ヘビサイドの展開定理

ヘビサイドの展開定理について解説します。前半は部分分数分解の一般形・係数の求め方(頑張れば高校生でも理解可能),後半は逆ラプラス変換(大学数学)の話です。

部分分数分解の一般形

まず,有理関数 P(x)Q(x)\dfrac{P(x)}{Q(x)} の部分分数分解について考えます。

P(x),Q(x)P(x),Q(x) は xx の実数係数多項式で,QQ の次数 > PP の次数,とします。

Q(x)=(x−x1)n1(x−x2)n2⋯(x−xk)nkQ(x)=(x-x_1)^{n_1}(x-x_2)^{n_2}\cdots (x-x_k)^{n_k} と因数分解できるとします。ただし,x1,x2,⋯ ,xkx_1,x_2,\cdots,x_k は相異なる複素数です。

定理1

定数 aij (1≤i≤k,1≤j≤ni)a_{ij}\:(1\leq i\leq k,1\leq j\leq n_i) をうまく選べば

P(x)Q(x)=∑i=1k∑j=1niaij(x−xi)j\dfrac{P(x)}{Q(x)}=\displaystyle\sum_{i=1}^k\sum_{j=1}^{n_i}\dfrac{a_{ij}}{(x-x_i)^j}

例えば,P(x)(x−x1)3(x−x2)\dfrac{P(x)}{(x-x_1)^3(x-x_2)} (P(x)P(x) は三次以下の多項式)は,1(x−x1)\dfrac{1}{(x-x_1)},1(x−x1)2\dfrac{1}{(x-x_1)^2},1(x−x1)3\dfrac{1}{(x-x_1)^3},1(x−x2)\dfrac{1}{(x-x_2)} の定数倍の和で表現できるということです。

定理1の証明はかなり大変なので省略します。

ヘビサイドのcover-up method

部分分数分解の係数 aija_{ij} を明示的に表す公式です。

定理2

定理1において apq=1(np−q)!lim⁡x→xpdnp−qdxnp−q{(x−xp)npP(x)Q(x)}a_{pq}=\dfrac{1}{(n_p-q)!}\displaystyle\lim_{x\to x_p}\dfrac{d^{n_p-q}}{dx^{n_p-q}}\left\{(x-x_p)^{n_p}\dfrac{P(x)}{Q(x)}\right\}

見た目はゴツイですが考え方は難しくありません。必要な項以外全て消えるように (x−xp)np(x-x_p)^{n_p} をかけて np−qn_p-q 回微分します。

定理1を認めた上で定理2を証明

定理1の式で両辺に (x−xp)np(x-x_p)^{n_p} をかけて i=pi=p の場合だけ別の項にすると,

(x−xp)npP(x)Q(x)=(x−xp)np∑i≠p∑j=1niaij(x−xi)j+∑j=1npapj(x−xp)np−j(x-x_p)^{n_p}\dfrac{P(x)}{Q(x)}\\ =(x-x_p)^{n_p}\displaystyle\sum_{i\neq p}\sum_{j=1}^{n_i}\dfrac{a_{ij}}{(x-x_i)^j}+\sum_{j=1}^{n_p}a_{pj}(x-x_p)^{n_p-j}

この右辺について np−qn_p-q 回微分して x=xpx=x_p を代入すると,

第一項は (x−xp)j(x-x_p)^j が残り 00 となり,第二項は j=qj=q のみの項が残るので,(np−q)!apq(n_p-q)!a_{pq} となる。

つまり,(np−q)!apq=lim⁡x→xpdnp−qdxnp−q{(x−xp)npP(x)Q(x)}(n_p-q)!a_{pq}=\displaystyle\lim_{x\to x_p}\dfrac{d^{n_p-q}}{dx^{n_p-q}}\left\{(x-x_p)^{n_p}\dfrac{P(x)}{Q(x)}\right\}

ヘビサイドの展開定理

ラプラス変換の話です。

定理3(ヘビサイドの展開定理)

有理関数の逆ラプラス変換は(分母が因数分解されていれば)必ず計算できる。

逆ラプラス変換の一般式は複雑なので覚える必要はありません(ここでも書きません)。

有理関数の逆ラプラス変換は必ず以下の手順で計算できるということを覚えておくのが大事です。

  1. 定理1,2を用いて有理関数を部分分数分解

  2. apq(s−sp)q\dfrac{a_{pq}}{(s-s_p)^q} の逆ラプラス変換が apqtq−1(q−1)!espt\dfrac{a_{pq}t^{q-1}}{(q-1)!}e^{s_pt} であることを使って各項を逆ラプラス変換

定理1の証明はそれなりに大変です(読者の方に教えていただきました)。考えてみてください!