リーマン積分 VS ルベーグ積分
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リーマン積分可能なら「ルベーグ積分の値=リーマン積分の値」
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ルベーグ積分できるがリーマン積分できない場合がある
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広義リーマン積分できるがルベーグ積分できない場合がある
この記事ではリーマン積分とルベーグ積分の違いを見ていきます。 なお,リーマン積分とルベーグ積分の定義は
を参照してください。
ルベーグ積分値とリーマン積分値は同じ
ルベーグ積分はできるが,リーマン積分はできない例
広義リーマン積分はできるが,ルベーグ積分はできない例
ルベーグ積分値とリーマン積分値は同じ
ルベーグ積分を実際に運用していく際は,リーマン積分と同じように計算できることが多いです。
を 上の有界な連続関数とする。このとき,リーマン積分可能であれば,リーマン積分の値とルベーグ積分の値は一致する。
リーマン積分とルベーグ積分を区別するため,リーマン積分は ,ルベーグ積分は で表記します。
分割 を で,各 に対して, となるように定める。
, とおく。
とする。
はリーマン積分可能であるため, となる。
は有界であるため, は最大値 を持つ。
に対して,ルベーグ可積分な優関数 を取れる。ルベーグの収束定理を用いると, となる。
各点で は に収束するため となる。
ルベーグ積分はできるが,リーマン積分はできない例
ディリクレ関数とは,有理数では ,無理数では となる関数です。
積分 を考えます。
リーマン積分
リーマン積分から引用します。
の分割 に対して とおく。
どのように区間 を小さく取っても は有理数,無理数両方を含む。(→有理数と無理数の稠密性)
よって , である。ゆえに である。
よって, となり,リーマン可積分ではない。
ルベーグ積分
と表されるため となる。
ここで の測度は であったため, である。こうして
広義リーマン積分はできるが,ルベーグ積分はできない例
リーマン可積分であれば,ルベーグ可積分です。
しかし,広義リーマン積分になると,ルベーグ積分を飛び出ることがあります。そのような例である
sinc 関数(シンク関数)の積分(ディリクレ積分)
を考えます。
広義リーマン積分
留数定理を用いた三角関数の積分 で証明していますが, となります。
ルベーグ積分
ルベーグ積分の立場では で定義されます。 実は右辺は2項とも発散しており,ルベーグ可積分ではありません。これを確認してみましょう。
となる。同様に となり, という不定形になる。
こうしてルベーグ積分はできない。
広義リーマン積分とルベーグ積分を共に含むさらに大きな積分論に「ヘンストック=クルツヴァイル積分」というものがあります。