正12面体のいろいろな計算(対角線・表面積・体積・内接球・外接球)

正12面体について,対角線の長さ・体積などいろいろな量を計算してみます。 正12面体

正12面体とは,

  • 同じサイズの正五角形12枚で構成される正多面体です。
  • 面の数は 1212,辺の数は 3030,頂点の数は 2020 です。
  • 1つの頂点には3つの正五角形が接します。

正12面体のいろいろな量

この記事では,以下の1~5を導出していきます。

1辺の長さが1の正12面体について,

  1. 異なる2頂点間の長さは5種類あり,それぞれ 1,1+52,2+102,3+52,3+1521,\dfrac{1+\sqrt{5}}{2},\dfrac{\sqrt{2}+\sqrt{10}}{2},\dfrac{3+\sqrt{5}}{2},\dfrac{\sqrt{3}+\sqrt{15}}{2}
    特に最長の対角線の長さ3+152\dfrac{\sqrt{3}+\sqrt{15}}{2}

  2. 外接球の半径3+154\dfrac{\sqrt{3}+\sqrt{15}}{4}

  3. 内接球の半径25+11540\sqrt{\dfrac{25+11\sqrt{5}}{40}}

  4. 表面積325+1053\sqrt{25+10\sqrt{5}}

  5. 体積15+754\dfrac{15+7\sqrt{5}}{4}

5種類ある正多面体の中で計算が一番大変ですがおもしろいです!

正12面体の対角線の長さ

1辺の長さが 11 である正12面体の異なる2頂点を結ぶ線分の長さは5種類あります。1つずつ計算していきます。

図を見ながらゆっくり考えてみてください。

1番目~3番目に短い長さの計算

正12面体の対角線の長さ1

  • 1番短いものは辺と一致し,長さ1

  • 2番目に短いものは正五角形の対角線の長さなので,1+52\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}
    (→詳しくは正五角形の対角線の長さと作図方法

  • 3番目に短いものは正方形 ABCDABCD の対角線の長さ。正方形になる理由は,「ABABCDCD はどちらも PQPQ と平行なので A,B,C,DA,B,C,D は同一平面上にある → さらに4辺の長さが等しいのでひし型 → さらに対称性より AC=BDAC=BD なので正方形。
    この正方形の1辺の長さは 1+52\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} だったので,対角線の長さは 2\sqrt{2} 倍して 長さは 2+102\dfrac{\sqrt{2}+\sqrt{10}}{2}

4番目に短い長さの計算

4番目に短いもの1辺の長さが ABAB である正五角形の対角線の長さ。よって長さは (1+52)2=3+52\left(\dfrac{1+\sqrt{5}}{2}\right)^2=\dfrac{3+\sqrt{5}}{2} 正12面体の対角線の長さ2

1番長い対角線の計算

一番長いもの1辺の長さが ABAB である立方体の対角線の長さになる。(立方体になる理由,つまり各面が正方形になる理由は「3番目に短いもの」の計算で述べた通り。図が見にくいが,正12面体の頂点からうまく8つ選ぶと立方体になる!)

よって長さは 3+152\dfrac{\sqrt{3}+\sqrt{15}}{2} 正12面体の対角線の長さ3

黄金比を使って表す

上記で求めた5つの長さは ϕ=1+52\phi=\dfrac{1+\sqrt{5}}{2} とおくと,
1,ϕ,2ϕ,ϕ2,3ϕ1,\phi,\sqrt{2}\phi,\phi^2,\sqrt{3}\phi と簡潔に表せます。

外接球の半径

外接球の直径は,最長対角線と一致します。よって,外接球の半径 RR は,3+154\dfrac{\sqrt{3}+\sqrt{15}}{4}

内接球の半径

次は,内接球の半径 rr を計算します。外接球の半径 RR を使えば簡単です。

内接球の半径の計算

正12面体の中心を OO,正12面体を構成する1つの五角形 ABCDEABCDE の重心を GG とすると,OGAOGA は直角三角形。

よって,OG2+AG2=AO2OG^2+AG^2=AO^2

ここで,

  • OGOG は内接球の半径 rr
  • OAOA は外接球の半径 RR
  • AG=xAG=x は,頂角が 7272^{\circ} である二等辺三角形 OABOAB に余弦定理を使うと,
    12=x2+x22x2cos721^2=x^2+x^2-2x^2\cos 72^{\circ}
    ここで cos72=514\cos 72^{\circ}=\dfrac{\sqrt{5}-1}{4} より(詳しくは覚えておくと便利な三角比の値),
    1=x2(2512)1=x^2\left(2-\dfrac{\sqrt{5}-1}{2}\right)
    x2=255=5+510x^2=\dfrac{2}{5-\sqrt{5}}=\dfrac{5+\sqrt{5}}{10}

