合成関数について理解しておくべき性質まとめ

合成関数の意味と,関連する性質を整理しました。 pic01

合成関数とは

合成関数とは「2つの関数を順番に適用したもの」のことです。

合成関数の定義

2つの関数 f(x),g(x)f(x),g(x) に対して,f(g(x))f(g(x)) のことを,f(x)f(x)g(x)g(x) の合成関数と言いfgf\circ g または (fg)(x)(f\circ g)(x) と書く。

f(x)f(x)xx の部分に g(x)g(x) を代入するわけです。例を見てみましょう。

例1

f(x)=x2f(x)=x^2g(x)=x+1g(x)=x+1 のとき,合成関数 fgf\circ g は,

fg=f(g(x))=f(x+1)=(x+1)2f\circ g=f(g(x))=f(x+1)=(x+1)^2

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同様に,合成の順番を替えた gfg\circ f も計算してみると,

gf=g(f(x))=g(x2)=x2+1g\circ f=g(f(x))=g(x^2)=x^2+1

合成の順番

  • 例1で見たように,合成の順番を替えると,結果も異なります。つまり,一般に fggff\circ g\neq g\circ f です。

  • fgf\circ gf(g(x))f(g(x)) のことなのか g(f(x))g(f(x)) のことなのか混同しやすいので,自分なりの方法で覚えましょう。例えば「記号の順番は入れ替わらない(fgf\circ gf(g(x))f(g(x))gg が右側にある)」あるいは「xx に近い方から順に作用させる」などと覚えるとよいです。

合成関数の微分公式

合成関数に関連する公式の中で圧倒的に重要なのが「合成関数の微分公式」です。

合成関数の微分公式

{f(g(x))}=f(g(x))g(x)\{f(g(x))\}'=f'(g(x))g'(x)

この公式の意味と例題は合成関数の微分公式と例題7問で解説しています。

また,多変数関数の場合は連鎖律という定理に拡張されます。大学数学で大変お世話になる公式です。連鎖律(多変数関数の合成関数の微分)

合成関数の積分

  • 合成関数の微分は公式がありますが,積分はできるとは限りません。
  • つまり,f(x)f(x)g(x)g(x) が積分できても,f(g(x))dx\displaystyle\int f(g(x))dx が計算できるとは限りません。
  • 例えば,ex2dx\displaystyle\int e^{-x^2}dx は二次関数と指数関数の合成の積分ですが,原始関数を初等関数で書き下すことはできません。→ガウス積分の公式の2通りの証明
  • 他にも「簡単な関数の合成だが積分できない例」を原始関数の定義といろいろな例の記事末で紹介しています。
  • ただし,g(x)g(x) が一次関数なら以下のように積分できます。
合成関数の積分公式

f(ax+b)dx=1aF(ax+b)+C\displaystyle\int f(ax+b)dx=\dfrac{1}{a}F(ax+b)+C

(ただし,FFff の原始関数)

合成関数の微分公式を使って右辺を微分すれば被積分関数と一致することがわかります。

結合法則と3つの関数の合成

合成の結合法則

3つの関数 f(x),g(x),h(x)f(x),g(x),h(x) に対して,f(gh)=(fg)hf\circ (g\circ h)=(f\circ g)\circ h

確認
  • ff」と「ghg\circ h」という2つの関数の合成は,
    f(gh)=f((gh)(x))=f(g(h(x)))f\circ (g\circ h)=f((g\circ h)(x))=f(g(h(x)))

  • fgf\circ g」と「hh」という2つの関数の合成は,
    (fg)h=(fg)(h(x))=f(g(h(x)))(f\circ g)\circ h=(f\circ g)(h(x))=f(g(h(x)))

つまり,f(gh)=(fg)hf\circ (g\circ h)=(f\circ g)\circ h

両者は等しいので,この関数のことを fghf\circ g\circ h と書くことができます!(もし両者が等しくないと fghf\circ g\circ hf(gh)f\circ (g\circ h) のことなのか (fg)h(f\circ g)\circ h のことなのかわからないので困る)

nn 個の関数の合成も同様です。 f1f2fnf_1\circ f_2\circ\cdots\circ f_n を考えることができます。その際,結合法則のおかげでカッコをつけずに書くことができます。

同じ関数の合成

  • (ff)(x)(f\circ f)(x) のことを f2(x)f^2(x) と書くことがあります。ただし,関数の積 f(x)×f(x)f(x)\times f(x) と紛らわしいので,あまりおすすめしません。(ff)(x)(f\circ f)(x) と書けばよいです。
  • nn 個の関数の合成 (fff)(x)(f\circ f\circ \cdots\circ f)(x) のことを fn(x)f^n(x) と書くことがあります。これも関数の積と紛らわしいですが,nn 個の場合は簡潔に記述できるメリットもあるので,積を表すのか合成を表すのか明確にした上で使ってもよいと思います。
  • 例えば,テント写像とその性質〜東大入試の背景〜では nn 個の関数の合成が登場します。

その他の話題

  • 関数 f(x)f(x) とその逆関数 f1(x)f^{-1}(x) を合成すると元に戻ります。つまり,(ff1)(x)=(f1f)(x)=x(f\circ f^{-1})(x)=(f^{-1}\circ f)(x)=x です。→逆関数の3つの定義と使い分け

  • 一次関数と一次関数の合成は一次関数です。より一般に,線形写像と線形写像の合成は線形写像です。→行列の積の定義とその理由

三角関数の合成と合成関数は全く関係ありません。