部分積分の公式と覚え方,例題

部分積分の公式

部分積分

ただし,ff'ff の微分GGgg の積分G(x)=g(x)G'(x)=g(x))。

部分積分についてわかりやすく解説します。部分積分の公式は一見複雑ですが,とても重要なので確実に理解しておきましょう。

例題

部分積分

f(x)g(x)dx=f(x)G(x)f(x)G(x)dx \int f(x)g(x)dx=f(x)G(x)-\int f'(x)G(x)dx

は,2つの関数 f(x)f(x),g(x)g(x) の積 f(x)g(x)f(x)g(x) を積分するための公式です。例を見てみましょう。

例題1

不定積分 xcosxdx\displaystyle\int x\cos xdx を計算せよ。

f(x)=xf(x)=xg(x)=cosxg(x)=\cos x の積の積分です。部分積分を使ってみましょう。

解答

部分積分の公式 fg=fGfG\displaystyle\int fg=fG-\int f'G を使う。xx の微分は 11cosx\cos x の積分は sinx\sin xなので,

xcosxdx=x(sinx)1×sinxdx\begin{aligned} &\int x\cos xdx\\ &=x(\sin x)-\displaystyle\int 1\times \sin xdx \end{aligned}

部分積分

第二項はサインの積分,つまり cosx-\cos x であるので結局 xcosxdx=xsinx+cosx+C \int x\cos xdx=x\sin x+\cos x+C

→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~ では,部分積分を使う問題と計算ミスを減らすコツを複数紹介しています。

部分積分のコツ

まずは,公式をしっかり覚えましょう。「そのまま積分引く微分積分」です。部分積分

微分して簡単になる関数に注目

部分積分のコツ1

「2つの関数の掛け算の積分」は部分積分を考えましょう。微分して簡単になる方を ff として部分積分します。

例題2(多項式と三角関数の積)

不定積分 (x+2)sinxdx\displaystyle\int (x+2) \sin x dx を求めよ。

多項式 x+2x+2 は微分すると簡単な関数 11 になります。一方,sinx\sin{x}cosx\cos{x} は,微分しても簡単になりません。よって,f(x)=x+2f(x)=x+2g(x)=sinxg(x)=\sin x として部分積分です。

解答

f(x)=x+2f(x)=x+2g(x)=sinxg(x)=\sin x として部分積分の公式を使う。x+2x+2 の微分は 11sinx\sin x の積分は cosx-\cos x なので,

(x+2)sinxdx=(x+2)(cosx)(x+2)(cosx)dx=(x+2)cosx+cosxdx=(x+2)cosx+sinx+C\begin{aligned} &\int (x+2) \sin x dx \\ &= (x+2)(-\cos x) - \displaystyle\int (x+2)'(-\cos x)dx \\ &= -(x+2)\cos x + \displaystyle\int \cos x dx \\ &=-(x+2)\cos x + \sin x + C \end{aligned}

指数関数と多項式の積

次の例も同様です。微分して簡単になる関数を ff とします。

例題3(多項式と指数関数の積)

不定積分 4x2e2xdx\displaystyle\int 4x^2 e^{2x} dx を求めよ。

exe^x は,何回微分しても exe^x のままです。したがって,多項式 4x24x^2 の側を微分します。ただし2回部分積分をする必要があります。

解答

f(x)=4x2,g(x)=e2xf(x)=4x^2, g(x)=e^{2x} とおいて部分積分の公式を使う。ff の微分は 8x8xgg の積分は 12e2x\dfrac{1}{2}e^{2x} なので,

4x2e2xdx=4x212e2x8x12e2xdx=2x2e2x4xe2xdx \begin{aligned} & \int 4x^2 e^{2x} dx \\ &= 4x^2 \dfrac{1}{2}e^{2x} - \int 8x \dfrac{1}{2}e^{2x} dx\\ &= 2x^2 e^{2x} - \int 4xe^{2x} dx \end{aligned}

となる。第2項の積分を計算するために f(x)=4x,g(x)=e2xf(x)=4x, g(x)=e^{2x} とおいて再び部分積分の公式を使うと,上式は

2x2e2x(4x12e2x412e2xdx)=2x2e2x2xe2x+e2x+C=(2x22x+1)e2x+C \begin{aligned} & 2x^2 e^{2x} - \left( 4x \dfrac{1}{2}e^{2x} - \int 4 \dfrac{1}{2}e^{2x} dx\right) \\ &= 2x^2 e^{2x} - 2x e^{2x} + e^{2x} + C \\ &= (2x^2 - 2x + 1) e^{2x} + C \end{aligned}

