京大文系数学2021入試過去問解答解説

※以下の解答と解説は京都大学が公表したものではなく,当サイトオリジナルのものです。問題は京都大学第2次試験問題からの引用です。

この記事では,京都大学の2021年度入学試験の文系数学について解説します。

第一問[n進法・ベクトル]

第一問 (30点)

次の各問に答えよ。

問1 1010 進法で表された数 6.756.7522 進法で表せ。また,この数と 22 進法で表された数 101.0101101.0101 の積として与えられる数を 22 進法および 44 進法で表せ。

問2 OAB\triangle{OAB} において OA=3,  OB=2,  AOB=60OA = 3, ~~ OB = 2, ~~ \angle AOB = 60^{\circ} とする。OAB\triangle{OAB} の垂心を HH とするとき,OHundefined\overrightarrow{OH}OAundefined\overrightarrow{OA}OBundefined\overrightarrow{OB} を用いて表せ。

まず問1から考えます。これは単なる計算問題です。nn 進法についての知識が不安な方はしっかりと確認しておきましょう。→n進法・n進数の解説と問題例

第一問 問1

6.75=22+21+21+22=110.11(2) \begin{aligned} 6.75 &= 2^2 + 2^1 + 2^{-1} + 2^{-2}\\ &= 110.11_{(2)} \end{aligned} とかける。また, 101.0101=22+20+22+24 101.0101 = 2^2 + 2^0 + 2^{-2} + 2^{-4} により,積は, (22+21+21+22)(22+20+22+24)=25+21+20+21+22+24+25+26=100011.110111(2)=242+340+341+42+343=203.313(4) \begin{aligned} &(2^2 + 2^1 + 2^{-1} + 2^{-2})(2^2 + 2^0 + 2^{-2} + 2^{-4})\\ &=2^5 + 2^1 + 2^0 + 2^{-1} + 2^{-2} + 2^{-4} + 2^{-5} + 2^{-6}\\ &= 100011.110111_{(2)}\\ &= 2\cdot 4^2 + 3 \cdot 4^0 + 3 \cdot 4^{-1} + 4^{-2} + 3\cdot 4^{-3}\\ &= 203.313_{(4)} \end{aligned} と表せる。

続いて問2を考えます。これも簡単な計算問題です。OHundefined=pOAundefined+qOBundefined\overrightarrow{OH} = p \overrightarrow{OA} + q\overrightarrow{OB} とおきます。HH は垂心ですから, AHundefinedOBundefined=0BHundefinedOAundefined=0 \begin{aligned} \overrightarrow{AH} \cdot \overrightarrow{OB} &= 0\\ \overrightarrow{BH} \cdot \overrightarrow{OA} &= 0 \end{aligned} が成立します。ここから式を2式立てられますので,p,qp,q を求めることができます。

第一問 問2

OHundefined=pOAundefined+qOBundefined\overrightarrow{OH} = p \overrightarrow{OA} + q\overrightarrow{OB} とおく。題意より AHundefinedOBundefined=0\overrightarrow{AH}\cdot \overrightarrow{OB} = 0 であるから, ((p1)OAundefined+qOBundefined)OBundefined=(p1)OAundefinedOBundefined+qOBundefined2=0 \begin{aligned} \left((p-1) \overrightarrow{OA} + q\overrightarrow{OB} \right) \cdot \overrightarrow{OB} &= (p-1) \overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OB} + q \left\|\overrightarrow{OB}\right\|^2\\ &= 0 \end{aligned} ここで, {OAundefinedOBundefined=32cos60=3OBundefined2=4 \begin{cases} \overrightarrow{OA}\cdot \overrightarrow{OB} = 3\cdot 2 \cdot \cos 60^{\circ} = 3\\ \left\|\overrightarrow{OB}\right\|^2 = 4 \end{cases} より, 3p+4q=3(1) 3p + 4q = 3 \tag{1} を得る。 これと同様にすれば,BHundefinedOAundefined=0\overrightarrow{BH}\cdot \overrightarrow{OA} = 0 から, 3p+q=1(2) 3p + q = 1 \tag{2} を得る。(1),(2)(1),(2) から p=19, q=23p = \dfrac{1}{9}, ~ q = \dfrac{2}{3} を得るので, OHundefined=19OAundefined+23OBundefined \overrightarrow{OH} = \dfrac{1}{9} \overrightarrow{OA} + \dfrac{2}{3}\overrightarrow{OB}

第二問[定積分]

第二問 (30点)

