二項分布の正規近似(ラプラスの定理)
二項分布 は が十分大きいとき,平均 ,分散 の正規分布に近づく。
ド・モアブル-ラプラスの定理の嬉しさ,中心極限定理との関係など。
ド・モアブル-ラプラスの定理
ド・モアブル-ラプラスの定理
を確率 で , で を取る確率変数とします( たちは互いに独立とする)。このとき, は二項分布 に従います。→二項分布の平均と分散の二通りの証明
このように,二項分布は反復試行の成功回数を表現する重要な分布ですが, が大きいと扱いにくいので,(正規分布表なども用意されていて)扱いやすい正規分布で近似してやろうという話です。
標準化バージョン
標準化バージョン
応用例
応用例
以上をふまえて,二項分布の正規近似の嬉しさを実感できる例題を解説します。
公平なコインを10000回投げるとき,表が5100回以上出る確率を求めよ。
二項分布から直接計算するのは厳しい。試行回数が多いので正規分布で近似できる。表が出た回数 は二項分布 に従う。
よって, は近似的に標準正規分布に従う。
求める確率は, であり,これは標準正規分布表より,約 %と分かる。2シグマ区間の半分です。
注:二項分布の正規近似は仮説検定にも使うことができます。→統計学的仮説検定の考え方と手順
中心極限定理との関係
中心極限定理との関係
二項分布の正規近似は中心極限定理の特殊ケースになっています。中心極限定理を認めれば,ド・モアブル–ラプラスの定理はすぐに証明できます。
(中心極限定理については→大数の法則と中心極限定理の意味と関係)
の平均は ,分散は である。
よって,中心極限定理により, が十分大きいとき の従う分布は平均 ,分散 の正規分布に近づく。
これは, が近似的に標準正規分布に従うことを表している。
注:中心極限定理の証明は難しいですが,その特殊ケースであるド・モアブル–ラプラスの定理については,スターリングの公式を用いた式変形で証明できます(それでもけっこう大変ですが)。de Moivre–Laplace theorem(英語版Wikipedia)
最近統計の記事が多いことに関して,賛否両論ありますが,需要がある&書いていて楽しいのでこれからも続けていきます。
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