相対論的力学

更新日時 2021/03/28

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ここまでは,Einsteinの定めた特殊相対論における主原理をもとに導出できることを考えてきましたが,ここからは,それに従って,今まで正しいと思われていた物理を,相対論にも合うように修正していくことを考えます。

目次
  • 運動方程式の書き換え

  • エネルギーおよび運動量

運動方程式の書き換え

相対論的にNewtonの運動方程式を書き換えることを考えます。

古典力学の理論,実験を参考にすれば,運動方程式はとても良い精度で成り立っていました。 ただ,古典力学においては,光の速度に比べて速度がとても小さいものしか扱っていませんでした。もしかしたら,光の速度に近い物体は運動方程式とは異なった振る舞いをするのかもしれません。しかし,速度が十分小さい物体に対しては,Newtonの運動方程式は成立しておいて欲しいわけであります。

ということで,相対論的力学において,以下のような原理を設定します。

相対論的力学における原理

ある瞬間における観測対象である質点に対し,その瞬間質点を座標原点に静止させている座標系を SS' と定める。SS'において,質点の運動に対し, md2xkdt2=Fk,  dxkdt=0  (k=1,2,3) (1) m\dfrac{d^2 x^{k'}}{dt'^2} = F^{k'}, ~~ \dfrac{d x^{k'}}{dt'} = 0 ~~ (k = 1,2,3) \quad\quad(1) が成立する。

これは古典力学的な観点から当たり前の式であり,むしろこれが成立していなければ相対論的力学が古典力学に帰着できないことになってしまいます。これが満たされていることは必要条件です。では,この式を相対論的に考察してみま晶。

相対論では,4次元の時空間を考えることが主であったので,式 (1)(1) の一式目に,F0=0F^{0'} = 0 を用いて md2x0dt2=F0(2) m\dfrac{d^2 x^{0'}}{dt'^2} = F^{0'} \tag{2} を導入します。d2x0dt2=d2(ct)dt2=0\dfrac{d^2 x^{0'}}{dt'^2} = \dfrac{d^2 (ct')}{dt'^2} = 0 より,この式 (2)(2) は自明に成立します。よって,運動方程式は md2xμdt2=Fμ  (μ=0,1,2,3) m\dfrac{d^2 x^{\mu'}}{dt'^2} = F^{\mu'} ~~ (\mu = 0,1,2,3) と書き換えられます。

Lorentz変換に対して形が変わらない方程式にするため,左辺をどうにかして反変ベクトルにしたいです。今考えている座標系は物体に対して静止している系であるから,tt' を固有時 τ\tau にしても差し支えありません。つまり, md2xμdτ2=Fμ  (μ=0,1,2,3) m\dfrac{d^2 x^{\mu'}}{d\tau^2} = F^{\mu'} ~~ (\mu = 0,1,2,3) と書き換えられます。すると,d2xμdτ2\dfrac{d^2 x^{\mu'}}{d\tau'^2} は4元加速度であり,反変ベクトルであることに気づきます。つまりこの式の左辺は反変ベクトルです。よって,右辺も反変ベクトルである必要があります。したがってこの式を任意の慣性系 SS にLorentz変換すれば, md2xμdτ2=Fμ  (μ=0,1,2,3)(3) m\dfrac{d^2 x^{\mu}}{d\tau^2} = F^{\mu} ~~ (\mu = 0,1,2,3) \tag{3} という基礎方程式を導くことができます。ここで FμF^\mu とは,特殊相対論では Fμ=ΛνμFν F^\mu = \Lambda_{\nu'}^\mu F^{\nu'} を満たします。この力に関わる反変ベクトルを4元力といいます。

エネルギーおよび運動量

4元力の具体的なかたちを求めることを考えてみます。人類は研究の末,ある実験結果を得ました。これを以下に説明します。

相対論的力学における実験結果

ある瞬間における観測対象である質点に対し,その瞬間質点を座標原点に静止させている座標系を SS' と定める。SS'においてはかった3次元の力を f=(f1,f2,f3)\boldsymbol{f} = (f^1, f^2, f^3) とする。 また,4元運動量 pμp^\mu の4つの成分のうちの3つについて,新たに p=(p1,p2p3) \boldsymbol{p} = (p^1, p^2, p^3) とかくことにする。このとき,任意の慣性系 SS に対し, dpdt=f \dfrac{d\boldsymbol{p}}{dt} = \boldsymbol{f} が成立する。

