積分方程式の解き方

求めたい関数が被積分関数として現れるような方程式を,積分方程式といいます。この記事では,高校数学で登場する積分方程式の解き方について,例題7問でしっかり解説します。

積分方程式の解法の概要

高校数学で登場する積分方程式には,大きく以下の2種類があります:

  • 定数型:積分区間に変数を含まない
  • 変数型:積分区間に変数を含む

積分方程式は解き方に定石があり,慣れれば比較的簡単に解けます。 テストや入試本番で出題されたらラッキーと思って,ぜひ練習してみてください。

定石は,各節の冒頭で解説します。

積分方程式:定数型の例題

定数型の定石

定数型の積分方程式は, abf(t)dt=k(=const.) \int_a^b f(t) dt = k (= \mathrm{const.}) とおいて解くのが定石である。

まず,ごく基本的な問題から考えます。

例1

f(x)=03f(t)dt+2+x2 f(x) = \int_0^3 f(t) dt + 2 + x^2 を満たす関数 f(x)f(x) を求めよ。

定石の通り,定数 kk を用いて 03f(t)dt=k(1) \int_0^3 f(t) dt = k \tag{1} とおきます。すると,f(x)f(x)f(x)=k+2+x2 f(x) = k + 2 + x^2 と書けます。これを式 (1)(1) に代入すると, 03(k+2+t2)dt=k \int_0^3 (k + 2 + t^2 ) dt = k この式の左辺の積分について, 03(k+2+t2)dt=[13t3+(2+k)t]03=9+3(2+k)=15+3k\begin{aligned} \int_0^3 (k + 2 + t^2 ) dt &= \left[\dfrac{1}{3}t^3 + (2 + k) t\right]_0^3\\ &= 9 + 3(2 + k)\\ &= 15 + 3k \end{aligned} これより, 15+3k=k 15 + 3k = k k=152 \therefore k = -\dfrac{15}{2} よって, f(x)=x2112 f(x) = x^2 - \dfrac{11}{2}

次は,もう少し計算が複雑な積分方程式を解いてみましょう。

例2

f(x)=4+xlogx1e2t2f(t)dt f(x) = 4 + x\log x - \int_1^{e^2} t^2 f'(t) dt を満たす関数 f(x)f(x) を求めよ。

手順は先ほどと全く同じです。 1e2t2f(t)dt=k(2) \int_1^{e^2} t^2 f'(t) dt = k \tag{2} とおけば, f(x)=xlogx+4kf(x)=logx+1\begin{aligned} f(x) &= x\log x + 4 - k\\ f'(x) &=\log x + 1 \end{aligned} これを式 (2)(2) に代入すれば, 1e2t2(logt+1)dt=k \int_1^{e^2} t^2 (\log t + 1) dt = k ここで, t2logtdt=(13t3)logtdt=13t3logt13t2dt=13t3logt19t3+C\begin{aligned} \int t^2 \log t dt &= \int \left(\dfrac{1}{3}t^3\right)' \log t dt\\ &= \dfrac{1}{3}t^3 \log t - \int \dfrac{1}{3}t^2 dt\\ &= \dfrac{1}{3}t^3 \log t - \dfrac{1}{9}t^3 + C \end{aligned} ただし CC は積分定数です。これより, 1e2t2(logt+1)dt=[13t3logt19t3+13t3]1e2=89e629=k\begin{aligned} \int_1^{e^2} t^2 (\log t + 1) dt &= \left[\dfrac{1}{3}t^3 \log t - \dfrac{1}{9}t^3 + \dfrac{1}{3}t^3\right]_1^{e^2}\\ &= \dfrac{8}{9}e^6 - \dfrac{2}{9}\\ &= k \end{aligned} よって答えは, f(x)=xlogx+38989e6 f(x) = x\log x + \dfrac{38}{9} - \dfrac{8}{9}e^6

例3

f(x)=5+12(x2+1)f(t)dt f(x) = 5 + \int_1^2 (x^2 + 1)f(t) dt を満たす関数 f(x)f(x) を求めよ。

この問題は少し注意が必要です。今まで通り 12(x2+1)f(t)dt=k \int_1^2 (x^2 + 1)f(t) dt = k とおくことはできません。なぜなら,左辺は xx に依存する式であり,一定にはならないからです。このような場合,与式を f(x)=5+x212f(t)dt+12f(t)dt f(x) = 5 + x^2 \int_1^2 f(t) dt + \int_1^2 f(t) dt と変形することで対処できます。12f(t)dt\int_1^2 f(t) dt は一定の値ですから,これを kk とおけば良いのです。そうすると f(x)=kx2+5+k f(x) = kx^2 + 5 + k とかけるので, 12(kt2+5+k)dt=[k3t3+(5+k)t]12=k3(81)+(5+k)(21)=103k+5\begin{aligned} \int_1^2 (kt^2 + 5 + k) dt &= \left[\dfrac{k}{3}t^3 + (5 + k)t\right]_1^2\\ &= \dfrac{k}{3}(8-1) + (5 + k)(2-1)\\ &= \dfrac{10}{3}k + 5 \end{aligned} となります。これが kk と等しいので,kk についての簡単な一次方程式を解けば k=157 k = -\dfrac{15}{7} よって,答えは f(x)=157x2+207 f(x) = -\dfrac{15}{7} x^2 + \dfrac{20}{7} これと似た問題として次のようなものもあります。

例4

f(x)=ex+01(ex+t)f(t)dt f(x) = e^x + \int_0^1 (e^x + t)f(t) dt を満たす関数 f(x)f(x) を求めよ。

