ファクシミリの原理と通過領域の例題2問
「 と固定して のとりうる値の範囲を求める」という操作を全ての について行うことで,領域を求めることができる。
ファクシミリの原理について
ファクシミリの原理について
- による図形の断面が全ての に対して分かればもとの図形が復元できる,という考え方です(後述の例参照)。
- ファクシミリ(FAX)のとある方式では,画像を送信するときに1ラインずつ処理する,というのが名前の由来だと思われます。
- ファクシミリの原理は「原理」ではありません。一文字を固定して考えるというシンプルな「考え方」です。
- ファクシミリの原理は数学用語ではありません。大学への数学シリーズで使われている単語です。印象的なネーミングですが,記述式の試験で「ファクシミリの原理」という用語を使うのは避けた方がよいです。
例題
例題
直線群 が通過する領域を求め,図示せよ。
と固定して のとりうる値を考える。
のとりうる値の範囲を求めるために,平方完成する:
-
のとき
は で最大値 をとる。また, をいくらでも大きくすることで はいくらでも小さくなる。つまり, の範囲は となる。 -
のとき
は で最大値 をとる。また, をいくらでも大きくすることで はいくらでも小さくなる。つまり, の範囲は となる。
以上より,求める領域は図の薄緑の部分(境界は含む)
なお,この問題は包絡線の考え方を使っても解けます。→包絡線の求め方と例題
→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT46でも本問を解説しています。
東大の問題
東大の問題
続いて,2015年東大理系第一問です。いくつか解法がありますが,ファクシミリの原理でやってみます。
正の実数 に対して,座標平面上で次の放物線を考える:
が正の実数全体を動くとき, の通過する領域を求めよ。
と固定して のとりうる範囲を求める:
-
のとき
のとりうる範囲は -
のとき
も も単調減少である。また, であることに注意すると, のとりうる範囲は実数全体 -
のとき これと, より のとりうる範囲は
よって,答えは図のようになる。
(ただし,境界は白丸,点線の部分のみ含まない)
相加相乗平均に気づけるといちいち微分しなくてよいので楽です。