熱量・比熱・熱容量の公式と求め方

熱力学において,とは,熱力学第一法則を用いて「仕事以外で,内部エネルギーを変化させるもの」と定義されます。これを定量化したものが,熱量と呼ばれます。

大雑把に言えば,物体間に流れるエネルギーの量を数値化したもの,とも説明できます。

単位は [J][\mathrm{J}] (ジュール)で表します。

また今回は,物体の温度を変化させるために必要な

  • 比熱
  • 熱容量

についても解説していきます。

熱量

熱量は,物体間での内部エネルギーの流れ,つまり,物体間で移動する熱を数値化したものです。

熱は内部エネルギーと同じ単位を持つので,単位はジュール [J][\mathrm{J}] です。

エネルギーの単位であるジュールは,力学的エネルギーや仕事の単位でも使われますよね。

※ エネルギーと仕事の関係が怪しい人は,仕事と運動エネルギーの関係 を確認してみてください。

また,以前はカロリー [kcal][\mathrm{kcal}] も使われていましたが,現在ではほとんど使われません。

補足として, 1kcal=4.186J1 \mathrm{kcal}=4.186 \mathrm{J} が成り立ちます。

比熱

ここからは,比熱について説明していきます。

比熱とは,物質 1g1\mathrm{g} の温度を 1K1\mathrm{K} 上昇させるのに必要な熱量のことを表します。

比熱が c[J/gK]c[\mathrm{J}/\mathrm{g}\cdot \mathrm{K}]m[g]m[\mathrm{g}] の物質に,熱量 Q[J]Q[\mathrm{J}] を与えた時の温度変化をΔT\Delta{T} とすると,

Q=mcΔTQ=m \cdot c \cdot \Delta{T}

という式が成り立ちます。

これを変形させて,

c=QmΔTc=\dfrac{Q}{m\cdot \Delta{T}}

比熱は上記のように定義されます。

直感的にわかりやすく言い換えてみます。

比熱の大きな物体は,温度を 1K1\mathrm{K} 上昇させるのに多くの熱が必要なので温まりにくいです。

一方で,比熱の小さな物体は,小さな熱量変化ですぐに温度が変わるので温まりやすく,冷めやすい性質である,ということですね。

熱容量

ここからは,比熱と勘違いしやすい熱容量について確認していきましょう。

熱容量の定義は,ある物体の温度を 1K1\mathrm{K} 上昇させるために必要な熱量のことで,単位は C[J/K]C[\mathrm{J}/\mathrm{K}] です。

比熱 c[J/gK]c[\mathrm{J}/\mathrm{g}\cdot \mathrm{K}]m[g]m[\mathrm{g}] の物体の熱容量は,

C=mcC=mc

と表すことができます。

物質の質量が大きいほど,また比熱が大きいほど,物体の熱容量は大きくなりますよね。

比熱と熱容量の求め方

もう一度,比熱と熱容量の違いも兼ねて,その求め方について説明します。

これらの違いは,比熱が 1g1\mathrm{g} あたりの温度変化に必要な熱量であったのに対して,熱容量は物体全体(ある量)に対してであるということです。

ですから,熱容量は物体の比熱と質量がわかれば

C=mcC=mc

という式から計算できるんですね。

物質ごとの比熱

水は物質の中でも比熱が非常に大きく,4.24.2 です。

参考までに,他の物質と比較してみましょう。

物質名 比熱 c[J/gK]c[\mathrm{J}/\mathrm{g}\cdot \mathrm{K}]
4.24.2
2.12.1
アルミニウム 0.880.88
0.440.44
0.390.39
0.380.38
0.130.13

こうしてみると,1g1\mathrm{g} の水の温度を 11 ℃ 上昇させられる熱量では,10倍以上の質量の金に同様の温度変化を起こす事ができるということですね。

熱量の保存

最後に,熱量の保存について確認していきましょう。

温度の高い物体と低い物体が接触すると,熱が高温物体から低温物体に移動します。

これを熱伝導といいます。

熱伝導が起こり,十分な時間が経つと,物体間の熱の移動が終了し,温度が等しくなります。

この状態を熱平衡といいます。

高温の物体と低音の物体を接触させた際,外部との熱のやりとりがない場合には,

高温物体の失った熱量=低温物体の得た熱量\text{高温物体の失った熱量} =\text{低温物体の得た熱量}

が成り立ち,これを熱量の保存と呼びます。

この状態を以下の式で表すことができます。

m1c1(t1t)=m2c2(tt2)m_1c_1(t_1-t)=m_2c_2(t-t_2)

ただし,

高温物体の質量を m1[g]m_1[\mathrm{g}] ,比熱を c1[J/gK]c_1[\mathrm{J}/\mathrm{g}\cdot \mathrm{K}] 初めの温度を t1[K]t_1[\mathrm{K}]

低音物体の質量を m2[g]m_2[\mathrm{g}] ,比熱を c2[J/gK]c_2[\mathrm{J}/\mathrm{g}\cdot \mathrm{K}] 初めの温度を t2[K]t_2[\mathrm{K}]

熱平衡時の温度を t[K]t[\mathrm{K}] とする。

この公式は計算問題でも頻出なので,意味を理解して使えるようにしておくことが重要です。

熱容量,比熱から,ある物質の温度変化に必要な熱量を求められるよう,計算練習をしっかりしておきましょう。 また,熱についてもここで復習しておくことが肝心です。