よって,求める確率は 101024+11024=111024\dfrac{10}{1024}+\dfrac{1}{1024}=\dfrac{11}{1024}

次は,数直線に関する問題です。反復試行の確率の公式を使う応用問題です。

例題3

数直線上で最初原点にいた動点 PP が1秒ごとに「確率0.4で+1,確率0.6で−1」動く。6秒後に原点にいる確率を求めよ。

解答

6秒後に原点にいるためには+1,−1の移動がそれぞれ3回ずつ起こる必要がある。

よって,求める確率は,6C3(0.4)3(0.6)3=0.27648{}_{6}C_3(0.4)^3(0.6)^3=0.27648

最大値を求める問題

最後に反復試行の確率に関する有名な応用問題です!やや難問。

例題4

確率 pp で成功する試行を独立に nn 回行う。このとき kk 回成功する確率を P(k)P(k) とおく。 P(k)P(k) が最大となる kk を求めよ。

解答

反復試行の確率の公式より(0kn0\leq k\leq n)において P(k)=nCkpk(1p)nk=n!k!(nk)!pk(1p)nkP(k)={}_n\mathrm{C}_kp^k(1-p)^{n-k}=\dfrac{n!}{k!(n-k)!}p^k(1-p)^{n-k}

ここで, P(k)P(k)P(k+1)P(k+1) の大小関係を調べるために P(k+1)P(k)\dfrac{P(k+1)}{P(k)} を計算する:

P(k+1)P(k)=k!(nk)!(k+1)!(nk1)!pk+1(1p)nk1pk(1p)nk=nkk+1p1p\dfrac{P(k+1)}{P(k)}=\dfrac{k!(n-k)!}{(k+1)!(n-k-1)!}\dfrac{p^{k+1}(1-p)^{n-k-1}}{p^k(1-p)^{n-k}}\\ =\dfrac{n-k}{k+1}\dfrac{p}{1-p}

よって,P(k+1)P(k)P(k+1)\geq P(k)

    P(k+1)P(k)1\iff\dfrac{P(k+1)}{P(k)} \geq 1

    (nk)p(k+1)(1p)\iff (n-k)p\geq (k+1)(1-p)

    k(n+1)p1\iff k\leq (n+1)p-1

したがって,P(k)P(k)kk が小さいところでは単調増加,大きいところでは単調減少となり,その切り替わりの点で最大となる。

  • (n+1)p(n+1)p が整数のとき
    k=(n+1)p1k=(n+1)p-1 のとき上の不等式で等号が成立する,つまり P(k)=P(k+1)P(k)=P(k+1) となる。よって,求める kk(n+1)p1(n+1)p-1(n+1)p(n+1)p

  • (n+1)p(n+1)p が整数でないとき
    P(k)>P(k+1)P(k) > P(k+1) となる最小の kk を求めればよい。つまり,上の不等式を満たさない最小の kk を求めればよいので,求める kk(n+1)p(n+1)p の整数部分

例題4のテクニックは隣どうしの比と1を比較する(展開式の係数の最大・確率の最大値)でより詳しく説明しています。

なお,さらに発展的な話題として二項分布の平均と分散の二通りの証明もどうぞ。

実は市販のサイコロは全ての出る目の確率が 16\dfrac{1}{6} ではありません。トリビアの泉でやっていました。

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