3次関数の極大値と極小値の差をすばやく計算するテクニック

極大と極小の差

3次関数の極大値と極小値の差は 16\dfrac{1}{6} 公式を使って高速に計算できる。

極大と極小の差についての定理

定理

f(x)=ax3+bx2+cx+df(x)=ax^3+bx^2+cx+d が極大値と極小値を持つとき,その差は a(βα)32\dfrac{|a|(\beta-\alpha)^3}{2} である。ただし,α,β(α<β)\alpha,\beta\:(\alpha<\beta)f(x)=0f'(x)=0 の解。

極大と極小の差を表す式に b,c,db,c,d は現れません!

定理の証明

極大値と極小値の差は

f(α)f(β)=αβf(x)dx=αβ3a(xα)(xβ)dx=a2βα3\begin{aligned}&|f(\alpha)-f(\beta)|\\ &=\left|\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta}f'(x)dx\right|\\ &=\left|\displaystyle\int_{\alpha}^{\beta}3a(x-\alpha)(x-\beta)dx\right|\\ &=\dfrac{|a|}{2}|\beta-\alpha|^3\end{aligned}

ただし,最後の等号は 16\dfrac{1}{6} 公式を使った。→放物線と直線で囲まれた面積を高速で求める1/6公式

1つめの等号がおもしろいですね。

簡単な例題

例題

f(x)=x3+3x29x+1f(x)=x^3+3x^2-9x+1 の極大値と極小値の差を計算せよ。

解答

f(x)=3x2+6x9=3(x+3)(x1)f'(x)=3x^2+6x-9=3(x+3)(x-1)

より,α=3,β=1\alpha=-3,\beta=1 が極大と極小を与える。公式より

f(β)f(α)=12×43=32f(\beta)-f(\alpha)=\dfrac{1}{2}\times 4^3=32

別解(定理を使わない方法)

この程度なら普通に計算できる。

f(1)=1+39+1=4f(1)=1+3-9+1=-4

f(3)=27+27+27+1=28f(-3)=-27+27+27+1=28 よりその差は 3232

このように,簡単な問題でも検算に使えます。

東大の問題

より難しい問題です。定理を使うと計算を大幅に減らせます。

東大1998年理系第一問です。

問題

aa00 でない実数とする。 f(x)=(3x24)(xa+1a)f(x)=(3x^2-4)\left(x-a+\dfrac{1}{a}\right) の極大値と極小値の差が最小となる aa を求めよ。

解答

f(x)=9x2+6x(1aa)4f'(x)=9x^2+6x\left(\dfrac{1}{a}-a\right)-4

この判別式を DD とおくと

D2=9(1aa)2+36>0\dfrac{D}{2}=9\left(\dfrac{1}{a}-a\right)^2+36>0 より,f(x)=0f'(x)=0 は実数解 α,β(α<β)\alpha,\beta\:(\alpha<\beta) を持つ。

定理より,極大と極小の差が最小になるのは (βα)(\beta-\alpha) が最小になるとき。

また,解と係数の関係より α+β=23(1aa),αβ=49\alpha+\beta=-\dfrac{2}{3}\left(\dfrac{1}{a}-a\right),\alpha\beta=-\dfrac{4}{9}

なので,

(βα)2=(α+β)24αβ=49(1a2+a22+4)(\beta-\alpha)^2=(\alpha+\beta)^2-4\alpha\beta\\ =\dfrac{4}{9}\left(\dfrac{1}{a^2}+a^2-2+4\right)

これが最小になるのは,相加相乗平均の不等式より a=1aa=\dfrac{1}{a} のとき。つまり a=±1a=\pm 1 のとき。

有名なテクニックのようですが,自分が高校生のときは知りませんでした。

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