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シグマ記号の意味とその公式の応用例

更新日時 2021/02/24
シグマ記号の公式

シグマ記号 Σ\Sigma は「たくさんの足し算」を簡潔に表すための記号。シグマ記号に関連して,以下の公式が成立する: k=1na=nak=1nk=12n(n+1)k=1nk2=16n(n+1)(2n+1)k=1nk3={12n(n+1)}2k=1nrk1=1rn1r(r1)\begin{aligned} \sum_{k=1}^{n} a &= na \\ \sum_{k=1}^{n} k &= \dfrac{1}{2} n(n+1) \\ \sum_{k=1}^{n} k^2 &= \dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1) \\ \sum_{k=1}^{n} k^3 &= \left\{\dfrac{1}{2} n(n+1)\right\}^2\\ \sum_{k=1}^{n} r^{k-1} &= \dfrac{1-r^n}{1-r} \quad (r \neq 1)\\ \end{aligned}

高校数学で習うシグマ記号について,定義・公式・証明を紹介します。また,シグマ記号を使う問題とその解説をします。

目次
  • シグマ記号の意味

  • シグマ記号を活用した計算

  • シグマ記号の性質1「分解できる」

  • シグマ記号の性質2「べき乗のシグマは簡単」

  • シグマ計算の例題

  • 公式の証明

  • シグマ記号の公式を利用した計算方法

  • より発展的な話題

シグマ記号の意味

Σ\Sigma は「たくさんの足し算」を簡潔に表すための記号です。

シグマ記号の定義

k=1nak=a1+a2++an \sum_{k=1}^{n} a_k = a_1 + a_2 + \cdots + a_n

k=1n\displaystyle\sum_{k=1}^n という見た目がごついので身構えてしまいがちですが,意味はただの足し算です。「k=1k=1 から nn まで順々に代入したものを足す」という意味です。

Σ\Sigma を使うと,たくさんの足し算を簡潔に表せます。 例えば,11 から 2121 までの奇数の和は 1+3+5+7+9+11+13+15+17+19+21 1+3+5+7+9+11+13+15+17+19+21 という式で表せますが,このように全て書くのは大変です。シグマ記号を使えば k=111(2k1)\displaystyle\sum_{k=1}^{11}(2k-1) のようにスッキリ書けます。 「k=1k=1 から 1111 まで順々に 2k12k-1 に代入したものを足す」つまり「11 から 2121 までの奇数を足す」という意味になります。

もちろん, 1+3++211+3+\cdots +21 と書いても普通は伝わりますが,屁理屈を言えば 1+3+6+10+15+211+3+6+10+15+21 のことかもしれず,\cdots を使った表現はあいまいです。 つまり Σ\Sigma は「数学的に厳密に,多くのたし算を記述できる道具」とも言えます。

シグマ記号に関する補足

  • Σ\Sigma は「シグマ」と読みます。
  • Σ\Sigma はアルファベットの ss に対応するギリシャ文字の σ\sigma の大文字です。 英語で総和を意味する “sum” という単語の頭文字を取ってきています。
  • シグマ記号の下に書いてある kk は他の文字でも同じ意味になります。つまり k=1nak\displaystyle\sum_{k=1}^n a_ki=1nai\displaystyle\sum_{i=1}^n a_iX=1naX\displaystyle\sum_{X=1}^n a_X も同じ意味です。

シグマ記号を活用した計算

シグマ記号を使う理由の1つとして 一般項が多項式である数列の和を簡単に計算できることが挙げられます。

シグマ記号の「2つの性質」を理解すれば,さきほど紹介した k=111(2k1)\displaystyle\sum_{k=1}^{11}(2k-1)k=1n(3k26k+1) \sum_{k=1}^n (3k^2-6k+1) などの計算を素早くできます。ここで「2つの性質」とは

  • シグマ記号は分解できる(線形性)
  • べき乗のシグマは簡単に計算できる

という性質です。それぞれ詳しく説明していきます。

シグマ記号の性質1「分解できる」

シグマ記号に関連して,以下の性質が成立します。

シグマ記号は「分解できる」: k=1n(λak+μbk)=λk=1nak+μk=1nbk \sum_{k=1}^n (\lambda a_k + \mu b_k) = \lambda \sum_{k=1}^n a_k + \mu \sum_{k=1}^n b_k (ただし,λ,μ\lambda, \mukk に関係のない定数)

