点と直線の距離公式:例題と5通りの証明

点と直線の距離公式

(x0,y0)(x_0,y_0)直線 ax+by+c=0ax+by+c=0 の距離は,

ax0+by0+ca2+b2\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}

点と直線の距離公式

大学入試でもよく使う重要な公式です。このページでは,点と直線の距離公式について,例題と5通りの証明を解説します。

3次元版は 点と平面の距離公式と例題・2通りの証明 をご覧ください。

例題

点と直線の距離公式:ax0+by0+ca2+b2\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}} を使ってみましょう。

例題

(1,2)(-1,2) と直線 y=3x+4y=-3x+4 の距離 dd を求めよ。

解答

直線の式 y=3x+4y=-3x+4 を左辺に移項すると,3x+y4=03x+y-4=0

よって,

  • 点:(x0,y0)=(1,2)(x_0,y_0)=(-1,2)
  • 直線:a=3,b=1,c=4a=3,b=1,c=-4

として距離公式を使うと, pic02

3×(1)+1×2432+12=510=102\begin{aligned} \dfrac{|3\times (-1)+1\times 2-4|}{\sqrt{3^2+1^2}} &=\dfrac{|-5|}{\sqrt{10}}\\ &=\dfrac{\sqrt{10}}{2} \end{aligned}

補足:

  • 分母のルート,分子の絶対値を忘れないようにしましょう。
  • この例題のように,y=mx+ny=mx+n という形の直線は移項して ax+by+c=0ax+by+c=0 になおしてから公式を使いましょう。

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT116では,点と直線の距離に関する応用問題と,計算ミスを減らす3つのコツも紹介しています。

点と直線の距離公式の証明

点と直線の距離公式の証明を5通り紹介します。以下では,点の座標を A(x0,y0)A(x_0,y_0) 直線を l:ax+by+c=0l:ax+by+c=0 とします。点から直線におろした垂線の足を HH とします。

AH=ax0+by0+ca2+b2AH=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}} の導出が目標です。

1. ひたすら座標計算する証明

中学数学の範囲で理解できます。難しい発想は必要なく,HH の座標を求めてひたすら計算するだけです。

証明

直線:ax+by+c=0ax+by+c=0 を変形すると,

y=abxcb y=-\dfrac{a}{b}x-\dfrac{c}{b}

となり傾きは ab-\dfrac{a}{b} である。

よって,これに垂直な直線の傾きは ba\dfrac{b}{a} である(垂直なら傾きの積が 1-1 なので)。

よって,垂線 AHAH は,(x0,y0)(x_0,y_0) を通り傾き ba\dfrac{b}{a} の直線なので,y=ba(xx0)+y0y=\dfrac{b}{a} (x-x_0)+y_0

次に,垂線ともとの直線の交点である HH の座標を求める:

abxcb=baxbax0+y0 -\dfrac{a}{b}x-\dfrac{c}{b}=\dfrac{b}{a}x-\dfrac{b}{a}x_0+y_0

計算していくと, a2xac=b2xb2x0+aby0x=b2x0aby0aca2+b2\begin{aligned} -a^2x-ac&=b^2x-b^2x_0+aby_0\\ x&=\dfrac{b^2x_0-aby_0-ac}{a^2+b^2} \end{aligned}

yy 座標は

abxcb=abx0+a2y0+a2cba2cbbca2+b2=abx0+a2y0bca2+b2\begin{aligned} &-\dfrac{a}{b}x-\dfrac{c}{b}\\ &=\dfrac{-abx_0+a^2y_0+\frac{a^2c}{b}-\frac{a^2c}{b}-bc}{a^2+b^2}\\ &=\dfrac{-abx_0+a^2y_0-bc}{a^2+b^2} \end{aligned}