定積分 11x212x12dx\displaystyle\int_{-1}^1 \left|x^2 - \dfrac{1}{2}x - \dfrac{1}{2}\right|dx を求めよ。

定積分の問題です。被積分関数に絶対値がついているので,場合わけして絶対値を外す必要がありますが,それ以外は難しいところはありません。変数もないのでさくっと解けるはずです。

第二問

x212x12=12(2x2x1)=12(x1)(2x+1) \begin{aligned} x^2 -\dfrac{1}{2}x -\dfrac{1}{2} &= \dfrac{1}{2}(2x^2 -x -1)\\ &= \dfrac{1}{2}(x-1)(2x+1) \end{aligned} より,1x12-1 \leq x \leq -\dfrac{1}{2}x212x120 x^2 -\dfrac{1}{2}x -\dfrac{1}{2} \geq 0 12x1-\dfrac{1}{2} \leq x \leq 1x212x120 x^2 -\dfrac{1}{2}x -\dfrac{1}{2} \leq 0 よって, 11x212x12dx=112(x212x12)dx+121(x2+12x+12)dx=[13x314x212x]112+[13x3+14x2+12x]121=(748(112))+(512(748))=1924 \begin{aligned} &\int_{-1}^1 \left|x^2 - \dfrac{1}{2}x - \dfrac{1}{2}\right|dx\\ &= \int_{-1}^{-\frac{1}{2}} \left(x^2 - \dfrac{1}{2}x - \dfrac{1}{2}\right)dx + \int_{-\frac{1}{2}}^{1} \left(-x^2 + \dfrac{1}{2}x + \dfrac{1}{2}\right)dx\\ &= \left[\dfrac{1}{3}x^3 -\dfrac{1}{4}x^2 - \dfrac{1}{2}x\right]_{-1}^{-\frac{1}{2}} + \left[-\dfrac{1}{3}x^3 +\dfrac{1}{4}x^2 +\dfrac{1}{2}x\right]_{-\frac{1}{2}}^{1}\\ &= \left(\dfrac{7}{48} - \left(-\dfrac{1}{12}\right)\right) + \left(\dfrac{5}{12} - \left(-\dfrac{7}{48}\right)\right)\\ &= \dfrac{19}{24} \end{aligned}

ちなみに,絶対値を外した時に出てくる積分の第二項は 16\dfrac{1}{6} 公式(→放物線と直線で囲まれた面積を高速で求める1/6公式)を利用すると早く計算することができます。

計算ミスには十分に注意しましょう。

第三問[確率]

第三問 (30点)

nn22 以上の整数とする。11 から nn までの番号が付いた nn 個の箱があり,それぞれの箱には赤玉と白玉が 11 個ずつ入っている。このとき操作 ()(*)k=1,,n1k = 1, \cdots, n-1 に対して,kk が小さい方から順に 11 回ずつ行う。

()(*) 番号 kk の箱から玉を 11 個取り出し,番号 k+1k + 1 の箱に入れてよくかきまぜる。

一連の操作がすべて終了した後,番号 nn の箱から玉を 11 個取り出し,番号 11 の箱に入れる。このとき番号 11 の箱に赤玉と白玉が 11 個ずつ入っている確率を求めよ。

確率の問題です。nn が問題に出て来ていますので,確率漸化式が使えないか考えます。ただし,単なる確率漸化式では解くことができません。番号 11 の箱から,最初にどちらの玉が取られたかで場合分けしなければならないことに注意しましょう。

第三問

簡単のため,紛れがなければ,番号 NN の箱のことを単に「箱 NN」と呼ぶことにする。

kk から赤玉が取り出される確率を pkp_k で表すことにする。このとき白玉が取り出される確率は 1pk1-p_k である。

k+1  (1kn1)k+1 ~~(1 \leq k \leq n-1) から,玉の取り出しをすることを考える。

kk から赤玉が取られ,箱 k+1k+1 に入れられる確率は pkp_k である。このとき,箱 k+1k+1 の中には,赤玉が 22 個,白玉が 11 個ある。

kk から白玉が取られ,箱 k+1k+1 に入れられる確率は 1pk1-p_k である。このとき,箱 k+1k+1 の中には,赤玉が 11 個,白玉が 22 個ある。