この式は,

  • シグマ記号は分配法則のように,それぞれの項に分けることができる
  • さらに定数は外に出せる

ことを表しています。簡単に以下で証明します。

k=1n(λak+μbk)=(λa1+μb1)+(λa2+μb2)++(λan+μbn)=λ(a1+a2++an)+μ(b1+b2++bn)=λk=1nak+μk=1nbk \begin{aligned} &\sum_{k=1}^n (\lambda a_k + \mu b_k)\\ &= (\lambda a_1 + \mu b_1)+(\lambda a_2 + \mu b_2) + \cdots + (\lambda a_n + \mu b_n)\\ &= \lambda (a_1 + a_2 + \cdots + a_n)+\mu (b_1 + b_2 + \cdots + b_n)\\ &= \lambda \sum_{k=1}^n a_k + \mu \sum_{k=1}^n b_k \end{aligned}

例えば,さきほどの例 k=111(2k1)\displaystyle\sum_{k=1}^{11}(2k-1) は以下のように分解できます: k=1n(2k1)=2k=1nkk=1n1 \sum_{k=1}^n (2k-1) = 2\sum_{k=1}^nk - \sum_{k=1}^n1 他にも, k=1n(3k26k+1)=3k=1nk26k=1nk+k=1n1 \sum_{k=1}^n (3k^2-6k+1) = 3\sum_{k=1}^nk^2 -6\sum_{k=1}^nk+\sum_{k=1}^n1 のように分解できます。分解して何が嬉しいのかは後ほど説明します。

ちなみに,このように分解できる性質を「線形性」と言います。→高校数学における線形性の8つの例

シグマ記号の性質2「べき乗のシグマは簡単」

k=1nk2\displaystyle \sum_{k=1}^nk^2k=1nk\displaystyle \sum_{k=1}^n kk=1n1\displaystyle \sum_{k=1}^n1 といった,べき乗のシグマは冒頭で紹介した公式: k=1na=nak=1nk=12n(n+1)k=1nk2=16n(n+1)(2n+1)k=1nk3={12n(n+1)}2\begin{aligned} \sum_{k=1}^{n} a &= na \\ \sum_{k=1}^{n} k &= \dfrac{1}{2} n(n+1) \\ \sum_{k=1}^{n} k^2 &= \dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1) \\ \sum_{k=1}^{n} k^3 &= \left\{\dfrac{1}{2} n(n+1)\right\}^2 \\ \end{aligned} により簡単に計算できます。公式の証明は後ほど行います。

ここまでの性質をまとめます:

  • シグマ記号は分解できる(線形性)
  • べき乗のシグマは簡単に計算できる
  • よって,多項式のシグマは「分解」と「べき乗のシグマの公式」を使えば簡単に計算できる

これがシグマ記号が嬉しい理由の1つです。次は,具体的に多項式のシグマを計算する例題を見てみましょう。

シグマ計算の例題

例1

k=1n(5k1) \sum_{k=1}^n (5k-1) を求めよ。

さきほど述べたように「分解」してから「べき乗のシグマの公式」を使います: k=1n(5k1)=5k=1nkk=1n1=52n(n+1)n=52n2+32n \begin{aligned} \sum_{k=1}^n (5k-1) &= 5\sum_{k=1}^n k - \sum_{k=1}^n1\\ &= \dfrac{5}{2}n(n+1) - n\\ &= \dfrac{5}{2}n^2 + \dfrac{3}{2}n \end{aligned}

例2

k=1n(2k1)(3k+4) \sum_{k=1}^n (2k-1)(3k+4) を求めよ。

同じように「分解」してから「べき乗のシグマの公式」を使います。その前に,因数分解された形を展開する必要があります:

k=1n(2k1)(3k+4)=k=1n(6k2+5k4)=6k=1nk2+5k=1nk4k=1n1=616n(n+1)(2n+1)+52n(n+1)4n=2n3+112n2n2 \begin{aligned} &\sum_{k=1}^n (2k-1)(3k+4) \\ &= \sum_{k=1}^n (6k^2+5k-4)\\ &= 6\sum_{k=1}^nk^2 +5\sum_{k=1}^nk -4\sum_{k=1}^n1\\ &= 6\cdot\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+\dfrac{5}{2}n(n+1)-4n\\ &= 2n^3 + \dfrac{11}{2}n^2 - \dfrac{n}{2} \end{aligned}

k2k^2 のシグマの公式あたりから複雑になりミスをしやすくなります。慎重に計算をしましょう。

公式の証明

では,冒頭にあった5つの公式を証明します。

(1)(1) 式については簡単ですね。aann 回足すだけです。

(1)の証明

k=1na=a+a++aundefinedn=na \sum_{k=1}^{n} a = \underbrace{a + a + \cdots + a}_{n\text{個}} = na