となる。

このように部分積分を複数回する場合もあります。 複数回部分積分をするときに便利な方法として,瞬間部分積分があります。とくに難関大志望の受験生は瞬間部分積分も覚えておきましょう。

log(対数)を含む積分

部分積分のコツ2

logx\log x を含む積分は部分積分を使うことが多い。logx\log xff(微分側)で部分積分する。

logx\log x の微分は 1x\dfrac{1}{x} なので,多項式と logx\log x が混ざっている場合は logx\log x の方を微分するとうまくいきます。

例題4

不定積分 (4x+1)logxdx\displaystyle\int (4x + 1) \log x dx を求めよ。

解答

f(x)=logx,g(x)=4x+1f(x)=\log x, g(x)=4x+1 とおいて部分積分すると,

(4x+1)logxdx=(2x2+x)logx(2x2+x)1xdx=(2x2+x)logx(2x+1)dx=(2x2+x)logxx2x+C \begin{aligned} & \int (4x + 1) \log x dx \\ &= (2x^2+x) \log x - \int (2x^2+x) \dfrac{1}{x} dx\\ &= (2x^2+x) \log x - \int (2x+1) dx \\ &= (2x^2+x) \log x - x^2 -x +C \end{aligned} となる。

例題と同様にすれば,対数関数 logx\log x の積分もわかります。

演習問題

不定積分 logxdx\displaystyle\int \log x dx を求めよ。

(解答は log xの積分計算の2通りの方法と発展形 を参照。)

定積分の部分積分

ここまで紹介した部分積分の公式:

f(x)g(x)dx=f(x)G(x)f(x)G(x)dx \int f(x)g(x)dx=f(x)G(x)-\int f'(x)G(x)dx

不定積分についての公式でした。定積分についても同様の公式が成立します: abf(x)g(x)dx=[f(x)G(x)]ababf(x)G(x)dx \displaystyle\int_a^b f(x)g(x)dx=\left[f(x)G(x)\right]_a^b-\int_a^b f'(x)G(x)dx 定積分の場合も,「そのまま積分引く 微分積分」とおぼえましょう。

部分積分の公式の証明

部分積分の公式は一見難しそうですが,実は積の微分公式(→積の微分公式とその証明の味わい)の両辺を積分するだけで証明できます。

証明

積の微分公式より

(f(x)g(x))=f(x)g(x)+f(x)g(x) (f(x)g(x))' = f'(x) g(x) + f(x) g'(x)

両辺を xx で積分すると

(f(x)g(x))dx=f(x)g(x)dx+f(x)g(x)dx\begin{aligned} &\int (f(x)g(x))' dx \\ &= \int f'(x) g(x) dx + \int f(x) g'(x) dx \end{aligned}

積分の定義より,左辺は,f(x)g(x)+Cf(x)g(x)+CCC は積分定数)である。

これを移項すると,不定積分の場合の部分積分の公式を得る。

f(x)g(x)dx=f(x)g(x)f(x)g(x)dx \int f(x) g'(x) dx = f(x)g(x) - \int f'(x) g(x) dx

定積分の部分積分も全く同じようにして証明できます。

応用:三角関数と指数関数の積の積分

次は,部分積分の難しめの応用です。三角関数と指数関数の積の積分は,部分積分を2回して等式を作ることで計算します。

実際に例題を解いてみましょう。

例題5

exsinxdx\displaystyle\int e^x \sin{x} dx を求めよ。

解答

I=exsinxdxI = \displaystyle\int e^x \sin{x} dx とおく。

I=exsinxdx=exsinxex(sinx)dx=exsinxexcosxdx=exsinx(ex)cosxdx=exsinx{excosxex(cosx)dx}=exsinxexcosxexsinxdx=exsinxexcosxI\begin{aligned} I &= \int e^x \sin{x} dx \\ &= e^x \sin{x} - \int e^x (\sin{x})' dx \\ &= e^x \sin{x} - \int e^x \cos{x} dx \\ &= e^x \sin{x} - \int (e^x)' \cos{x} dx \\ &= e^x \sin{x} - \left\{e^x \cos{x} - \int e^x (\cos{x})' dx\right\} \\ &= e^x \sin{x} - e^x \cos{x} - \int e^x \sin{x} dx \\ &= e^x \sin{x} - e^x \cos{x} - I \end{aligned}

したがって,これを II について解くと,

I=12ex(sinxcosx)+C I = \dfrac{1}{2} e^x (\sin{x} - \cos{x}) + C

ただし,CC は積分定数である。

より詳しい説明は,三角関数と指数関数の積の積分もどうぞ。

個人的には,超関数の微分の定義を示唆している式であるという点で好きです。

Tag:数学3の教科書に載っている公式の解説一覧