よって,これらにより, pk+1=pk×23+(1pk)×13pk+112=13(pk12)pk12=(13)k1(p112) p_{k+1} = p_k \times \dfrac{2}{3} + (1-p_k) \times \dfrac{1}{3}\\ p_{k+1} - \dfrac{1}{2} = \dfrac{1}{3}\left(p_k - \dfrac{1}{2}\right)\\ \therefore p_k - \dfrac{1}{2} = \left(\dfrac{1}{3}\right)^{k-1}\left(p_1 - \dfrac{1}{2}\right)

(i) 箱 11 から赤が取り出されたときを考える。つまり, p1=1 p_1 = 1 の時である。このとき, pk=12(13)k1+12 p_k = \dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{k-1} + \dfrac{1}{2} これより, pn=12(13)n1+12 p_n = \dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{n-1} + \dfrac{1}{2} 11 に赤,白が 11 個ずつ入っているためには,箱 nn から赤が取り出されればよい。その確率は pn=12(13)n1+12 p_n = \dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{n-1} + \dfrac{1}{2}

(ii) 箱 11 から白が取り出された時を考える。つまり, p1=0 p_1 = 0 の時である。このとき, pk=1212(13)k1 p_k = \dfrac{1}{2} -\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{k-1} これより, pn=1212(13)n1 p_n = \dfrac{1}{2} -\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{n-1} 11 に赤,白が 11 個ずつ入っているためには,箱 nn から白が取り出されればよい。その確率は 1pn=12(13)n1+12 1 - p_n = \dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{n-1} + \dfrac{1}{2}

(i), (ii) により,箱 11 に赤玉と白玉が 11 個ずつ入っている確率は, 12×(12(13)n1+12)+12×(12(13)n1+12)=12(13)n1+12 \begin{aligned} &\dfrac{1}{2} \times \left( \dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{n-1} + \dfrac{1}{2}\right) + \dfrac{1}{2} \times \left( \dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{n-1} + \dfrac{1}{2}\right)\\ &= \dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{n-1} + \dfrac{1}{2} \end{aligned}

ちなみに(ii)は対称性から(i)と答えが同じになるはずなので,ここまで丁寧に議論する必要はないですが,一応載せておきました。

第四問[空間図形・ベクトル]

第四問 (30点)

空間の 88O(0,0,0),A(1,0,0),B(1,2,0),C(0,2,0),D(0,0,3),E(1,0,3),F(1,2,3),G(0,2,3) \begin{aligned} &O(0,0,0), A(1,0,0), B(1,2,0), C(0,2,0),\\ &D(0,0,3), E(1,0,3), F(1,2,3), G(0,2,3) \end{aligned} を頂点とする直方体 OABCDEFGOABC-DEFG を考える。点 OO,点 FF,辺 AEAE 上の点 PP,および辺 CGCG 上の点 QQ44 点が同一平面上にあるとする。このとき,四角形 OPFQOPFQ の面積 SS を最小にするような点 PP および点 QQ の座標を求めよ。また,そのときの SS の値を求めよ。

空間図形の問題です。「4点が同一平面上」にあるというのはベクトルで表すのが最も簡単です。面積の最小値を考えなければならないということを考慮すれば,図形的に考えるよりも,ベクトルを使って数式で処理するのが一番楽でしょう。

面積を求める際には,「面積をベクトルを用いて表した公式→三角形の面積のベクトル・成分を用いた公式」を利用します。

第四問

P(1,0,p),Q(0,2,q)P(1,0,p), Q(0,2,q) とおく。ここで, 0p3,  0q3 0 \leq p \leq 3, ~~ 0 \leq q \leq 3 を満たす。このとき,FF は面 OAQOAQ 上にあることから,実数 a,ba,b を用いて OFundefined=aOPundefined+bOQundefined \overrightarrow{OF} = a\overrightarrow{OP} + b\overrightarrow{OQ} とかける。 (123)=a(10p)+b(02q) \begin{aligned} \left( \begin{array}{c} 1\\ 2\\ 3 \end{array} \right) &=a\left( \begin{array}{c} 1\\ 0\\ p \end{array} \right) +b\left( \begin{array}{c} 0\\ 2\\ q \end{array} \right)\\ \end{aligned} {a=1b=1p+q=3 \therefore \begin{cases} a = 1\\ b = 1\\ p + q = 3 \end{cases}