また,(2),(5)(2),(5) に関しては,それぞれ等差数列・等比数列とみなせます。

(2)の証明

k=1nk\displaystyle\sum_{k=1}^{n} k は 初項 11,公差 11,項数 nn である等差数列の和であるから,等差数列の和の公式により(→等差数列の和の公式の例題と証明などk=1nk=12n(21+(n1)1)=12n(n+1) \sum_{k=1}^{n} k = \dfrac{1}{2}n(2\cdot 1 + (n-1)\cdot1)=\dfrac{1}{2} n(n+1)

(5)の証明

k=1nrk1\displaystyle\sum_{k=1}^{n} r^{k-1} は 初項 11,公比 r(1)r\,(\neq 1),項数 nn である等比数列の和であるから,等比数列の和の公式により(→等比数列の和の公式の証明といろいろな例k=1nrn1=1(1rn)1r=1rn1r \sum_{k=1}^{n} r^{n-1} = \dfrac{1\cdot(1-r^n)}{1-r}=\dfrac{1-r^n}{1-r}

k2,k3k^2,k^3 の和については,ある恒等式を利用します。

(3)の証明

(k+1)3k3=3k2+3k+1 (k+1)^3 - k^3 = 3k^2 + 3k + 1 という恒等式を利用する。この式において k=n,n1,,2,1k = n,n-1,\cdots , 2,1 と代入した式を以下に並べると (n+1)3n3=3n2+3n+1n3(n1)3=3(n1)2+3(n1)+13323=322+32+12313=312+31+1 \begin{aligned} (n+1)^3 - n^3 &= 3n^2 + 3n + 1\\ n^3 - (n-1)^3 &= 3(n-1)^2 + 3(n-1) + 1\\ &\vdots\\ 3^3 - 2^3 &= 3\cdot 2^2 + 3 \cdot 2 + 1\\ 2^3 - 1^3 &= 3\cdot 1^2 + 3 \cdot 1 + 1 \end{aligned} 左辺において,第1式の n3-n^3 と第2式の n3n^3 が打ち消しあい,第2式の (n1)3-( n-1)^3 と第3式の (n1)3(n-1)^3 が打ち消しあい,というように多くの項が打ち消しあって最終的に (n+1)313(n+1)^3-1^3 のみが残る。

また,右辺は 3k=1nk2+3k=1nk+k=1n1 3\sum_{k= 1}^n k^2 + 3\sum_{k=1}^{n}k + \sum_{k=1}^n 1 となるから, (n+1)31=3k=1nk2+3k=1nk+k=1n1k=1nk2=13{(n+1)313k=1nkk=1n1}=13{(n+1)3132n(n+1)n}=13(n3+32n2+12n)=16(2n3+3n2+n)=16n(n+1)(2n+1) \begin{aligned} (n+1)^3-1 &= 3\sum_{k= 1}^n k^2 + 3\sum_{k=1}^{n}k + \sum_{k=1}^n 1\\ \therefore \sum_{k= 1}^n k^2 &=\dfrac{1}{3}\left\{ (n+1)^3-1 - 3\sum_{k=1}^{n}k - \sum_{k=1}^n 1\right\}\\ &=\dfrac{1}{3}\left\{ (n+1)^3-1 - \dfrac{3}{2}n(n+1) - n\right\}\\ &=\dfrac{1}{3}\left( n^3 + \dfrac{3}{2}n^2 + \dfrac{1}{2}n\right)\\ &=\dfrac{1}{6}\left( 2n^3 + 3n^2 + n\right)\\ &=\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\\ \end{aligned}

(4)の証明

(k+1)4k4=4k3+6k2+4k+1 (k+1)^4 - k^4 = 4k^3 +6k^2 + 4k + 1 という恒等式を利用する。この式において k=n,n1,,2,1k = n,n-1,\cdots , 2,1 と代入した式を以下に並べると (n+1)4n4=4n3+6n2+4n+1n4(n1)4=4(n1)3+6(n1)2+4(n1)+13424=423+622+42+12414=413+612+41+1 \begin{aligned} (n+1)^4 - n^4 &= 4n^3 +6n^2 + 4n + 1\\ n^4 - (n-1)^4 &= 4(n-1)^3 +6(n-1)^2 + 4(n-1) + 1\\ &\vdots\\ 3^4 - 2^4 &= 4\cdot 2^3 + 6 \cdot 2^2 + 4\cdot2 + 1\\ 2^4 - 1^4 &= 4\cdot 1^3 + 6 \cdot 1^2 + 4\cdot1 + 1 \end{aligned} 左辺において,第1式の n4-n^4 と第2式の n4n^4 が打ち消しあい,第2式の (n1)4-(n-1)^4 と第3式の (n1)4(n-1)^4 が打ち消しあい,というように多くの項が打ち消しあって最終的に (n+1)414(n+1)^4-1^4 のみが残る。

