ユニタリ行列の定義と性質の証明 の性質を示します。
直交行列は U⊤U=I を満たすのでした。
ユニタリ行列(U∗U=I を満たす行列)を直交行列の複素数版と考えてみると同様な性質があります。
定理
次の条件は同値である。
- U はユニタリ行列である。
- U の行ベクトルは正規直交基底である。
- U の列ベクトルは正規直交基底である。
- ∥Ux∥=∥x∥
- (Ux)⋅(Uy)=x⋅y
定義が同値であることを確認しましょう。
2番と3番はほとんど同じ条件であるため,1・3・4・5の同値性を確かめます。
1⇒4
証明
Cn のベクトルの内積 x⋅y=x⊤y で表される。
よって
∥Ux∥2=(Ux)⋅(Ux)=(Ux)⊤Ux=x⊤U⊤Ux=x⊤x=∥x∥2
となる。
4⇒5
証明
内積について,中線定理
⟨x,y⟩=41(∥x+y∥2−∥x−y∥2+i∥x+iy∥−i∥x−iy∥)
が成立する。→ ノルム空間
ここで
∥Ux+Uy∥=∥U(x+y)∥=∥x+y∥
であるため,
(Ux)⋅(Uy)=x⋅y
となる。
5⇒2
証明
U の n 本のベクトルを {vi}i=1,⋯,n とおく。
Cn の単位ベクトルを {ei}i=1,⋯,n とする。(ei は i 成分のみが 1 でその他の成分が 0 である列ベクトル)
このとき
vi=Uei
が成り立つ。
よって
vi⋅vj=(Uei)⋅(Uej)=ei⋅ej={10(i=j)(i=j)
となり,正規直交基底であることが分かる。
2⇒1
証明
U の n 本のベクトルを {vi}i=1,⋯,n とおく。このとき U=(v1⋯vn) である。
計算すると,
(U⊤U)ij=vi⋅vj
である。
vi⊤vj=vi⋅vj であり,{vi} は正規直交基底であることから
(U⊤U)ij={10(i=j)(i=j)
が従う。こうして U⊤U=I となる。