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一般化二項定理とルートなどの近似

更新日時 2021/03/07
一般化二項定理

x<1|x|<1 なる複素数 xx と,任意の複素数 α\alpha に対して

(1+x)α=1+αx+α(α1)2!x2+(1+x)^{\alpha}=1+\alpha x+\dfrac{\alpha(\alpha-1)}{2!}x^2+\cdots

が成立する。

この記事では,一般化二項定理について xxα\alpha が実数の場合を詳しく解説します。

目次
  • 二項定理との関係

  • ルートなどの近似式

  • テイラー展開による証明

二項定理との関係

一般化二項定理

(1+x)α=1+αx+α(α1)2!x2+(1+x)^{\alpha}=1+\alpha x+\dfrac{\alpha(\alpha-1)}{2!}x^2+\cdots

を無限級数の形できちんと書くと,

(1+x)α=k=0F(α,k)xk(1+x)^{\alpha}=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}F(\alpha,k)x^k

となります。ただし,

F(α,0)=1F(α,k)=α(α1)(αk+1)k!(k1)F(\alpha,0)=1\\ F(\alpha,k)=\dfrac{\alpha(\alpha-1)\cdots (\alpha-k+1)}{k!}\:(k\geq 1)

は二項係数の一般化です。

α\alpha が正の整数の場合〜

kkα\alpha 以下の非負整数のとき,F(α,k)F(\alpha,k) は二項係数 αCk{}_{\alpha}\mathrm{C}_k と一致します。

また,kkα\alpha より大きい場合,F(α,k)=0F(\alpha,k)=0 となります(αα\alpha-\alpha という項が分子に登場する)。

以上より,上の無限級数は以下の有限和になります:

(1+x)α=k=0ααCkxk(1+x)^{\alpha}=\displaystyle\sum_{k=0}^{\alpha}{}_{\alpha}\mathrm{C}_kx^k

これはいつもの二項定理です! すなわち,一般化二項定理は指数が正の整数でない場合にも拡張した二項定理とみなせます。証明は後半で。

ルートなどの近似式

一般化二項定理を使うことでルートなどを近似できます:

ルートの近似公式(一次近似)

xx が十分 00 に近いとき 1+x\sqrt{1+x}1+x21+\dfrac{x}{2} で近似できる。

高校物理でもよく使う近似式です。背後には一般化二項定理(テイラー展開)があったのです!

例1

1.01\sqrt{1.01} を近似せよ

解答

1.01=(1+0.01)12\sqrt{1.01}=(1+0.01)^{\frac{1}{2}}

なので,α=12\alpha=\dfrac{1}{2} の場合の一般化二項定理が使える:

1.01=1+0.012+0.5(0.51)2!0.012+\sqrt{1.01}=1+\dfrac{0.01}{2}+\dfrac{0.5(0.5-1)}{2!}0.01^2+\cdots

右辺第三項以降は 0.010.01 の高次の項であり無視すると,

1.011+0.012=1.005\sqrt{1.01}\fallingdotseq 1+\dfrac{0.01}{2}=1.005

となる(実際は 1.01=1.004987\sqrt{1.01}=1.004987\cdots)。

同様に,三乗根などにも使えます。

例2

27.543\sqrt[3]{27.54} を近似せよ

解答

(27+0.54)13=3(1+0.02)133(1+0.023)=3.02(27+0.54)^{\frac{1}{3}}\\ =3(1+0.02)^{\frac{1}{3}}\\ \fallingdotseq 3\left(1+\dfrac{0.02}{3}\right)\\ =3.02

一般化二項定理を α=13\alpha=\dfrac{1}{3} として使いました。なお,近似精度が悪い場合は x2x^2 の項まで残すことで精度が上がります(二次近似)。

一般化二項定理の応用例として,楕円の周の長さの求め方と近似公式もどうぞ。

テイラー展開による証明

一般化二項定理の証明にはマクローリン展開x=0x=0 でのテイラー展開)を用います。

α\alpha が非負整数の場合にはただの二項定理です。それ以外の場合(有限和で打ち切られない場合)も考えます。x>0x>0 の場合の証明の概略です。

証明の概略

f(x)=(1+x)αf(x)=(1+x)^{\alpha} のマクローリン展開を求める。

そのために f(x)f(x)kk 階微分を求める:

f(k)(x)=α(α1)(αk+1)(1+x)αkf^{(k)}(x)=\alpha(\alpha-1)\cdots (\alpha-k+1)(1+x)^{\alpha-k}

これに x=0x=0 を代入すると,F(α,k)k!F(\alpha,k)k! となる。

よって f(x)f(x) のマクローリン展開は,

k=0F(α,k)k!k!xk=k=0F(α,k)xk\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\dfrac{F(\alpha,k)k!}{k!}x^k=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}F(\alpha,k)x^k

となる。この級数が収束してもとの関数値と等しいこと: f(x)=k=0F(α,k)xkf(x)=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}F(\alpha,k)x^k を証明するために,剰余項を評価する。→テイラーの定理の例と証明

剰余項は,

Rn=f(n)(c)xnn!=α(α1)(αn+1)(1+x)αnxnn!R_n=f^{(n)}(c)\dfrac{x^n}{n!}\\ =\alpha(\alpha-1)\cdots (\alpha-n+1)(1+x)^{\alpha-n}\dfrac{x^n}{n!}

ただし,0<c<x<10<c<x<1 である。

よって,nn が十分大きいとき, Rn<α(α1)(αn+1)n!xn|R_n|<\dfrac{|\alpha(\alpha-1)\cdots (\alpha-n+1)|}{n!}x^n

となるが,右辺の分数の部分は上から nn のべき関数 (α+n)α(|\alpha|+n)^{|\alpha|} くらいでおさえられる(例えば α=100\alpha=-100 とかで実験してみるとわかる)。よって,指数関数 xnx^n の方が強く limnRn=0\displaystyle\lim_{n\to\infty}R_n=0 となる。

高校物理で登場する近似式をきちんと説明できるので楽しいです。

Tag:マクローリン展開の応用例まとめ

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