ルジャンドル多項式の性質と計算

更新日時 2021/03/07

直交多項式系の代表例であるルジャンドル多項式について,4つの同値な定義(性質)を紹介します。また,実際にルジャンドル多項式を計算してみます。

目次
  • ルジャンドル多項式の定義(性質)

  • ルジャンドル多項式の計算

ルジャンドル多項式の定義(性質)

Pn(x)P_n(x)xx についての nn 次多項式とします。P0(x)P_0(x)P1(x)P_1(x)P2(x)P_2(x)\cdots が以下の(同値な)4つの条件のいずれか(したがって全て)を満たすとき,ルジャンドル多項式と呼びます。

  1. 漸化式
    P0(x)=1P_0(x)=1P1(x)=xP_1(x)=x,かつ n1n\geq 1 に対して (n+1)Pn+1(x)=(2n+1)xPn(x)nPn1(x)(n+1)P_{n+1}(x)=(2n+1)xP_n(x)-nP_{n-1}(x)

  2. ロドリゲスの公式
    Pn(x)=12nn!fn(n)(x)P_n(x)=\dfrac{1}{2^nn!}f_n^{(n)}(x)
    ただし,fn(x)=(x21)nf_n(x)=(x^2-1)^n

  3. 母関数
    112tx+t2=n=0tnPn(x)(1<t<1)\dfrac{1}{\sqrt{1-2tx+t^2}}=\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}t^nP_n(x)\:(-1<t<1)

  4. 直交性 11Pm(x)Pn(x)dx={22m+1(m=n)0(mn)\displaystyle\int_{-1}^1P_m(x)P_n(x)dx=\begin{cases}\dfrac{2}{2m+1}&(m=n)\\0&(m\neq n)\end{cases}
    (かつ,最高次の係数が正)

具体的には P0(x)=1P_0(x)=1P1(x)=xP_1(x)=xP2(x)=32x212P_2(x)=\dfrac{3}{2}x^2-\dfrac{1}{2}P3(x)=52x332xP_3(x)=\dfrac{5}{2}x^3-\dfrac{3}{2}x という感じです(計算は後述)。

ルジャンドル多項式の計算

低次のルジャンドル多項式が

P0(x)=1P_0(x)=1P1(x)=xP_1(x)=xP2(x)=32x212P_2(x)=\dfrac{3}{2}x^2-\dfrac{1}{2}

になることを3通りの方法で確認してみましょう。漸化式・ロドリゲスの公式・直交性の理解が深まります。

「1.漸化式」による計算
  • P0(x)=1,P1(x)=xP_0(x)=1,P_1(x)=x は定義。

  • 漸化式で n=1n=1 とすると
    2P2(x)=3xP1(x)P0(x)=3x212P_2(x)=3xP_1(x)-P_0(x)=3x^2-1
    より P2(x)=32x212P_2(x)=\dfrac{3}{2}x^2-\dfrac{1}{2}

  • ちなみに漸化式で n=2n=2 とすると
    3P3(x)=5xP2(x)2P1(x)=152x392x3P_3(x)=5xP_2(x)-2P_1(x)=\dfrac{15}{2}x^3-\dfrac{9}{2}x
    より P3(x)=52x332xP_3(x)=\dfrac{5}{2}x^3-\dfrac{3}{2}x

「2.ロドリゲスの公式」による計算

P0(x)=11×1=1P_0(x)=\dfrac{1}{1}\times 1=1

P1(x)=12(x21)=xP_1(x)=\dfrac{1}{2}(x^2-1)'=x

P2(x)=142!{(x21)2)}=18(x42x2+1)=12(3x21)P_2(x)=\dfrac{1}{4\cdot 2!}\{(x^2-1)^2)\}''\\ =\dfrac{1}{8}(x^4-2x^2+1)''\\ =\dfrac{1}{2}(3x^2-1)

「4.直交性」による計算の概略

P0(x)P_0(x) は0次多項式,つまり定数である。

11P02dx=2\displaystyle\int_{-1}^1P_0^2dx=2 を満たす正の定数 P0P_0 を求めると,P0=1P_0=1 となる。

P1(x)=Ax+BP_1(x)=Ax+B とおく。

11(Ax+B)1dx=0\displaystyle\int_{-1}^1(Ax+B)\cdot 1dx=011(Ax+B)2dx=23\displaystyle\int_{-1}^1(Ax+B)^2dx=\dfrac{2}{3} を満たす A,BA,B を求める。一つ目の式から B=0B=0 が分かり,二つ目の式から A2=1A^2=1 が分かる。よって,P1(x)=xP_1(x)=x

P2(x)=Ax2+Bx+CP_2(x)=Ax^2+Bx+C とおく。まず,11P2(x)xdx=0\displaystyle\int_{-1}^1P_2(x)\cdot xdx=0 から B=0B=0 が分かる。そして,11P2(x)1dx=0\displaystyle\int_{-1}^1P_2(x)\cdot 1dx=011P22(x)dx=25\displaystyle\int_{-1}^1P_2^2(x)dx=\dfrac{2}{5} から AACC が求まる。

なお,計算の途中で偶関数と奇関数の性質を用いると楽。

大学入試でも(直交性などという言葉は出てこないが)このような計算をさせる問題はときどき出題されます!

なお,直交性については,直交多項式の意味と4つの有名な例三角関数の積の積分と直交性もどうぞ。

この記事のように,高校では絶対習わない内容であっても意欲のある高校生に理解できる記事は,マニアック分野に分類することがあります。

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