これより, OFundefined=OPundefined+OQundefined \overrightarrow{OF} = \overrightarrow{OP} + \overrightarrow{OQ} であるから,四角形 OPFQOPFQ は平行四辺形である。よって, S=OPundefined2OQundefined2(OPundefinedOQundefined)2=(1+p2)(4+q2)(pq)2=4p2+q2+4 \begin{aligned} S &= \sqrt{\|\overrightarrow{OP}\|^2 \|\overrightarrow{OQ}\|^2 - \left(\overrightarrow{OP}\cdot\overrightarrow{OQ}\right)^2}\\ &= \sqrt{(1+p^2)(4+q^2) - (pq)^2}\\ &= \sqrt{4p^2 + q^2 + 4} \end{aligned} q=3pq = 3-p を代入して, S=4p2+p26p+9+4=5p26p+13=5(p35)2+565 \begin{aligned} S &= \sqrt{4p^2 + p^2 -6p + 9 + 4}\\ &= \sqrt{5p^2 -6p + 13}\\ &= \sqrt{5\left(p-\dfrac{3}{5}\right)^2 + \dfrac{56}{5}} \end{aligned} 0p30 \leq p \leq 3 より,p=35, q=125p = \dfrac{3}{5}, ~q = \dfrac{12}{5} のとき,SS は最小値をとる。よって, P(1,0,35),  Q(0,2,125) P\left(1,0,\dfrac{3}{5}\right), ~~ Q\left(0,2,\dfrac{12}{5}\right) のとき,SS は最小値 S=565=2705 S = \sqrt{\dfrac{56}{5}} = \dfrac{2\sqrt{70}}{5} をとる。

第五問[整数]

第五問 (30点)

pp が素数ならば p4+14p^4 + 14 は素数でないことを示せ。

pp が素数という条件をどのように生かすか迷うかもしれません。とりあえず,p4+14p^4 + 14 がどんな数になるのか具体的に数を代入して実験してみます。

p=2p = 2 のとき,p4+14=30p^4 + 14 = 30p=3p = 3 のとき,p4+14=95p^4 + 14 = 95p=5p = 5 のとき,p4+14=639p^4 + 14 = 639p=7p = 7 のとき,p4+14=2415p^4 + 14 = 2415・・・となります。

p3p \neq 3 なる素数 pp を代入した時は,p4+14p^4 + 1433 の倍数になっていることが予想されます。このことを利用して解答を作成してみます。

第五問

以下合同式において 33 を法として考える。

(i) p=3p = 3 のとき p4+14=95=195p^4 + 14 = 95 = 19 \cdot 5 より,p4+14p^4 + 14 は素数ではない。

(ii) p3p \neq 3 のとき

pp は素数なので,33 の倍数ではない。つまり, p1   または   p2 p \equiv 1 ~~~\text{または} ~~~ p \equiv 2 である。

p1p \equiv 1 のとき, p4+141+140 \begin{aligned} p^4 + 14 &\equiv 1 + 14\\ &\equiv 0 \end{aligned} より,p4+14p^4 + 1433 の倍数であって,もちろん p4+14>3p^4 + 14 > 3 であるから,これは素数ではない。

p2p \equiv 2 のとき, p4+1416+140 \begin{aligned} p^4 + 14 &\equiv 16 + 14\\ &\equiv 0 \end{aligned} より,p4+14p^4 + 1433 の倍数であって,もちろん p4+14>3p^4 + 14 > 3 であるから,これは素数ではない。

(i),(ii)より,題意は示された。

ちなみに,合同式において 55 を法として考えても,同様に示すことができます。実験の段階で,55 の倍数であることの方が見えやすいので,こちらで解いた人も多いかもしれませんね(私も最初に 55 を法とするやり方を思いつきました)。

京大文系数学2021二次試験入試問題まとめ

とても基本的で,難易度の低い問題が多かったです。教科書レベルの問題を深く理解して解けるようになること,また計算ミスをしないことがとても重要になります。

第一問の問1は,nn 進法の分野からの出題でした。定義を覚えていれば詰まる部分は全くなかったと思います。問2もとても基本的です。ベクトルは「垂直」であることを表すのが得意であることを知っていれば,難なく解けたでしょう。

第二問は定積分の問題です。絶対値が入っているので一瞬厄介に見えるかもしれませんが,変数もないので丁寧に場合わけすればあとはただの計算です。

第三問は確率の問題です。確率漸化式をどのようにおくかが肝になってきます。

第四問は空間図形の問題でした。点が同一平面上にあることはベクトルで簡単に表すことができます。

第五問は整数の問題です。この中では一番難しかったと思います。ただ,設定はとてもシンプルであり,具体的な数を代入してみれば方針がすぐたてられたのではないでしょうか。

京大を受験される方は,理系文系問わず,基本的なことを真面目に丁寧に勉強していきましょう。