ルジャンドル変換の意味と具体例
関数 に対して で定義される関数 を のルジャンドル変換と言う。
ルジャンドル変換について具体例,幾何学的な意味などを解説します。
ルジャンドル変換とは
ルジャンドル変換とは
- ルジャンドル変換(Legendre transformation)とは,関数 から別の関数 を作りだす操作です。
- ルジャンドル変換は解析力学,熱力学,最適化理論などの分野で用いられます。応用の文脈では 側の変数と 側の変数は違う意味を持つ量なので,この記事では 側の変数は文字 , 側の変数は文字 を使います。
- なお, が存在しないこともあるので厳密な議論が必要なときは を用いるべきです(今回は大雑把な説明が目標なので を使います)。→sup(上限)とinfの意味,maxとの違い
具体例
具体例
二次関数 をルジャンドル変換せよ。
である。
カッコの中身は より,
つまり原点を頂点とする放物線のルジャンドル変換は,原点を頂点とする放物線です。
また, をもう一度ルジャンドル変換すると に戻ることが確認できます。これは偶然ではなく 一般に,下に凸な関数 に対して2回ルジャンドル変換を施すと元に戻ります。
図形的な意味
図形的な意味
ここから先は が下に凸な場合を考えます(注)。→上に凸,下に凸な関数と二階微分
のルジャンドル変換 は,傾き の直線で と交わるものの中で一番下側にあるものの切片(にマイナスをつけたもの)という意味を持ちます。
傾き の直線で と交わるものの中で一番下側にあるものの切片を とおく。すると,
である。
これを移項すると となる。
つまり,ルジャンドル変換は同じ曲線を
座標, 座標: で表現する代わりに
接線の傾き,切片: で表現したもの
とみなせます。
注:ルジャンドル変換の対象として下に凸な関数を扱うことが多いです。 が下に凸でなくてもルジャンドル変換は定義できますが,その場合「2回施すと元に戻る」などの嬉しい性質は成り立ちません。
微分を用いたルジャンドル変換の表現
微分を用いたルジャンドル変換の表現
がルジャンドル変換の定義でした。
は下に凸なので,多くの場合(→補足),右辺の が最大となるのは,微分係数が となる点です。つまり, となる点で最大となります。つまり以下が成立します:
ただし, は を満たすもの。
これをルジャンドル変換の定義としている教科書も多いので注意が必要です。
補足:例えば, が 級で となる が存在するならばOKです。
理系に進む人はきっと大学のどこかで出会う変換です。