対称式の基本定理の証明
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対称式は基本対称式の多項式として表せる。その表し方は一通りである。
対称式,基本対称式
対称式,基本対称式
- 対称式とは,変数を入れかえても形が変わらない多項式のことです。
- 基本対称式 とは「全ての変数から 個選んでかけ合わせたものを足しあわせたもの」です。基本対称式は対称式です。→三次,四次,n次方程式の解と係数の関係とその証明
対称式の基本定理の例
対称式の基本定理の例
二変数の場合:
についての基本対称式は , です。対称式の基本定理によると,「 についての対称式はどんなものでも,必ず と の多項式として表せる」ことが分かります。
例えば,
という感じです。 →2変数の対称式と基本対称式の4つの性質
三変数の場合:
についての対称式は , , の多項式として表せます。
高校数学では三変数の場合まで覚えておけば十分でしょう。
辞書式順序
辞書式順序
対称式の基本定理の証明の準備です。二つの単項式について以下のような強さの関係(辞書式順序)を考えます。
- の次数が大きい方が強い
- の次数が同じなら の次数が大きい方が強い
- それも同じなら の次数が大きい方が強い
- 以下同様
例えば の方が よりも強いです。
対称式の基本定理の証明
対称式の基本定理の証明
変数の対称式 が基本対称式
で表せることを証明します。
次の項のみの対称式 が基本対称式で表せることを証明すればよい(一般の対称式は 次の項のみの対称式,と書ける)。
の中で一番強い項を とする。 は対称式なので である。
ここで,以下のようにうまく基本対称式をかけ合わせることで,一番強い項を作り出せる(→注)
そして,この式には よりも強い項は登場しない。
よって, は より一番強い項が真に弱い多項式である。
また,この操作で「 次の項のみの対称式」という性質は保たれる。よって,この操作を繰り返すといつかは必ずゼロになる。
つまり, から「基本対称式で表される多項式」を有限回引くことでゼロになるので, は基本対称式で表せる。
注:例えば を作り出すためには,
とすればOKです。
注2:「基本対称式で表せる」ことの証明ができてしまえば「その表し方が一通りである」ことの証明も同様にできます。具体的には, の中で一番強い項を とすると, を基本対称式の多項式で表すためには を使う必要があることを証明します。
対称式の基本定理を知っている高校生は多いと思いますが,証明できる人はかなり少ないと思います。