また,右辺は 4k=1nk3+6k=1nk2+4k=1nk+k=1n1 4\sum_{k= 1}^n k^3 + 6\sum_{k=1}^{n}k^2 + 4\sum_{k=1}^n k + \sum_{k=1}^n 1 となるから, (n+1)41=4k=1nk3+6k=1nk2+4k=1nk+k=1n1k=1nk3=14{(n+1)416k=1nk24k=1nkk=1n1}=14{(n+1)41n(n+1)(2n+1)2n(n+1)n}=14(n4+2n3+n2)={12n(n+1)}2 \begin{aligned} (n+1)^4-1 &= 4\sum_{k= 1}^n k^3 + 6\sum_{k=1}^{n}k^2 + 4\sum_{k=1}^n k + \sum_{k=1}^n 1\\ \therefore \sum_{k= 1}^n k^3 &=\dfrac{1}{4}\left\{ (n+1)^4-1 - 6\sum_{k=1}^{n}k^2- 4\sum_{k=1}^{n}k - \sum_{k=1}^n 1\right\}\\ &=\dfrac{1}{4}\left\{ (n+1)^4-1 -n(n+1)(2n+1)-2n(n+1)-n\right\}\\ &=\dfrac{1}{4}\left(n^4 + 2n^3 + n^2\right)\\ &=\left\{\dfrac{1}{2}n(n+1)\right\}^2\\ \end{aligned}

なお,4乗の和についても同様に証明できます。確認問題として残しておきます。答えは k=1nk4=130n(n+1)(2n+1)(3n2+3n1) \sum_{k=1}^n k^4 = \dfrac{1}{30}n(n+1)(2n+1)(3n^2+3n-1) となります。

ちなみに,4乗以降の和については,→4乗の和,べき乗の和の公式の記事でまとめています。

シグマ記号の公式を利用した計算方法

追加で例題を2問解説します。

例3

k=1n(nk3+6n2k2+n2(n+1)) \sum_{k=1}^n (nk^3 + 6n^2k^2 + n^2(n+1)) を求めよ。

k=1n\displaystyle \sum_{k=1}^n において変数は kk であり,nn は定数です。よって nn は外に出せることに注意しましょう。

k=1n(nk3+6n2k2+n2(n+1))=nk=1nk3+6n2k=1nk2+n2(n+1)k=1n1=n14n2(n+1)2+n2n(n+1)(2n+1)+n3(n+1)=94n3(n+1)2 \begin{aligned} \sum_{k=1}^n &(nk^3 + 6n^2k^2 + n^2(n+1))\\ &= n\sum_{k=1}^nk^3 +6n^2 \sum_{k=1}^nk^2 + n^2(n+1)\sum_{k=1}^n1\\ &= n\cdot \dfrac{1}{4}n^2(n+1)^2 +n^2 \cdot n(n+1)(2n+1) + n^3(n+1)\\ &= \dfrac{9}{4} n^3(n+1)^2 \end{aligned}

例4

1,3,9,27 1,-3,9,-27\cdots と続く数列の第1項から第 nn 項までの総和を求めよ。

シグマ記号をつかって総和を求めるには,まずは 一般項を求めなければなりません。 この数列は等比数列であり,初項は 11, 公比は 3-3 であるから,一般項は (3)n1(-3)^{n-1} と表せます。よって,数列の第1項から第 nn 項までの総和は, k=1n(3)k1=1(3)n1+3=1(3)n4 \sum_{k=1}^{n} (-3)^{k-1} = \dfrac{1-(-3)^n}{1+3}=\dfrac{1-(-3)^n}{4}

より発展的な話題

以上が基本的な問題です。これくらいの問題には時間をかけず計算できるようになっておきましょう。

シグマ記号に関連する発展的な問題例をいくつか挙げます:

また,今回は出てきませんでしたが,kk の動く範囲が 11 から nn でない場合もあります。このような場合どうやって対処すべきか,こちらの記事でまとめています。→シグマ計算を機械的に行うための3つの公式

初めてシグマについて勉強した頃,難しい数式を操っている数学者になった気分に浸れてなんだか少し嬉しくなったのを今でも覚えています。

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