方程式と恒等式の違い

更新日時 2021/03/07

混同しがちな恒等式と方程式について,具体例を交えつつ解説します。

目次
  • 方程式と恒等式の定義

  • 恒等式の例

  • 方程式の例

  • 恒等式と方程式の分類について

  • よくある間違い

方程式と恒等式の定義

恒等式:

恒等式とは「変数がどのような値のときにも成立する等式」のことです。

方程式:

ある変数についての等式に対して,「変数がどの値のときに成り立つか?」を求めることを「方程式を解く」と言います。「方程式を解く」対象の等式のことを方程式と呼びます。

これだけでは分かりにくいので,以下ではとにかくたくさんの例を通じて違いを理解していきます。

恒等式の例

恒等式は「変数がどのような値のときにも成立する等式」なので,「公式」と呼ばれる等式はほとんど恒等式です。

  • 展開公式:(a+b)2=a2+2ab+b2(a+b)^2=a^2+2ab+b^2a,ba,\:b がどのような値のときにも成立します。)

  • 因数分解公式:x3y3=(xy)(x2+xy+y2)x^3-y^3=(x-y)(x^2+xy+y^2)

  • 三角関数の関係式:sin2θ+cos2θ=1\sin^2\theta+\cos^2\theta=1

  • 対数の公式:logxy=logx+logy\log xy=\log x+\log y

  • オイラーの公式(発展):eiθ=cosθ+isinθe^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta→複素指数関数とオイラーの公式

有名な公式がたくさん並んでいます。このように,恒等式は「公式,解法の道具」とみなすこともできます。

ちなみに「どのような値のときにも」というのは,「考えている範囲内で どのようなときにも」という意味です。例えば「実数全体で」「 0θ2π0\leq\theta\leq 2\pi で」常に成立する等式,という感じです。

条件式があるもとで必ず成立する等式も「 考えている範囲内で どんなときにも成立する等式」なので恒等式の仲間になります。

a+b+c=1a+b+c=1 のもとで,a3+b3+c33abc=a2+b2+c2abbccaa^3+b^3+c^3-3abc=a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca

方程式の例

「変数がどの値のときに成り立つか?」を求めることを「方程式を解く」と言います。

  • 1次方程式:2x1=x2x-1=x

xx がどの値のときに成り立つか?」を求めることを「方程式を解く」と言います。この方程式を解くと,x=1x=1 となります。

  • 解のない1次方程式:x+1=xx+1=x

この方程式を解くと,「解無し」となります。解がなくても「xx がどの値のときに成り立つか?」を求めることを「方程式を解く」と言います。

  • 5次方程式 x5+3x+1=0x^5+3x+1=0

解くことができなくても方程式です。

  • 関数方程式(発展):f(x+y)=f(x)+f(y)f(x+y)=f(x)+f(y)

条件を満たす関数を求める,つまり「解く」問題です。→コーシーの関数方程式の解法と応用

このように 方程式は「解く」ことのできる(または解きたい)等式と言うこともできます。

恒等式と方程式の分類について

「すべての等式は,恒等式か方程式かのどちらかに分類できる」というのは間違いです。例えば,

  • 2x+x=3x2x+x=3x という等式は, 「どのような xx についても成り立つ式」なので恒等式と言えます。 一方「xx がどの値のときに成り立つか?」を求める対象とみなした場合は方程式です。(実際,そのような見方をするケースは無い気もしますが,「方程式では無く恒等式だ!」と言い切ることはできません。)

  • (解釈が分かれますが)「1+2+3=61+2+3=6」などの変数が現れない等式は恒等式とも方程式とも言わないと思います。(どちらかというと恒等式っぽいですが)

よくある間違い

方程式は「解く」のがメインテーマです。恒等式は変数がどんな値でも成立する等式なので 「恒等式を解く」というのは意味不明な表現です。(恒等式は「証明する」のがメインテーマになります。)

「恒等式の証明問題」と「方程式を解く問題」を混同してしまう人が多いのでご注意ください。

不等式に関しても同様なことが言えます。

つまり, 「絶対不等式(常に成り立つ不等式)」と「解くべき不等式」を区別して考える必要があります。

絶対不等式の証明問題でその不等式を「解く」というのは意味のないことです。

当サイトでは「不等式を解く問題」よりも「絶対不等式を証明する問題」のテクニックをたくさん取り扱っております。