交代式の因数分解と実践的な例題
更新
交代式とは,どの2つの変数を入れ替えても 倍になるような式のことです。例えば という式は, と を入れ替えると となり,元の式の 倍になるので交代式です。
交代式の意味と,交代式を活用した因数分解の方法について解説します。
対称式と交代式
対称式と交代式
対称式と交代式はセットで覚えましょう。
対称式とは,どの2つの変数を入れ替えても元の値と変わらない式のことです。例えば という式は, と を入れ替えると となり,元の式と同じなので対称式です。
交代式とは,どの2つの変数を入れ替えても 倍になるような式のことです。例えば という式は, と を入れ替えると となり,元の式の 倍になるので交代式です。このページでは,多項式の交代式について考えます。
2変数の交代式の因数分解
2変数の交代式の因数分解
2変数 の交代式は, を因数に持つ。
例えば,多項式 の因数分解について考えましょう。この式は, と を交換すると となり,元の式の 倍になるので交代式です。よって, を因数に持ちます。
実際,
などと因数分解できます。 →因数分解公式(n乗の差,和)
3変数の場合の交代式
3変数の場合の交代式
2変数の場合よりも3変数の因数分解が頻出です。 のどの2変数を入れ替えても値がマイナス1倍になるとき, を3変数の交代式と言います。
3変数の交代式 は と因数分解できる。さらに, は対称式である。
の因数分解を考える。この多項式は,どの2変数を交換しても値がマイナス1倍されるので交代式である。
よって, と因数分解できるが, は 次の対称式(=定数)であり, の係数を比較することによって であることが分かる:
→高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~のT64では,この例題の3通りの解法を紹介しています。
次は4次式の例です。
の因数分解を考える。この多項式は,どの2変数を交換しても値がマイナス1倍されるので交代式である。
よって, と因数分解できるが, は 次の対称式であり, の係数を比較することによって であることが分かる:
定理1の証明
定理1の証明
2変数の交代式 が, を因数に持つことを証明します。定理1の証明には,因数定理を使います。
は交代式なので,
より, である。
次に, を の1変数関数 と見て因数定理を用いる。すると,
なので因数定理から は で割り切れる。
ちなみに,3変数以上の場合についても,因数定理を使って同様に証明できます。
難しい例題
難しい例題
以下の例はシュタイナーレームスの定理の証明中に出てくるゴツイ方程式です。
方程式
を解く。これは という形の方程式になっている。左辺に集めると という形になり,左辺は交代式である。よって を因数に持つことが分かる。
方程式を見た時に が解の1つになっていることに気づかないと4次式のゴツさに根負けしまいます。
交代式は,対称式よりはずいぶんとマイナーですが覚えておきましょう。