定数型の定石
定数型の積分方程式は,
∫abf(t)dt=k(=const.)
とおいて解くのが定石である。
まず,ごく基本的な問題から考えます。
例1
f(x)=∫03f(t)dt+2+x2
を満たす関数 f(x) を求めよ。
定石の通り,定数 k を用いて
∫03f(t)dt=k(1)
とおきます。すると,f(x) は
f(x)=k+2+x2
と書けます。これを式 (1) に代入すると,
∫03(k+2+t2)dt=k
この式の左辺の積分について,
∫03(k+2+t2)dt=[31t3+(2+k)t]03=9+3(2+k)=15+3k
これより,
15+3k=k
∴k=−215
よって,
f(x)=x2−211
次は,もう少し計算が複雑な積分方程式を解いてみましょう。
例2
f(x)=4+xlogx−∫1e2t2f′(t)dt
を満たす関数 f(x) を求めよ。
手順は先ほどと全く同じです。
∫1e2t2f′(t)dt=k(2)
とおけば,
f(x)f′(x)=xlogx+4−k=logx+1
これを式 (2) に代入すれば,
∫1e2t2(logt+1)dt=k
ここで,
∫t2logtdt=∫(31t3)′logtdt=31t3logt−∫31t2dt=31t3logt−91t3+C
ただし C は積分定数です。これより,
∫1e2t2(logt+1)dt=[31t3logt−91t3+31t3]1e2=98e6−92=k
よって答えは,
f(x)=xlogx+938−98e6
例3
f(x)=5+∫12(x2+1)f(t)dt
を満たす関数 f(x) を求めよ。
この問題は少し注意が必要です。今まで通り
∫12(x2+1)f(t)dt=k
とおくことはできません。なぜなら,左辺は x に依存する式であり,一定にはならないからです。このような場合,与式を
f(x)=5+x2∫12f(t)dt+∫12f(t)dt
と変形することで対処できます。∫12f(t)dt は一定の値ですから,これを k とおけば良いのです。そうすると
f(x)=kx2+5+k
とかけるので,
∫12(kt2+5+k)dt=[3kt3+(5+k)t]12=3k(8−1)+(5+k)(2−1)=310k+5
となります。これが k と等しいので,k についての簡単な一次方程式を解けば
k=−715
よって,答えは
f(x)=−715x2+720
これと似た問題として次のようなものもあります。
例4
f(x)=ex+∫01(ex+t)f(t)dt
を満たす関数 f(x) を求めよ。
この問題の場合は,二つの定数 A,B を用いて
f(x)=ex+ex∫01f(t)dt+∫01tf(t)dt=ex+exA+B
とおく必要があります。∫01f(t)dt と ∫01tf(t)dt が異なる値を取るからです。この場合は,
∫01f(t)dt=A
∫01tf(t)dt=B
の二式に f(x) を代入して,A,B についての連立方程式を解くという流れになります。練習問題としてやってみてください。