総積の記号Π(パイ)の意味と性質

i=1nai\displaystyle\prod_{i=1}^na_i は,a1×a2××ana_1\times a_2\times \cdots\times a_n のことを表す。

  • i=1ni=1×2××n=n!\displaystyle\prod_{i=1}^n i=1\times 2\times\cdots\times n=n!

  • i=1n3=3×3××3=3n\displaystyle\prod_{i=1}^n 3=3\times 3\times \cdots\times 3=3^n

\prod という記号を使うと,たくさんの掛け算を簡潔に表せます。

総積記号について

  • 高校数学で習う総和記号 \displaystyle\sum のかけ算バージョンです。

  • \displaystyle\prod はギリシャ文字のパイ π\pi の大文字です。

  • \displaystyle\sum は「総和」,\displaystyle\prod は「総積」あるいは「総乗」です。

  • TeX では \prod_{i=1}^na_i などと書きます。i=1nai\displaystyle\prod_{i=1}^na_i と表示されます。\prod は積を表す英単語 product に由来します。

総積記号の性質

いずれも覚える必要はありません。かけ算をきちんと書き下せば明らかです。

  • i=1ni=n!\displaystyle\prod_{i=1}^ni=n!
  • i=1nk=kn\displaystyle\prod_{i=1}^nk=k^n
  • i=1naibi=i=1naii=1nbi\displaystyle\prod_{i=1}^na_ib_i=\displaystyle\prod_{i=1}^na_i\displaystyle\prod_{i=1}^nb_i
  • i=1nai=i=1+kn+kaik\displaystyle\prod_{i=1}^na_i=\displaystyle\prod_{i=1+k}^{n+k}a_{i-k}
  • i=1n(i+k)=(n+k)!k!\displaystyle\prod_{i=1}^n(i+k)=\dfrac{(n+k)!}{k!}

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空集合の積

i=1nai=a1×a2××an\displaystyle\prod_{i=1}^na_i=a_1\times a_2\times\cdots\times a_n ですが,n=0n=0 のとき左辺を 11 と定めることが多いです。このように定めればさきほどの性質

  • i=1ni=n!\displaystyle\prod_{i=1}^ni=n!
  • i=1nk=kn\displaystyle\prod_{i=1}^nk=k^n

n=0n=0 でも成立したりして嬉しいです。

ちなみに総和記号の場合は i=10ai=0\displaystyle\sum_{i=1}^0a_i=0 と考えることが多いです。「何も足さないのは 00」で「何もかけないのは 11」と考えます。

総積と総和の関係

積は対数を取ると和になります。つまり,各 ai>0a_i>0 のとき, logi=1nai=i=1nlogai\log\displaystyle\prod_{i=1}^na_i=\sum_{i=1}^n\log a_i となります。つまり,bi=logaib_i=\log a_i とおくと, i=1nai=ei=1nbi\displaystyle\prod_{i=1}^na_i=e^{\sum_{i=1}^n b_i} となります。積の計算は和の計算に帰着されます。

総和の公式は i=1ni=12n(n+1)\displaystyle\sum_{i=1}^ni=\dfrac{1}{2}n(n+1) などおもしろいものがあります(→4乗の和,べき乗の和の公式)が,総積の公式で「よく使う」かつ「おもしろい」ものは無い印象です。

無限積

limni=1nai\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{i=1}^na_i のことを i=1ai\displaystyle\sum_{i=1}^{\infty}a_i と書くことがあります(無限和)。同様に,i=1ai\displaystyle\prod_{i=1}^\infty a_i という記号もあります(無限積)。

ただし,無限積の場合は ai=0a_i=0 となる ii11 つでもあると 00 になってしまいつまらないので,その部分を除外して考える場合もあります。つまり, i=1ai\displaystyle\prod_{i=1}^{\infty}a_i が収束するとは,ある自然数 NN があって,極限 αN=limmi=Nmai\alpha_N=\displaystyle\lim_{m\to\infty}\prod_{i=N}^ma_i00 ではない値に収束することを指します。→sin の無限乗積展開とワイエルシュトラスの因数分解定理

「そうせき」で変換すると「漱石」になり,「そうじょう」で変換すると「相乗」になってしまいます。