あとは,AH=(xx0)2+(yy0)2AH=\sqrt{(x-x_0)^2+(y-y_0)^2} を計算するだけ:

xx0=a(ax0+by0+c)a2+b2yy0=b(ax0+by0+c)a2+b2 x-x_0=\dfrac{-a(ax_0+by_0+c)}{a^2+b^2}\\ y-y_0=\dfrac{-b(ax_0+by_0+c)}{a^2+b^2}

より, AH=ax0+by0+ca2+b2(a)2+(b)2=ax0+by0+ca2+b2\begin{aligned} AH&=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{a^2+b^2}\sqrt{(-a)^2+(-b)^2}\\ &=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}} \end{aligned}

xx0,yy0x-x_0,y-y_0 がきれいな式になるのがおもしろいです。

2. ベクトルを使う証明1

次は「法線ベクトル」という高校数学の知識を使う証明です。つまり,ax+by+c=0ax+by+c=0 という直線とベクトル (a,b)(a,b) は垂直になるという性質を使います。→法線ベクトルの3通りの求め方と応用

これを使えば,HH の座標を求めずに計算できるので証明1より計算が楽です。

証明

点と直線の距離公式の証明

HH の座標を (X,Y)(X,Y) とする。 AHundefined\overrightarrow{AH}ll の法線ベクトルと平行なので実数 tt を用いて,

(Xx0,Yy0)=t(a,b) (X-x_0, Y-y_0)=t(a, b)

と表せる。あとは,HHll 上にある条件: aX+bY=caX+bY=-c を用いて tt を求めればOK。

上式の両辺に対して (a,b)(a,b) との内積を取ると,

a(Xx0)+b(Yy0)=ta×a+tb×b a(X-x_0)+b(Y-y_0)=ta\times a+tb\times b

である。これと aX+bY=caX+bY=-c より,

cax0by0=t(a2+b2) -c-ax_0-by_0=t(a^2+b^2)

となる。

a2+b20a^2+b^2\neq 0 なので, t=ax0+by0+ca2+b2 t=-\dfrac{ax_0+by_0+c}{a^2+b^2}

よって,AHAH の長さ,すなわち t(a,b)t(a,b) の長さは,

d=ta2+b2=ax0+by0+ca2+b2\begin{aligned} d&=|t|\sqrt{a^2+b^2}\\ &=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}} \end{aligned}

となり点と直線の距離公式が証明された。

3. ベクトルを使う証明2

法線ベクトルに加えて「正射影ベクトル」という道具を用いた証明を紹介します。本質的には2番目の証明と同じですが,よりシンプルに証明を書くことができます。→ 正射影ベクトルの公式の証明と使い方

証明

ll 上の任意の点 BB の座標を B(x1,y1)B (x_1 , y_1) とおく。HH の座標を (X,Y)(X,Y) とする。

法線ベクトルを nundefined\overrightarrow{n} とおく。nundefined=(a,b)\overrightarrow{n} = (a,b) である。

AHundefined\overrightarrow{AH}ABundefined\overrightarrow{AB}nundefined\overrightarrow{n} への正射影ベクトルであるため AHundefined=ABundefinednundefinednundefined2nundefined \overrightarrow{AH} = \dfrac{\overrightarrow{AB} \cdot \overrightarrow{n}}{|\overrightarrow{n}|^2} \overrightarrow{n} である。この絶対値を計算すればよい。

AHundefined=ABundefinednundefinednundefined=(OBundefinedOAundefined)nundefinednundefined=ax1+by1ax0by0a2+b2=ax0+by0+ca2+b2\begin{aligned} | \overrightarrow{AH} | &= \dfrac{|\overrightarrow{AB} \cdot \overrightarrow{n}|}{|\overrightarrow{n}|}\\ &= \dfrac{|(\overrightarrow{OB} - \overrightarrow{OA}) \cdot \overrightarrow{n}|}{|\overrightarrow{n}|}\\ &= \dfrac{|ax_1 + b y_1 - ax_0 - by_0|}{\sqrt{a^2+b^2}}\\ &= \dfrac{|ax_0 + by_0 + c|}{\sqrt{a^2 + b^2}} \end{aligned} となる。なお,最後の計算では BBll 上にあることから ax1+by1+c=0ax_1 + by_1 + c = 0 となることを用いた。

