隣どうしの比と1を比較する(展開式の係数の最大・確率の最大値)
-
の中で最大のものを求める問題では, と を比較するとよい。
-
を展開したときの の係数を とおく。 を最大にするのは(多くの場合) のとき。
-
反復試行の確率の最大値(二項分布の最頻値)も2からわかる。
-
を最大にする は
1~4まで,順々に解説していきます。
隣どうしの比と1を比較する手法
隣どうしの比と1を比較する手法
が正なら です。これを利用して と の大小関係を比較することで が最大となる を計算できる場合があります。
例を見てみましょう。
を展開したときの の係数を とおく。 を最大にする を求めよ。
二項定理より
よって, したがって,
これより まで増加してそこから減少することがわかる: よって答えは
この手法は, が多くの数の積で表されているときに有効です。確率の最大値を計算する問題でも頻出です。
展開した係数の最大値
展開した係数の最大値
さきほどの例題1を一般化してみます。
を展開したときの の係数を とおく。 を最大にする を求めよ。ただし, とする。
場合分けが発生しますが,例題1と全く同じ方針で解けます。
二項定理より
よって,
したがって,
とおく。
- のとき,常に より で最大
- かつ が整数でないとき で最大
- かつ が整数のとき と で最大
※ただし は を切り上げた整数を表す。
特に, がある程度大きく なら となります。多くの場合 くらいで最大 と覚えておけばよいです。例題1の検算にも使えます。
以下では,この結果のおもしろい応用を2つ紹介します。
反復試行の確率の最大値(二項分布の最頻値)
反復試行の確率の最大値(二項分布の最頻値)
確率 で成功するような試行を独立に 回反復して行ったとき, 回のうち 回成功する確率は, でした。→反復試行の確率の公式といろいろな例題
と を固定したもとで, を最大にする を求めてみましょう。
を展開したときの の係数が である。よって, として例題2の結果を使うとよい。
であり,多くの場合 で最大となる。厳密には例題2と同様に場合分け。
特に が整数なら,二項分布の最頻値は期待値 と一致するというわけです。→二項分布の平均と分散の二通りの証明
入試問題への応用
入試問題への応用
を なる正の整数とし,
とする。 の中で最大のものは
を展開したときの の係数が である。よって, として例題2の結果を使うとよい。
となる。場合分けの2つめに該当し, で最大となる。
なお,定理1は 二項係数の上界・下界を与える4つの不等式 の最後で活躍します。「定理1の証明から上記の記事での活躍の流れ」すべてが2023年京大理学部特色入試で出題されています。
と を比較をしても解けますが, と を比較した方が計算が楽です。