整数値多項式の意味と2つの必要十分条件
すべての整数 に対して が整数になる多項式を整数値多項式と言います。
整数値多項式の例と,おもしろい2つの必要十分条件を紹介します。
整数値多項式の例
整数値多項式の例
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係数がすべて整数なら整数値多項式です。例えば, などです。
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係数が整数でなくても整数値多項式になることがあります。例えば, です。実際, が奇数でも偶数でも は の倍数なので は整数になります。
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高校数学の問題集 ~最短で得点力を上げるために~ のT184では,他の例に関する問題と2通りの解答を紹介しています。
整数値多項式の性質
整数値多項式の性質
を 次多項式とする。
ある整数 が存在して が整数なら, は整数値多項式
つまり,すべての整数について調べなくとも連続する 個の整数に対して整数であることを確認すれば十分です。
定理1の証明を2通り紹介します。1つめは次数 に関する帰納法,2つめはラグランジュ補間を使う方法です。
のときは は定数関数なので定理1が成立。
のときに定理が成立すると仮定する。 次多項式 に対して から までが整数とする。
このとき,階差 を考えると,
- から まで整数
- は 次多項式
よって帰納法の仮定より は整数値多項式。階差が整数なので も整数値多項式。
「 点からすべてを決定する」公式であるラグランジュ補間も比較的思いつきやすいです。
補間点を としてラグランジュ補間を使うと,
ただし,
は整数なので が整数であることを示せば十分。これは以下のように計算すればわかる:
- 分母の絶対値は
- が整数のとき,分子の絶対値 は「 から までの積」と「 から までの積」の積。つまり「連続する 個の整数の積」と「連続する 個の整数の積」の積。つまり の倍数である(※)。
※連続する 個の整数の積は の倍数です、→連続するn個の整数の積と二項係数
コンビネーションとの関係
コンビネーションとの関係
さきほどの証明2でも述べましたが,連続する 個の整数の積は の倍数です。よって, は整数値多項式です(コンビネーション を関数にした感じです)。さらに,この重み付き和 も,各 が整数なら整数値多項式です。ただし とします。
実は,整数値多項式は上の形のものに限られます!
次多項式 について,
が整数値多項式
ある整数 が存在して
はさきほど述べたように各 が整数値多項式であることから従う。
を証明する。 に対して を満たすような「実数」 は以下のように求められる:
- 両辺に を代入すると右辺は の項以外が消えるので
- を代入すると
- を代入すると
- 以下同様に まで順々に代入していくと まで求まる。
次多項式は, 点で値が決まったら一意に定まるので結局任意の に対して となる。
そして,上記の求め方の各式は という形なので, が整数なら も整数である。
ラグランジュ補間を使った証明がおもしろいです!「帰納法は泥臭い,帰納法を使わないほうが大抵かっこいい」と言っていた知人を思い出します。