ヴィエトの無限積の公式

オイラーの公式

n=1cos(x2n)=cosx2cosx4cosx8=sinxx\displaystyle\prod_{n=1}^{\infty}\cos\left(\dfrac{x}{2^n}\right)=\cos\dfrac{x}{2}\cos\dfrac{x}{4}\cos\dfrac{x}{8}\cdots=\dfrac{\sin x}{x}

  • 導出方法が非常におもしろい関係式です。
  • 北大の入試問題で関連する話題があります(→ロジスティック写像と漸化式の最後の方)。他にも関連する入試問題があるようです。

オイラーの公式の証明

方針

サインの倍角公式を繰り返し用いるだけです。

証明

sinx=2sinx2cosx2=22sinx22cosx2cosx22==2nsinx2n(k=1ncosx2k)\sin x=2\sin\dfrac{x}{2}\cos\dfrac{x}{2}\\ =2^2\sin\dfrac{x}{2^2}\cos\dfrac{x}{2}\cos\dfrac{x}{2^2}\\ =\cdots\\ =2^n\sin\dfrac{x}{2^n}(\displaystyle\prod_{k=1}^{n}\cos\dfrac{x}{2^k})

ここで,

limn2nsinx2n=xlimn2nxsinx2n=x\displaystyle\lim_{n\to\infty}2^n\sin\dfrac{x}{2^n}\\ \displaystyle=x\lim_{n\to\infty}\dfrac{2^n}{x}\sin\dfrac{x}{2^n}\\ =x

なので,上記の式で nn\to\infty として,オイラーの公式を得る:

n=1cos(x2n)=sinxx\displaystyle\prod_{n=1}^{\infty}\cos\left(\dfrac{x}{2^n}\right)=\dfrac{\sin x}{x}

コサインを無限にかけ算したら,応用上重要なsinc関数が出現するというのは驚きです。この公式の応用例として,円周率を近似するヴィエトの公式を導けます。

ヴィエトの公式

ヴィエトの公式

2π=222+222+2+22\dfrac{2}{\pi}=\dfrac{\sqrt{2}}{2}\dfrac{\sqrt{2+\sqrt{2}}}{2}\dfrac{\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2}}}}{2}\cdots

ヴィエトの公式の導出

オイラーの公式で x=π2x=\dfrac{\pi}{2} を代入するとヴィエト(Viete,ビエト)の公式が得られる。

cosπ2n\cos\dfrac{\pi}{2^n} の値を求める必要があるが,それは半角の公式 cosx2=2+2cosx2\cos\dfrac{x}{2}=\dfrac{\sqrt{2+2\cos x}}{2} を使って順次求めることができ,上記のような式が得られることが分かる。

ヴィエトの公式は円周率の近似式になっています。収束が遅いので実用的ではありませんが…。

モーリーの法則

オイラーの公式と関連する,おもしろい三角関数の等式を紹介します。

モーリーの法則

cos20cos40cos80=18\cos 20^{\circ}\cos 40^{\circ} \cos 80^{\circ}=\dfrac{1}{8}

オイラーの公式とほぼ同じような計算で証明できます。

証明

サインの倍角公式より,

sin160=2sin80cos80=22sin40cos40cos80=23sin20cos20cos40cos80\sin 160^{\circ}=2\sin 80^{\circ}\cos 80^{\circ}\\ =2^2\sin 40^{\circ}\cos 40^{\circ}\cos 80^{\circ}\\ =2^3\sin 20^{\circ}\cos 20^{\circ}\cos 40^{\circ}\cos 80^{\circ}

これと,sin160=sin20\sin 160^{\circ}=\sin 20^{\circ} からモーリーの法則がわかる。

実用的でない公式でもいろいろな証明方法を学ぶのは大事ですし,何より美しいので紹介しました。

Tag:オイラーの公式・定理まとめ

Tag:無限和,無限積の美しい公式まとめ