オイラー線の3通りの証明

オイラー線

オイラー線

任意の三角形において,外心を OO,重心を GG,垂心を HH とおくとき, O,G,HO, G, H は一直線上にあり,OG:GH=1:2OG:GH=1:2

美しい定理です。この直線をオイラー線といいます。

オイラー線の存在を3通りの方法で証明します。

  • 方法1:初等幾何を用いた証明
  • 方法2:ベクトルを用いた証明
  • 方法3:三角関数のゴリ押し計算で証明

証明の途中で,外心・重心・垂心の性質は既知として使うので,分からないところがあれば三角形の五心の覚えておくべき性質まとめを参考にしてください。

初等幾何によるオイラー線の証明

方針

三角形の相似を用います。OG:GH=1:2OG:GH=1:2 ということで,1:21:2 という比率から重心が中線を 2:12:1 に内分することが連想できればあとは簡単です。

オイラー線の証明

BCBC の中点を MM とおくと,AHAHOMOMBCBC と垂直なので,AH/ ⁣/OMAH\:/ \! /\:OM

また,AH=2OMAH=2OM(→補足)

よって,AMAMOHOH の交点を GG とおくと,三角形 AHGAHGMOGMOG は相似で相似比は 2:12:1。よって HG:GO=2:1HG:GO=2:1 であり,GG は線分 AMAM2:12:1 に内分するので重心であることが分かる。

補足:
AH=2OMAH=2OM はいろいろな方法で導けます。例えば OM=OCcosCOM=RcosAOM=OC\cos \angle COM=R\cos A であることと,垂心の性質より AH=2RcosAAH=2R\cos A であることからわかります)

ベクトルを用いたオイラー線の証明

方針

外心・重心・垂心はベクトルで比較的扱いやすいです。外心を始点にするとうまくいくことが多いので試してみます。

3OGundefinedOHundefined=0undefined3\overrightarrow{OG}-\overrightarrow{OH}=\overrightarrow{0} を示せばよい。

まず,(3OGundefinedOHundefined)ABundefined=0(3\overrightarrow{OG}-\overrightarrow{OH})\cdot \overrightarrow{AB}=0 を示す。

(3OGundefinedOHundefined)ABundefined=(OAundefined+OBundefined+HCundefined)(ABundefined)=(OAundefined+OBundefined)(OBundefinedOAundefined)=OBundefined2OAundefined2=0\begin{aligned} &(3\overrightarrow{OG}-\overrightarrow{OH})\cdot \overrightarrow{AB}\\ &=(\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{OB}+\overrightarrow{HC})\cdot(\overrightarrow{AB})\\ &=(\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{OB})\cdot(\overrightarrow{OB}-\overrightarrow{OA})\\ &=|\overrightarrow{OB}|^2-|\overrightarrow{OA}|^2\\ &=0 \end{aligned}

ここで,2行目から3行目への変形は垂心の定義から ABHCAB\perp HC であることを用いた。

よって,(3OGundefinedOHundefined)(3\overrightarrow{OG}-\overrightarrow{OH})ABundefined\overrightarrow{AB} と直交する。

ところが,全く同様にして (3OGundefinedOHundefined)(3\overrightarrow{OG}-\overrightarrow{OH})BCundefined\overrightarrow{BC} とも直交することが示せる。このようなベクトルは 00 ベクトルしか存在しないので,3OGundefinedOHundefined=0undefined3\overrightarrow{OG}-\overrightarrow{OH}=\overrightarrow{0} が示された。

三角関数のゴリ押し計算でオイラー線の証明

方針

外心・重心・垂心の位置ベクトルは簡単に表せる(詳しくは三角形の五心の覚えておくべき性質)ので気合で計算します。重心が一番簡単な式なので,GHundefined+2GOundefined=0undefined\overrightarrow{GH}+\overrightarrow{2GO}=\overrightarrow{0} を示します。

GHundefined+2GOundefined=[tanAtanA+tanB+tanC13+2(sin2Asin2A+sin2B+sin2C13)]aundefined\begin{aligned} &\overrightarrow{GH}+\overrightarrow{2GO}\\ &= \left[\dfrac{\tan A}{\tan A+\tan B+\tan C}-\dfrac{1}{3} \right. \\ & \quad \quad \left. + 2\left(\dfrac{\sin 2A}{\sin 2A+\sin 2B+\sin 2C}-\dfrac{1}{3}\right)\right] \overrightarrow{a} \end{aligned}

+bundefined+\overrightarrow{b} の項 +cundefined+\overrightarrow{c} の項

対称性より,aundefined\overrightarrow{a} の係数が 00 であることを示せば十分。

分母が和の形をしていて計算しにくいので,積に直す:

  • tanA+tanB+tanC=tanAtanBtanC\tan A+\tan B+\tan C=\tan A\tan B\tan C
  • sin2A+sin2B+sin2C=4sinAsinBsinC\sin 2A+\sin 2B+\sin 2C=4\sin A\sin B\sin C

1つめは,タンジェントの美しい関係式そのもの。2つめは,三角形の内角における和積公式の手法を用いて簡単に導ける。

以上から,aundefined\overrightarrow{a} の係数は,

1tanBtanC+4sinAcosA4sinAsinBsinC1=cosBcosC+cosAsinBsinC1=cosBcosCcos(B+C)sinBsinCsinBsinC=0\begin{aligned} &\dfrac{1}{\tan B\tan C}+\dfrac{4\sin A\cos A}{4\sin A\sin B\sin C}-1\\ &=\dfrac{\cos B\cos C+\cos A}{\sin B\sin C}-1\\ &=\dfrac{\cos B\cos C-\cos (B+C)-\sin B\sin C}{\sin B\sin C}\\ &=0 \end{aligned}

一見複雑ですが,3つの角の和積・積和変換は定石なので,ほぼ機械的な計算で証明できます。3つの方法の中で最も予備知識が必要ですが,そのぶん最も発想力が必要ない証明です。

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「天才的な発想力がなくてもそれなりに頑張れる」ための有力な知識を提供したいです。

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