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転置行列の基本的な4つの性質と証明

更新日時 2021/03/07

ijij 成分が aija_{ij} であるような行列を AA とする。このとき, ajia_{ji}ijij 成分とするような行列を AA の転置行列と言い,AA^{\top} などと表す。

いろいろなところで登場する「行列の転置」に関する話題。重要な性質とその証明を整理しました。

目次
  • 行列の転置の例

  • 転置行列の性質

  • 性質の証明

  • 転置行列の行列式

行列の転置の例

例1

A=(2357)A=\begin{pmatrix} 2& 3 \\ 5 & 7\end{pmatrix} のとき,その転置行列は A=(2537)A^{\top}=\begin{pmatrix} 2& 5 \\ 3 & 7\end{pmatrix}

AA が正方行列でなくても転置行列は定義されます。 AAm×nm\times n 行列のとき AA^{\top}n×mn\times m 行列となります。

例2

A=(231570)A=\begin{pmatrix} 2& 3 &-1\\ 5 & 7&0\end{pmatrix} のとき,その転置行列は A=(253710)A^{\top}=\begin{pmatrix} 2& 5 \\ 3 & 7\\-1& 0\end{pmatrix}

転置行列の性質

特に2〜4は絶対に覚えておくべき重要な性質です!

・(転置行列のトレース,行列式)任意の正方行列 AA に対して,

1. trA=trA\mathrm{tr}\:A^{\top}=\mathrm{tr}\:A

2. detA=detA\det A^{\top}=\det A

・(転置行列の積)積 ABAB が定義できるサイズのとき

3.(AB)=BA(AB)^{\top}=B^{\top}A^{\top}

・(転置行列の逆行列)AA が正則なとき,

4.(A)1=(A1)(A^{\top})^{-1}=(A^{-1})^{\top}

性質の証明

証明の難易度は,(易)1<4<3<21 <4 <3 <2 (難)です。

1,2,4で正方行列 AA のサイズは n×nn\times n ,3では AA の列数(= BB の行数)を nn とおきます。

1.「トレースは転置しても変わらない」の証明

これは転置行列とトレースの定義より明らか:

trA=i=1naii=trA\mathrm{tr}\: A^{\top}=\displaystyle\sum_{i=1}^na_{ii}=\mathrm{tr}\: A

2.「行列式は転置しても変わらない」の証明

ちょっと大変なので後回し

3.「積の転置は順番を交換して転置の積」の証明

成分計算するのみ(行列積の成分表示に慣れる練習になる。よくわからない人はサイズが小さい場合で確認することを推奨)。

(AB)(AB)^{\top}ijij 成分は ABABjiji 成分。つまり,k=1najkbki\displaystyle\sum_{k=1}^na_{jk}b_{ki}

一方,BAB^{\top}A^{\top}ijij 成分は k=1nbkiajk\displaystyle\sum_{k=1}^nb_{ki}a_{jk} となり上式と一致する。

4.「転置の逆行列は逆行列の転置」の証明

3において B=A1B=A^{-1} とおくと,

I=(A1)AI=(A^{-1})^{\top}A^{\top}

これは,(A1)(A^{-1})^{\top}AA^{\top} の逆行列であることを表している。

転置行列の行列式

最後に2をざっくりと説明します!一般的に書こうとするとかなりごちゃごちゃしたので n=4n=4 の場合で簡単に説明します。一般の場合も全く同様に証明できます。

行列式の置換による定義を用いて証明します。→行列式の3つの定義と意味

証明

行列式の定義より,

detA\det A を展開したときの項は 4!=244!=24 個あるが,例えば4次の置換 σ=(12343241)\sigma= \begin{pmatrix}1&2&3&4\\3&2&4&1\end{pmatrix}

に対応する項として,sgn(σ)a13a22a34a41\mathrm{sgn}(\sigma)a_{13}a_{22}a_{34}a_{41} が出てくる。

一方,detA\det A^{\top} を展開したときも同様に24項出てくるが,σ\sigma の逆置換: σ1=(12344213)\sigma^{-1}= \begin{pmatrix}1&2&3&4\\4&2&1&3\end{pmatrix}

に対応する項として,sgn(σ1)a41a22a13a34\mathrm{sgn}(\sigma^{-1})a_{41}a_{22}a_{13}a_{34} が出てくる。

ここで,ある置換とその逆置換の符号は等しいので,sgn(σ1)=sgn(σ)\mathrm{sgn}(\sigma^{-1})=\mathrm{sgn}(\sigma) である。よって,上記の項は等しい。

他の項についても同様の議論が成り立つ。つまり, detA\det A を展開したときの各項と detA\det A^{\top} を展開したときの各項の間には1対1対応があり,対応する項の値は等しいことが分かる。

以上により転置行列の行列式はもとの行列の行列式と同じであることが証明された。

2の証明,やっていることはそこまで難しくありませんが,きちんと書くのはけっこうめんどうです。

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