行列・関数・多項式に共通する有名な性質

このページでは,

X=X+Y2+XY2X=\dfrac{X+Y}{2}+\dfrac{X-Y}{2}

という等式を使ったおもしろい性質を3つ紹介します。

この等式は「対称的なものと交代的(反対称的)なものに分解する」という文脈でいろいろな場面で登場します。この等式を背景とした入試問題もたまに出題されるので,覚えておくとよいでしょう。

行列:対称行列と交代行列の和に分解する

任意の行列は対称行列と交代行列の和に分解できる

与えられた行列を,対称行列と交代行列の和で表すことができます。この事実は覚えておきましょう。

証明1

A=A+AT2+AAT2A=\dfrac{A+A^T}{2}+\dfrac{A-A^T}{2}

と分解できるが,A+AT2\dfrac{A+A^T}{2} は対称行列,AAT2\dfrac{A-A^T}{2} は交代行列であることがそれぞれの転置を取ることで確認できる。

ちなみに,紫文字の式を思いつかなくても,以下のように導出できます。

証明2

対称行列 BB と交代行列 CC を使って

A=B+CA=B+C と分解できたとする。

両辺の転置を取ると

A=B+C=BCA^{\top}=B^{\top}+C^{\top}=B-C

この2つの式を BBCC についてそれぞれ解くと

B=A+A2B=\dfrac{A+A^{\top}}{2}C=AA2C=\dfrac{A-A^{\top}}{2}

よって,A=A+A2+AA2A=\dfrac{A+A^{\top}}{2}+\dfrac{A-A^{\top}}{2}

実際に BB が対称行列で CC が交代行列であることも確認できる。

証明2では「もし表すことができたら」と仮定して式変形をして紫文字の式を導出しています。天下り的な証明1よりも自然ですね。

関数:奇関数と偶関数の和に分解する

任意の関数は偶関数と奇関数の和に分解できる

この性質を背景とする入試問題もたまに出題されます。覚えておくとよいでしょう。

証明

f(x)=f(x)+f(x)2+f(x)f(x)2f(x)=\dfrac{f(x)+f(-x)}{2}+\dfrac{f(x)-f(-x)}{2}

と分解できるが,g(x)=f(x)+f(x)2g(x)=\dfrac{f(x)+f(-x)}{2}g(x)=g(x)g(-x)=g(x) より偶関数,h(x)=f(x)f(x)2h(x)=\dfrac{f(x)-f(-x)}{2}h(x)=h(x)h(x)=-h(-x) より奇関数である。

多項式 x3+2x2+x1=(2x21)+(x3+x)x^3+2x^2+x-1=(2x^2-1)+(x^3+x)

ちなみに,このように多項式を偶数次の項と奇数次の項に分解する処理は,定積分の計算で使ったりします。

指数関数 exe^x

指数関数でさえも,偶関数と奇関数の和で表せてしまいます。

ex=ex+ex2+exex2e^x=\dfrac{e^x+e^{-x}}{2}+\dfrac{e^x-e^{-x}}{2}

実は,右辺の偶関数部分はカテナリー(懸垂線)と呼ばれる有名な曲線です。偶関数の部分は coshx\cosh x 奇関数の部分は sinhx\sinh x とも表され,双曲線関数とも呼ばれます。

2変数多項式:対称式と交代式の和に分解する

任意の2変数関数は対称式と交代式(反対称式)の和に分解できる

証明

f(x,y)=f(x,y)+f(y,x)2+f(x,y)f(y,x)2f(x,y)=\dfrac{f(x,y)+f(y,x)}{2}+\dfrac{f(x,y)-f(y,x)}{2}

と分解できるが,第一項は xxyy に関して対称であり,第二項は xxyy に関して反対称である。

x2y=x2y+xy22+x2yxy22x^2y=\dfrac{x^2y+xy^2}{2}+\dfrac{x^2y-xy^2}{2}

まとめ

複数の分野において,似たような性質が成り立つことが分かりました。このように,複数の分野に共通する性質を抜き出すことを 抽象化と言ったりします。

複数の分野に共通する性質を知っていると

  1. 様々な分野を統一的に議論できる
  2. 他にもこの共通する性質を持つものが存在するのではないか?という視点を持ち,理論を拡張できる

といった嬉しい事があります。

共通する性質を追求するほど,具体的な議論から抽象的な話になっていくので難しく感じますが,抽象的な議論をする際も常に具体例をイメージしておくとよいです。

行列の分解の証明2は恩師のy先生に教えていただきました。

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