数列の発散,収束,振動の意味と具体例
数列の極限は,
- (有限の値に)収束する
- 正の無限大に発散する/負の無限大に発散する
- 振動する
のいずれかである。2と3の場合をいずれも発散すると言う。
最初に発散,収束,振動の意味をそれぞれ説明し,後半で具体例をいろいろ紹介します。
数列の極限の分類
数列の極限の分類
-
収束とは:
項が進むにつれて一定の値 に限りなく近づくとき,数列 は に「収束する」と言います。 と書きます。 -
発散とは:
収束しない数列をまとめて発散すると言います。 -
発散の中でさらに分類:
- 発散する数列の中でも,項が進むにつれていくらでも値が大きくなるとき,「正の無限大に発散する」と言います(注)。 と書きます。
- 同様に,項が進むにつれていくらでも値が小さくなるとき,「負の無限大に発散する」と言います。 と書きます。
- ここまでのいずれにも当てはまらないような数列をまとめて「振動する」と言います。
注:「正の無限大に発散」の定義を厳密に言うと,
「任意の実数
に対して,ある
が存在して,
なら
」です。
収束する数列の例
収束する数列の例
数列 の極限を調べよ。
が大きくなるにつれて は にいくらでも近づくので
つまり に収束する。
数列 の極限を調べよ。
実は は に収束することが知られている。収束することの証明は比較的簡単だが, に収束することの証明はかなり大変。→バーゼル問題の初等的な証明
発散する数列の例
発散する数列の例
数列 の極限を調べよ。
が大きくなるにつれて はいくらでも小さくなるので
(負の無限大に発散する)
数列 の極限を調べよ。
数列 の極限を調べよ。
は と をひたすら交互に繰り返す。収束・正の無限大に発散・負の無限大に発散,のいずれにも当てはまらないので振動する。
注意
注意
- 「いくらでも大きくなる」ときに「正の無限大に発散する」と書かずに単に「発散する」と言うこともあるので注意してください。(「発散」と言うと振動も含む広い意味での「発散」なのか「正の無限大に発散」を省略したのか文脈によって判断する必要がある)。
- 「限りなく近づく」とか「いくらでも値が大きくなる」という表現は数学的に厳密ではありません。そこで,大学できちんと数列の極限を定義するときには 論法( 論法とも)というものを用います。
→イプシロンデルタ論法とイプシロンエヌ論法
ただ,高校数学,大学受験の範囲では上記の(少しあいまいな?)定義を理解しておけば全く問題ありません。
振動は「バネのようなイメージ」と覚えるのではなくて「極限が定まらないもの」という消去法的な定義であることを理解しておきましょう。