領域を図示するテクニック【絶対値つき不等式】
「絶対値を含む不等式」で表された領域の図示について解説します。
有名問題2問を使って,基本的な考え方と3つのテクニックを紹介します。
例題と基本方針
例題と基本方針
絶対値を含む不等式で表された領域は,絶対値の中身の正負で場合分けすることで,確実に図示できます。
が表す領域を図示せよ。
絶対値の中身である の正負で場合分けする。
- の場合,つまり の場合,
与えられた不等式は ,つまり の下側 - の場合,つまり の場合,
与えられた不等式は ,つまり の上側
以上より,求める領域は図のグレー部分(境界含む)。
が表す領域を図示せよ。
絶対値の中身である と の正負で場合分けする。
- かつ の場合
,つまり の下側 - かつ の場合
,つまり の上側 - かつ の場合
,つまり の下側 - かつ の場合
,つまり の上側
以上より,求める領域は図のグレー部分(境界含む)。
このように確実に解けますが,場合分けがめんどうです。そこで,場合分けをせずにすばやく解くテクニックを紹介します。
テクニック1:2つの不等式に分解
テクニック1:2つの不等式に分解
という変形を意識すると楽に解ける場合があります。
より,求める領域は図のグレー部分(境界含む)。
テクニック2:対称性に着目
テクニック2:対称性に着目
対称性に着目するとうまくいくことが多いです。例えば,「 が不等式を満たす が不等式を満たす」が言えれば,求める領域は 軸に関して対称です。
以上をふまえて,例題2の別解です。
という不等式が成立するか否かは, としても としても変わらない。よって,図示したい領域は 軸に関しても 軸に関しても対称である。よって, の範囲で領域がわかれば十分。
この範囲では,,つまり の下側(図の①部分)。
テクニック3:領域の形を覚えておく
テクニック3:領域の形を覚えておく
1次式の絶対値
が表す領域は「帯」
上の不等式は, と変形できます。点と直線の距離公式を使うと,この条件は直線 からの距離が一定以下と言い換えられます。つまり,帯のような領域になります。
は,
と変形できる。よって,直線 からの距離が 以下の領域を図示すればよい。
1次式の絶対値の和
が表す領域は平行四辺形。具体的には,以下の手順で領域を図示できる。
- 直線 を書く
- その直線上での限界点を求める
- 求めた点を線分で結ぶ
具体的な手順は例題を見ながら理解してください。
について,
- 直線 と を書く
- 直線上での限界点をそれぞれ求める
上では,条件は なので限界点は と
上では,条件は なので限界点は と - 以上4つの頂点を線分で結ぶと領域が図示できる
など複雑なものも同じように図示できます。さらに,この手順1~3は直線の数(1次式の数)が増えてもすべての直線が1点で交わるなら使えます。
が表す領域を図示せよ。
- 考える直線は, と と であり,これらはすべて原点を通る。
- 限界点をそれぞれ求める。
上では条件は なので
上では条件は なので (複号同順)
上でも同様に (複号同順) - この6点を結ぶ六角形の内側(境界含む)が求める領域。
手順1~3が正しいことは以下の事実からわかります:
直線をまたがない範囲では絶対値の中身の符号は一定なので,絶対値が外せて全体で1つの一次不等式になる。
→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT83も参照してください。
高校時代の恩師のy先生に最近教えていただいたネタにインスパイアされた記事です!