以上から,

r2=R2x2=3+15+65165+510=45+155204540=25+11540r^2=R^2-x^2\\ =\dfrac{3+15+6\sqrt{5}}{16}-\dfrac{5+\sqrt{5}}{10}\\ =\dfrac{45+15\sqrt{5}-20-4\sqrt{5}}{40}\\ =\dfrac{25+11\sqrt{5}}{40}

r=25+11540r=\sqrt{\dfrac{25+11\sqrt{5}}{40}}

表面積

次は,表面積 SS です。正五角形1枚の面積 ss1212 倍します。考え方は簡単ですが計算がわりと大変です。

表面積の計算

正五角形について,中心と各頂点を結んで合同な三角形5つに分割すると,

s=5×12x2sin72s=5\times\dfrac{1}{2}x^2\sin 72^{\circ}

である。さきほど計算したように x2=5+510x^2=\dfrac{5+\sqrt{5}}{10} であり,

sin72=1cos272=162516=10+254\sin 72^{\circ}=\sqrt{1-\cos^2 72^{\circ}}\\ =\sqrt{1-\dfrac{6-2\sqrt{5}}{16}}\\ =\dfrac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4}

なので,

s=5+54×10+254s=\dfrac{5+\sqrt{5}}{4}\times\dfrac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4}

分子は

(5+5)2×(10+25)=5(5+1)2×25(5+1)=105(5+1)3=105(55+15+35+1)=105×8(5+2)=16×5(5+25)=425+105\sqrt{(5+\sqrt{5})^2\times (10+2\sqrt{5})}\\ =\sqrt{5(\sqrt{5}+1)^2\times 2\sqrt{5}(\sqrt{5}+1)}\\ =\sqrt{10\sqrt{5}(\sqrt{5}+1)^3}\\ =\sqrt{10\sqrt{5}(5\sqrt{5}+15+3\sqrt{5}+1)}\\ =\sqrt{10\sqrt{5}\times 8(\sqrt{5}+2)}\\ =\sqrt{16\times 5(5+2\sqrt{5})}\\ =4\sqrt{25+10\sqrt{5}}

よって,正12面体の表面積は S=325+105S=3\sqrt{25+10\sqrt{5}}

体積

最後は体積 VV です。内接球の半径を求める公式 V=13rSV=\dfrac{1}{3}rS を使うだけなので,考え方は簡単ですが計算がかなり大変です。

体積の計算

内接球の半径 r=25+11540r=\sqrt{\dfrac{25+11\sqrt{5}}{40}} と表面積 S=325+115S=3\sqrt{25+11\sqrt{5}} および,V=13rSV=\dfrac{1}{3}rS より,

V=13rS=1325+11540×325+105=12(25+115)(5+25)2=125(55+11)(5+2)2=125(47+215)2=5494+25×212=54(49+45)=15+754V=\dfrac{1}{3}rS\\ =\dfrac{1}{3}\sqrt{\dfrac{25+11\sqrt{5}}{40}}\times 3\sqrt{25+10\sqrt{5}}\\ =\dfrac{1}{2}\sqrt{\dfrac{(25+11\sqrt{5})(5+2\sqrt{5})}{2}}\\ =\dfrac{1}{2}\sqrt{\dfrac{5(5\sqrt{5}+11)(\sqrt{5}+2)}{2}}\\ =\dfrac{1}{2}\sqrt{\dfrac{5(47+21\sqrt{5})}{2}}\\ =\dfrac{\sqrt{5}}{4}\sqrt{94+2\sqrt{5\times 21^2}}\\ =\dfrac{\sqrt{5}}{4}(\sqrt{49}+\sqrt{45})\\ =\dfrac{15+7\sqrt{5}}{4}

(最後から2つめの等号で二重根号が外せた!)

「二重根号を外せ」という問題以外でこんなに大きい数の二重根号を外したのは初めてです…

ちなみに,正12面体の双対は正20面体です。つまり,正12面体の各面の中心を頂点とする立体は正20面体になります。正20面体については正20面体の対角線・体積・内接球などを座標で計算で紹介しているように,正12面体より計算が楽です。

「正十二面体・正二十面体」と書くと紛らわしいので「正12面体・正20面体」と書きました。この記事は恩師の yama 先生にインスパイアされて書きました。