岩澤分解
更新
正則な 行列は,回転行列・対角行列・(対角成分が である)上三角行列の積,つまり という形に分解できる。
計算方法
計算方法
- 回転行列と上三角行列の積の形にする。
- 上三角行列の対角成分を取り出す。
ステップ1
まず, 行列 を,回転行列と上三角行列の積で表します。グラム・シュミットの直交化 を使うだけです(知らない人はぜひ上記の記事を確認してください)。
行列を,縦ベクトル2本の集まりとみなし と表します。この2本のベクトルにグラム・シュミットの直交化 を用いると,互いに直交してノルムが のベクトル が得られます。 とおきます。
なので と表せます。
はノルムが で上と直交するため となります。よって となります。
グラム・シュミットの直交化の結果を式で表すと, と表されます。行列で表すと と表現されます。
とおくと です。
よって と が「回転行列」と「上三角行列」の積に分解できました。
Uは正則
グラム・シュミットの直交化により は正則になります。
は正則なので より です。また正則性より と は線型独立なので です。こうして行列式 は になりません。
ステップ2
でした。これは,
となり,「対角行列」と「対角成分が である上三角行列」の積に分解できました。
計算例
計算例
を分解してみます。
ステップ1:シュミット直交化
行列を縦ベクトル2つと見ます。この2つのベクトルにシュミットの直交化をしてみましょう。
です。
となるため, となります。
とおくと, となり のように が計算できます。
こうして のように回転行列と上三角行列の積にできました。
ステップ2:対角成分を取り出す
を という形に分解することを考えます。係数を比較すると がわかります。
となります。
まとめ
以上をまとめると
と分解できました。
一般の岩澤分解
一般の岩澤分解
任意の正則な 行列は,直交行列・対角行列・対角成分が の上三角行列の積で表される。
具体的な分解方法も の場合と同様です。
なお,直交行列は を満たす行列です。大きさが で互い直交するベクトルを並べると直交行列が得られます(詳しくは 直交行列の5つの定義と性質の証明 を確認してください)。
例題
を岩澤分解せよ。
と分解できる。
リー群の言葉を使うと「コンパクト部分群・トーラス・冪零部分群の積に分解される」と表現できます。