垂足三角形の意味と5つの性質

垂足三角形

三角形について,各頂点から対辺におろした垂線の足がなす三角形を垂足三角形と言う。 垂足三角形の定義

垂足三角形のいろいろな性質を紹介します。

垂足三角形と内心

性質1

鋭角三角形の垂心 HH は,その垂足三角形の内心と一致する。

前提定式:3本の垂線は1点 HH で交わります。これを垂心と言います。→垂心の存在の3通りの証明

性質1の証明

APAPRPQ\angle RPQ の二等分線であることを証明する。 垂足三角形と内心

  • 四角形 RHPBRHPB は直角が2つあり,円に内接する四角形である。よって円周角の定理より HPR=HBR\angle HPR=\angle HBR
  • 同様に四角形 BRQCBRQC も円に内接する四角形であり,円周角の定理より HBR=HCQ\angle HBR=\angle HCQ
  • 同様に四角形 HQCPHQCP も円に内接する四角形であり,円周角の定理より HCQ=HPQ\angle HCQ=\angle HPQ

よって,HPR=HPQ\angle HPR=\angle HPQ

同様に BQ,CRBQ,CR も角の二等分線である。よって,HH は三角形 PQRPQR の内心。

垂足三角形と傍心

性質2

鈍角三角形の垂心は,その垂足三角形の傍心と一致する。

垂足三角形と傍心

  • 鈍角三角形の場合は垂心 HH は三角形 ABCABC の外側です。
  • 性質2の証明は性質1の証明とほぼ同様です。
  • 内心と傍心は似ています。→傍心の意味と性質・内心との比較
  • 図を眺めていると,4つの三角形 ABC,ABH,BCH,CAHABC,ABH,BCH,CAH の垂足三角形はすべて一致することもわかります!

垂足三角形と線分和

性質3

鋭角三角形 ABCABC において,垂足三角形の周の長さは,4RsinAsinBsinC4R\sin A\sin B\sin C

RR は三角形 ABCABC の外接円の半径です。

証明

三角形 ABCABCAQRAQR は相似であり,相似比は AB:AQ=c:ccosA=1:cosAAB:AQ=c:c\cos A=1:\cos A

よって,RQ=acosARQ=a\cos A 垂足三角形の周の長さ 正弦定理と倍角の公式を使って変形すると,

RQ=2RsinAcosA=Rsin2ARQ=2R\sin A\cos A=R\sin 2A

QP,PRQP,PR も同様に計算できて,周の長さは

R(sin2A+sin2B+sin2C)R(\sin 2A+\sin 2B+\sin 2C)

となる。このままでもよいが,三角形の内角における和積公式を使うと上式は

4RsinAsinBsinC4R\sin A\sin B\sin C となる。

性質3をふまえて,とてもおもしろい性質4を紹介します。

性質4

鋭角三角形 ABCABC の各辺上を P,Q,RP,Q,R が動く。L=PQ+QR+RPL=PQ+QR+RP が最小になるのは,PQRPQR が垂足三角形のとき。

線分和の最小値を考えるときは,折れ線にしましょう。

証明

PPABAB に関して折り返した点を P1P_1 とし,ACAC に関して折り返した点を P2P_2 とする。 垂足三角形と線分和

PR+RQ+QP=P1R+RQ+QP2P1P2PR+RQ+QP=P_1R+RQ+QP_2\leq P_1P_2

よって,PP を固定したとき,LL の最小値は P1P2P_1P_2 の長さと等しい。

次に最適な PP を求める。二等辺三角形 AP1P2AP_1P_2 に注目すると,

P1P2=2AP1sin(2×A2)=2APsinAP_1P_2=2AP_1\sin\left(\dfrac{2\times A}{2}\right)=2AP\sin A

これが最小になるのは APAPBCBC が垂直なとき(※)。

同様に,Q,RQ,R も垂線の足であることがわかるので,最小値を達成するのは垂足三角形の場合。

(※)のうしろは,以下のような議論でもOKです:

P1P2P_1P_2 の最小値は
2APsinA=2csinBsinA=4RsinAsinBsinC2AP\sin A\\ =2c\sin B\sin A\\ =4R\sin A\sin B\sin C
となり,垂足三角形の周長と一致する。よって,垂足三角形が LL を最小にする(さらに,上記の議論より最小値を達成する P,Q,RP,Q,R は1つに決まるので,他の解はない)。

垂足三角形の面積

性質5

鋭角三角形 ABCABC の面積を SS とすると,その垂足三角形の面積は, 2ScosAcosBcosC2S\cos A\cos B\cos C

周の長さには sin\sin の積が出てきて,面積には cos\cos の積が出てきました。証明はとてもよい練習問題です!

証明

垂足三角形の面積 三角形 ARQARQ の面積は,

S×ARAB×AQAC=S×ACcosAAB×ABcosAAC=Scos2AS\times\dfrac{AR}{AB}\times\dfrac{AQ}{AC}\\ =S\times\dfrac{AC\cos A}{AB}\times\dfrac{AB\cos A}{AC}\\ =S\cos^2A

同様に,三角形 BPRBPRCPQCPQ の面積も求めて全体から引くと,求める面積は

SScos2AScos2BScos2C=SS×3cos2Acos2Bcos2C2=S2(1+cos2A+cos2B+cos2C)S-S\cos^2A-S\cos^2B-S\cos^2C\\ =S-S\times\dfrac{3-\cos 2A-\cos 2B-\cos 2C}{2}\\ =-\dfrac{S}{2}(1+\cos 2A+\cos 2B+\cos 2C)

ここで,三角形の内角における和積公式を使うと上式は

2ScosAcosBcosC2S\cos A\cos B\cos C となる。

読み方は自信ないですが「たれあし」ではなく「すいそくさんかっけい」だと思います。