ヘルダーの不等式
ヘルダーの不等式
1<p<∞,1<q<∞ は p1+q1=1 を満たしているとする。
f∈Lp(X),g∈Lq(X) のとき,fg∈L1(X) であって
∫X∣f(x)g(x)∣dx=∥fg∥1≤∥f∥p∥g∥q
となる。
ヘルダーの不等式は,ノルムに関する不等式の基礎中の基礎です。
証明には ヤングの不等式
ab≤pap+qbq
を使います。
証明
∥f∥p,∥g∥q=0 としてよい。
ヤングの不等式において a=∥f∥p∣f(x)∣,b=∥g∥q∣g(x)∣ とおくと,
∥f∥p∥g∥q∣f(x)∥g(x)∣≤p1∥f∥pp∣f(x)∣p+q1∥g∥qq∣g(x)∣q
である。両辺を X で積分することで
∥f∥p∥g∥q1∫X∣f(x)g(x)∣dx≤p1∥f∥pp1∫X∣f(x)∣pdx+q1∥g∥qq1∫X∣g(x)∣qdx=p1+q1=1
を得る。両辺に ∥f∥p∥g∥q を掛けることで結論を得る。
コーシーシュワルツの不等式
ヘルダーの不等式において,特に p=q=2 とすると,コーシーシュワルツの不等式
∫X∣f(x)g(x)∣dx≤∫X∣f(x)∣2dx∫X∣g(x)∣2dx
が得られます。
三角不等式(ミンコフスキーの不等式)
三角不等式
1≤p<∞,f,g∈Lp(X) に対して
∥f+g∥p≤∥f∥p+∥g∥p
である。
定理の証明の前に次の不等式を紹介します。
a,b を正の実数とします。
∣a+b∣p≤2p−1(∣a∣p+∣b∣p)⋯⋯(∗)
この不等式は,イェンゼンの不等式 において f(x)=xp とすれば (2a+b)p≤2∣a∣p+∣b∣p となることから成立します。
証明
p=1 のときは (∗) から ∣f(x)+g(x)∣≤∣f(x)∣+∣g(x)∣ である。両辺を積分することで不等式を得る。
p>1 とする。
(∗) より ∣f(x)+g(x)∣p≤∣f(x)∣p+∣g(x)∣p,両辺を積分することで ∥f+g∥p≤∥f∥p+∥g∥p<∞ を得る。
このとき p1+q1=1 を満たす q が得られる。
このとき qp=p−1 であるため
∥∣f+g∣p−1∥q=(∫X{∣f(x)+g(x)∣p−1}qdx)q1=(∫X∣f(x)+g(x)∣pdx)q1=∥f+g∥pqp=∥f+g∥pp−1<∞
であることから f+g∈Lq(X) である。
こうしてヘルダーの不等式を用いることができる。
∥f+g∥pp=∫X∣f(x)+g(x)∣pdx≤∫X∣f(x)+g(x)∣p−1∣f(x)∣dx+∫X∣f(x)+g(x)∣p−1∣g(x)∣dx=∥∣f+g∣p−1∥q(∥f∥p+∥g∥p)=∥f+g∥pp−1(∥f∥p+∥g∥p)
両辺を ∥f+g∥pp−1 で割って
∥f+g∥p≤∥f∥p+∥g∥p
を得る。