行列のQR分解と応用(固有値・最小二乗法)
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任意の正方行列 に対して,あるユニタリ行列 と上三角行列 が存在して と分解できる。
ただし,ユニタリ行列とは,列ベクトルが正規直交基底をなす行列です。→ユニタリ行列の定義と性質の証明
QR分解できることの証明
QR分解できることの証明
- グラムシュミットの直交化法
- 行列を縦ベクトルの集まりと見る考え方
を理解していれば簡単です。
行列 が正則な場合のみ証明する。
の 列目を とおく。 たちは線形独立であり,グラムシュミットの直交化法を使うと,正規直交基底 を得る。
このとき, は の一次結合である。この係数を で表す:
この 本の関係式をまとめて行列の形で書くと,
左辺はユニタリ行列である。これを とおく。右辺の上三角行列を とおくと, となる。右から の逆行列 をかける( が正則なら より も正則)と, となる。上三角行列の逆行列は上三角行列なので は上三角行列である。
QR分解と行列式
QR分解と行列式
QR分解できたら,行列式の絶対値が簡単に計算できる。
とQR分解できたとする。
積の行列式は行列式の積なので,
である。ユニタリ行列の行列式の絶対値は なので
さらに,三角行列の行列式は対角成分の積(※)なので
は簡単に計算できる。
※ 上三角行列と下三角行列の意味と6つの定理 の定理1
QR法
QR法
行列の固有値を計算する方法の1つにQR法があります。QR法ではQR分解を繰り返します。
の固有値を計算する具体的な手順は,QR分解と行列積の計算を交互にやるだけです:
- とQR分解する。
- を計算する。
- とQR分解する。
- を計算する。
- 以下同様に と分解して を計算する。
- 十分大きい に対して の対角成分が の固有値の近似値となる。
定理1: と の固有値は等しい
定理2: の固有値の絶対値がすべて異なるなら, で は上三角行列に近づく(対角成分より下が に収束する)
定理1と定理2,および「三角行列の対角成分は固有値と一致する」ことから上記の手順6で述べたことが成立します。
定理1の証明は簡単です。
ユニタリ行列は正則であり, 相似変換で固有値は変わらないので と の固有値は等しい。
同様に, に対して
より と の固有値は等しい。
定理2の証明はそこそこ大変なので省略します。
QR分解と最小二乗法
QR分解と最小二乗法
は正則とする。
を最小化する問題の解を とする。
もし とQR分解できれば, を解くことで が得られる。
は上三角行列なので, は簡単に解けます(後ろの成分から順々に計算できる)。
QRコードを見るたびにQR分解を意識してしまいますね。