4. 三角形の面積を用いた証明

三角形の面積を二通りの方法で表すことで,距離公式を導出します。おもしろい方法です。

証明

a=0a=0 のとき,直線 lly=cby=-\dfrac{c}{b} となるので求める距離は y0+cb|y_0+\dfrac{c}{b}| となり距離公式は正しい。 b=0b=0 のときも同様。よって,以下 a,ba,\:b ともに 00 でない場合を考える。

点と直線の距離公式の証明2

ll 上に点 P,QP,Q を「 PPAAxx 座標が等しく,QQAAyy 座標が等しくなる」ようにとる。

PA=p,QA=qPA=p,\:QA=q とおくと,PQ=p2+q2PQ=\sqrt{p^2+q^2} である。

三角形の面積を二通りの方法で表すことにより,

12pq=12dp2+q2 \dfrac{1}{2}pq=\dfrac{1}{2}d\sqrt{p^2+q^2}

つまり,d=pqp2+q2d=\dfrac{pq}{\sqrt{p^2+q^2}} を得る。

直線の方程式を利用して PPyy 座標を求めることにより, p=cax0by0=1bax0+by0+c p=\left|\dfrac{-c-ax_0}{b}-y_0\right|=\dfrac{1}{|b|}|ax_0+by_0+c|

同様に,

q=cby0ax0=1aax0+by0+c q=\left|\dfrac{-c-by_0}{a}-x_0\right|=\dfrac{1}{|a|}|ax_0+by_0+c|

となるので,これらを上式に代入して整理すると

d=ax0+by0+ca2+b2 d=\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}

が得られ,点と直線の距離公式が証明された。

5. 点を動かすことによる証明

ddx0x_0y0y_0 の関数とみなし,関数を決定していくという方法です。

証明

ll を固定したとき,AA の場所によって dd が決まるので,ddx0x_0y0y_0 の関数とみなせる。

まず ax+by+c0ax+by+c\geq 0 の領域に AA がある場合を考える。

点と直線の距離公式の証明3

AAxx 軸方向に変化させたときの dd の変化量は x0x_0 の変化量に比例するので ddx0x_0 の一次関数。同様に y0y_0 の一次関数でもある。

よって,d=αx0+βy0+γd=\alpha x_0+\beta y_0+\gamma と書ける。

x0x_0a2+b2\sqrt{a^2+b^2} ずらすと ddaa ずれるので,

α=aa2+b2 \alpha=\dfrac{a}{\sqrt{a^2+b^2}}

同様に,

β=ba2+b2 \beta=\dfrac{b}{\sqrt{a^2+b^2}}

また「ax0+by0+c=0ax_0+by_0+c=0 のとき d=0d=0」という状況を,

d=αx0+βy0+γ=ax0+by0a2+b2+γ\begin{aligned} d&=\alpha x_0+\beta y_0+\gamma\\ &=\dfrac{ax_0+by_0}{\sqrt{a^2+b^2}}+\gamma \end{aligned}

に代入すると,

γ=ca2+b2 \gamma=\dfrac{c}{\sqrt{a^2+b^2}}

よって, d=ax0+by0+ca2+b2 d=\dfrac{ax_0+by_0+c}{\sqrt{a^2+b^2}}

また,ax+by+c0ax+by+c\leq 0 の領域に AA がある場合も同様に,

d=ax0+by0+ca2+b2 d=-\dfrac{ax_0+by_0+c}{\sqrt{a^2+b^2}}

となるので点と直線の距離公式が証明された。

このように点と直線の距離公式の証明1つでもいろいろな方法が考えられます。座標の問題に対する様々なアプローチの勉強になります。

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