古典力学において,運動量を変化させるものは力でした。相対論においてもこれが成立するのです。ただ,この事実だけだと,例えば dpdτ=f\displaystyle\dfrac{d\boldsymbol{p}}{d\tau} = \boldsymbol{f} や4元ではない普通の運動量 P\boldsymbol{P} をつかって dPdτ=f,  dPdt=f\displaystyle\dfrac{d\boldsymbol{P}}{d\tau} = \boldsymbol{f},~~\displaystyle\dfrac{d\boldsymbol{P}}{dt} = \boldsymbol{f} でも 古典力学的な極限は一致します。多くの実験結果と合致するのがこれであったということであり,これに関しては理由を議論することができません。

これを利用すると, dpkdt=dpkdτdτdt=Fk1v2c2=fk  (k=1,2,3) \dfrac{dp^k}{dt} = \dfrac{dp^k}{d\tau} \dfrac{d\tau}{dt} = F^{k} \sqrt{1-\dfrac{v^2}{c^2}} = f^k ~~(k = 1,2,3) ここで,基礎方程式が dpμdτ=Fμ  (μ=0,1,2,3) \dfrac{dp^{\mu}}{d\tau} = F^{\mu} ~~ (\mu = 0,1,2,3) であることを利用しました。

さて,式 (3)(3) に,ημνuμ\eta_{\mu\nu}u^{\mu}をかけると, mημνuμaν=ημνuμFν m\eta_{\mu\nu}u^{\mu}a^{\nu} = \eta_{\mu\nu}u^{\mu}F^{\nu} →4元ベクトルの節「4元加速度」で導いた式: ημνuμaν=0(4) \eta_{\mu\nu} u^\mu a^\nu = 0 \tag{4} を使えば, ημνuμFν=0 \eta_{\mu\nu}u^{\mu}F^{\nu} = 0 これにより, u0F0+u1F1+u2F2+u3F3=0u0F0=u1F1+u2F2+u3F3=dxdτF1+dydτF2+dzdτF3c1v2c2F0=11v2c2(vxf1+vyf2+v3f3)F0=vfc1v2c2\begin{aligned} -u^0F^0 + u^1F^1 + u^2F^2 + u^3F^3 &= 0\\ u^0F^0 &= u^1F^1 + u^2F^2 + u^3F^3\\ &= \dfrac{dx}{d\tau}F^1 + \dfrac{dy}{d\tau}F^2 + \dfrac{dz}{d\tau}F^3\\ \therefore \dfrac{c}{\sqrt{1-\dfrac{v^2}{c^2}}} F^0 &= \dfrac{1}{1-\dfrac{v^2}{c^2}} \left(v_xf^1 + v_yf^2 + v_3f^3\right)\\ \therefore F^0 &= \dfrac{\boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{f}}{c\sqrt{1-\dfrac{v^2}{c^2}}} \end{aligned} 基礎方程式により, dp0dτ=F0 \dfrac{dp^0}{d\tau} = F^0 であるから, d(cp0)dt=vf \dfrac{d(cp^0)}{dt} = \boldsymbol{v}\cdot \boldsymbol{f} 右辺が「単位時間中に外力 f\boldsymbol{f} が質点に与える仕事」であるから,これを積分すれば cp0=(質点のエネルギー)+const. cp^0 = \text{(質点のエネルギー)} + \textrm{const.} 古典力学においては,エネルギーの定義に際し,原点をどこに置くかは任意でした。ただ相対論において,Einsteinは不定の const.\textrm{const.} の部分を0としました。これは実験による正当性が確かめられています(機会があれば説明したいです)。

よって,質点のエネルギーを EE で表すことにして, cp0=E cp^0 = E とかけます。つまり,4元運動量は,第一から第三成分には運動量の成分をもつが,第零成分にはエネルギーに関連する成分をもちます。

エネルギーについて具体的な表式を導きます。式 (4)(4) により, c2=ημνuμuν(mc)2=ημνpμpν=E2+p2E=cp2+(mc)2\begin{aligned} -c^2 &= \eta_{\mu\nu} u^\mu u^\nu\\ -(mc)^2 &= \eta_{\mu\nu} p^\mu p^\nu\\ &= -E^2 + \|\boldsymbol{p}\|^2\\ \therefore E &=c\sqrt{\|\boldsymbol{p}\|^2 + (mc)^2} \end{aligned} この式をテイラー展開すれば, E=mc2+12mp2+ E = mc^2 + \dfrac{1}{2m}\|\boldsymbol{p}\|^2 + \cdots 古典力学的な極限 pmc\|\boldsymbol{p}\| \ll mc においては,\cdots の部分は無視できます。

特に,物体が止まっている時,つまり p=0\boldsymbol{p} = \boldsymbol{0} のとき, E=mc2 E = mc^2 となります。mc2mc^2静止エネルギーと呼びます。

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