この問題の場合は,二つの定数 A,BA,B を用いて f(x)=ex+ex01f(t)dt+01tf(t)dt=ex+exA+B\begin{aligned} f(x) &= e^x + e^x \int_0^1 f(t) dt + \int_0^1 t f(t) dt\\ &= e^x + e^x A + B \end{aligned} とおく必要があります。01f(t)dt\int_0^1 f(t) dt01tf(t)dt\int_0^1 tf(t) dt が異なる値を取るからです。この場合は, 01f(t)dt=A \int_0^1 f(t) dt = A 01tf(t)dt=B \int_0^1 t f(t) dt = B の二式に f(x)f(x) を代入して,A,BA,B についての連立方程式を解くという流れになります。練習問題としてやってみてください。

積分方程式:変数型の例題

変数型の定石

変数型の積分方程式は,定積分で表された関数の微分の公式ddxaxf(t)dt=f(x) \dfrac{d}{dx} \int_a^x f(t)dt = f(x) を利用して微分することが定石である。

こちらも,ごく基本的な問題から始めましょう。

例5

1xf(t)dt=13x3+a \int_1^x f(t) dt = \dfrac{1}{3}x^3+a を満たす関数 f(x)f(x) と実数 aa を求めよ。

定石に従って両辺を微分すると, f(x)=x2 f(x) = x^2 がわかります。また,x=1x=1 をもとの式に代入すると 0=13+a0=\dfrac{1}{3}+a,つまり a=13a=-\dfrac{1}{3} がわかります。

例6

12xf(t)dt=4x2e2x+a \int_1^{2x} f(t) dt = 4x^2 e^{2x} +a を満たす関数 f(x)f(x) と実数 aa を求めよ。

このままでは公式を使えないので,変数を置換して公式を利用できる形にします。慣れれば「合成関数の微分と同じ」と納得でき,置換しなくても頭の中で計算できるようになりますが,慣れるまでは明示的に手で置換して計算するのが良いです。

X=2xX = 2x とおいて, 1Xf(t)dt=X2eX+a \int_1^X f(t) dt = X^2 e^X +a 両辺を XX で微分して f(X)=2XeX+X2eX f(X) = 2Xe^X + X^2 e^X よって f(x)=2xex+x2ex f(x) = 2xe^x + x^2 e^x がわかります。また,もとの式に x=12x=\dfrac{1}{2} を代入すると 0=e+a0=e+a,つまり a=ea=-e がわかります。

積分方程式の応用問題

では最後に,二つの型が組み合わさった問題を解いて終わりにしましょう。

例7

{f(x)=0x{f(t)g(t)}dt+3(3)g(x)=01{f(t)g(t)}dt+x2(4) \begin{cases} \displaystyle f(x) = -\int_0^x \left\{f'(t) - g(t)\right\}dt + 3 & (3)\\ \displaystyle g(x) = \int_0^1 \left\{f'(t) - g'(t)\right\}dt + x^2 & (4) \end{cases} を満たす関数 f(x),g(x)f(x), g(x) を求めよ。

01{f(t)g(t)}dt=k \int_0^1 \left\{f'(t) - g'(t)\right\}dt = k とおくと, g(x)=x2+k g(x) = x^2 + k とかけます。また,式 (3)(3) の両辺を xx で微分して,g(x)g(x) を代入すると f(x)=f(x)+x2+kf(x)=12x2+k2\begin{aligned} f'(x) &= -f'(x) + x^2 + k\\ f'(x) &= \dfrac{1}{2}x^2 + \dfrac{k}{2} \end{aligned} と書くことができます。これを式 (4)(4) に代入すると 01{12t2+k22t}dt=k \int_0^1 \left\{\dfrac{1}{2}t^2 + \dfrac{k}{2} - 2t\right\}dt = k となります。この式の左辺の積分について 01{12t2+k22t}dt=[16t3t2+kt2]01=161+k2\begin{aligned} \int_0^1 \left\{\dfrac{1}{2}t^2 + \dfrac{k}{2} - 2t\right\}dt &= \left[\dfrac{1}{6}t^3 -t^2 + \dfrac{kt}{2}\right]_0^1\\ &= \dfrac{1}{6} -1 + \dfrac{k}{2} \end{aligned} よって kk に関する一次方程式を解けば k=53 k = -\dfrac{5}{3} 再び式 (3)(3) を用いて f(x)=0x{12t2+k2t2k}dt+3=0x{12t212k}dt+3=[16t3+12kt]0x+3=16x3+12kx+3\begin{aligned} f(x) &= -\int_0^x \left\{\dfrac{1}{2}t^2 + \dfrac{k}{2} - t^2 - k\right\}dt + 3\\ &= - \int_0^x \left\{-\dfrac{1}{2}t^2 - \dfrac{1}{2} k\right\}dt + 3\\ &= \left[\dfrac{1}{6} t^3 + \dfrac{1}{2}kt\right]_0^x + 3\\ &= \dfrac{1}{6}x^3 + \dfrac{1}{2}kx + 3 \end{aligned} よって,kk の値を代入すれば f(x)=16x356x+3,g(x)=x253 f(x) = \dfrac{1}{6}x^3 - \dfrac{5}{6}x + 3, \quad g(x) = x^2 - \dfrac{5}{3} と求めることができます。

見た目はごついですが,定石を習得すればそこまで難しくはありません。食わず嫌いせずに勉強してみてください。